呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

マイクロソフトが元ノキア従業員のリストラに苦戦中

 マイクロソフトがノキアを買収しましたが、その流れを受けて中国でもマイクロソフトによる元ノキア従業員に対するリストラが行われており、現地ではこれが話題になっています。会社都合で従業員を解雇していくため、経済補償金の支払いが必要になります。経済補償金の支払い基準は労働契約法で明確に定められているのですが、往々にしてこれを上回る基準での支給が行われており、マイクロソフトも現在同じ苦しみを味わっています。おおざっぱに言いますと、直近12ヶ月の平均給与×勤続年数見合いの月数を経済補償金として支払います。勤続年数見合いの月数を俗にN値と呼び、2年勤務だと2、5年勤務だと5となり、maxで12と定められています。

 

 マイクロソフトが提示した条件は、(1)平均給与を元々25000元を基数としていたものを31000元に引き上げ(給与が低い人も31000元を基数とし、これより給与が高い人はそれを基数とする)、(2)経済補償金をN+2で支払、(3)最短離職時期を9月30日とする、このほかにも会社が1800万元拠出してリストラされる従業員の研修資金に充当するというものでしたが、元ノキア従業員はこれに満足せず、(1)離職時期を2015年4月末とする、(2) 経済補償金をN+6で支払うこと、という条件を提示し、現在折衝中です。N+1が法定基準と勘違いしている中国人にあったことがあるくらい、N+1あたりで手を打つのは実務的にも良く見られますが、N+6というかなり乖離した要求がなぜ出てきたのか。ノキアが2007年と2011年に従業員を解雇する際にN+6という基準を採用したことがあることによるようです。2013年にこれがN+2となり、マイクロソフトこれに沿った形での条件提示をしたまでのことです。今ではソーシャルメディアが発達しており、QQグループというウェブサービスでリストラされる人たちのグループが自然と出来上がり、グループチャットの中でN+6という認識が形成されたようです。

 

 今までも従業員が好き放題に言ってくるケースは見たことがありますが、マイクロソフトの場合は世界的な知名度を有する企業であり、対象とする人数も多い(北京の研究開発センターの90%が対象)という点で、非常に目立つ案件であり、この決着によっては今後の他企業のリストラ政策にも影響を及ぼしかねません。古くは2011年にベストバイが撤退した時もかなり太っ腹な経済補償金を支給していましたが、それと同じ時期に撤退しようとしていたある日系企業ではあくまで法律通りの支給を押し通そうとする中で、説明の仕方も悪かったのですが、従業員との間の話し合いがぐちゃぐちゃになってしまい、最終的には結構な金額を支給する羽目になったところもあります。

 

 またマイクロソフトの話に戻りますが、従業員の一部からこの動きを不安がる人が出てきています。どのような不安かといいますと、あまりにごねすぎると、次に就職する先で「こいつはごねる奴だ」と思われてしまい、再就職に影響するのではないかという見方です。確かに、私が誰かを採用しようとして、相手に対してそのような印象を持ってしまった場合、積極的に採用しようという気持ちが薄れてしまいます。あまり自己主張をしなさすぎる人もどうかと思いますが、ごねまくる人はもっと困ります。私も実際にリストラ説明に立ち会った際にごねる従業員を見たことがありますが、自分の会社でおのような人を採用するかどうかと聞かれればノーと回答します。

 

 今回のマイクロソフトのケースのようにリストラ資金が膨れてきているように、中国ではややこしい相手に出くわしてしまうとリストラ費用が膨れてしまう傾向にあります。道義的にはよからぬことをした従業員を解雇する際に、就業規則にその旨明示されていなかったという理由で結局多額の経済補償金を支払われたケースなんかもあります。何とも納得いかない話です。

 

 マイクロソフトのケースだと、普通に考えればそれなりの待遇を受けている人がごねていますので、失業に対する不安というよりも会社を痛めつけて目一杯取ってやろうという心理かと思います。これが工場の場合だと、同じく目一杯取ってやろうという心理を持つワーカーもいると思いますが、失業することで収入が途絶える方に不安を覚える人が多いのではないかと思います。そうであるならば、再就職をあっせんすることで失業期間をできるだけ短くし、それによりワーカーたちが騒ぐのを防ぐことができ、撤退に際しての労務処理がスムーズに進むのではないかと思います。労働集約型の工場でコストが合わず撤退しようかどうかと考える中で、従業員処理が大変だということで迷いを感じている会社もあるのではないかと思います。ホワイトカラーの場合は自分で次の仕事を探せるでしょうから工場向けにこのような再就職斡旋のサービスの提供を始めていきます。もちろん職種や場所、その他事業によりできるできないはありますが、これで労務処理が原因で撤退を思いとどまっている企業のお手伝いができればと思っています。今のところ上海市内限定で考えており、成約にはまだ至っておりませんが引き合いは来ています。この手のお話があれば是非ご相談ください!


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