呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

『上海余話 奪われた「のれん」』について

 最近ネット上で話題になっている産経新聞のこの記事、『上海余話 奪われた「のれん」』について検証してみたいと思います。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140724/chn14072403030004-n1.htm

 要するに上海に進出した寿司屋がパートナーの中国人に乗っ取られてしまったという典型的な失敗事例の話です。記事の中にに「上海で2店舗」、「東 京で立ち寄った築地のすし店で経営者が頭を抱えていた」とあり、この情報をもとに調べてみたところ、どうやら築地青空三代目であることがわかりました。既に日本語サイトでもたくさん情報が流れています。さて、この会社の上海の登記情報を調べてみました。

 

 

 2005年に設立された国内合弁の会社、つまりこてこての中国地場企業です。既に変更して外資だったのが国内合弁になったのか、はたまた名義借りで会社設立して最初から国内合弁だったのかわかりませんが、上海進出が2012年に対してこの会社の設立日が2005年であることから、最初から名義借りであったと思われます。名義借りで進出しておきながら乗っ取りにあったというのは同情はしますが日本側の落ち度もかなり大といわざるを得ないですね。名義借りなんて形式上は日本側は出資してないということですからね。外食店は今では独資で出店できるにもかかわらず、今でもまだこんな手に引っかかるところがあるなんて。いったい最初にどんなアドバイザーがついたのでしょうか。でも飲食店の場合はあんまりアドバイザーをつけないケースが多いかなあ。それか中国に悪い意味で変に浸かってしまった輩につかまってしまうのが多いことも考えられます。そのためか、乗っ取り話は飲食店に多いように思います。

 

 次に、「店名の使用権までごっそり奪われてしまっていた」の下りについてですが、これは商標のことかと思われます。中国側は上海の、日本側は北京の登録会社を使って登録申請を出しています。日本の築地青空三代目の商標はウェブサイトによるこんな感じです。

 

 

 

 そして、日本側が申請した上海での商標はこれです。

   

   

    

 

 申請状況を見ますと、2012年4月23日に登録申請が始まり、2013年4月9日に登録申請が完了。ところが、2013年3月27日に差し戻しの再審査が開始し、2014年4月14日に差し戻しが決定しています。

 

 次に、中国法人が申請した商標について見ていきます。

  

    

  

 

 字体は似ていますが、色合いが白黒逆になったような感じですね。この商標は2012年3月30日に登録申請を提出し、2013年4月17日に登録申請が正式に完了したものの、2013年5月16日に商標異議申請が行われています。ちょっとわかりにくいでしょうから、日中を比較しながら時系列にしてみましょう。

 

 

 

 中国側が一足早く申請したものの、ほんのわずかに日本側が早く登録申請が完了してます。ところが日本側の登録申請が完了する少し前の2013年3月27日に差し戻し申請が行われており、日本側の動きを追いかけていたのではないかと思われます。なお、この差し戻し申請は2014年4月14日に完了しており、そのせいか日本側の商標の登録公告日は記録上出てきません。いったん認められたにもかかわらず取り下げられたように見えます。

 中国側は2013年4月17日に商標登録申請が完了していますが、その1か月後の5月16日に商業異議申請が行われており、その結果はまだ出ておらず、異議申請ほぼ直後の同年5月28日に登録公告が出されています。当初の申請日付が接近していることから、おそらく中国側に悪意があったのではないかと推察されます。

 

 商標の動きも怪しいですが、やはり入口からおかしかったのだと思います。名義借りはこういうリスクがあるからあまりお勧めしないのですが、いつまでたってもなくならないなあ。もっとちゃんとした人に相談してさえいればこんな目に合わなかったのに。名義借りで進出した時点でアウトです。詰めが甘いというよりも最初から甘かったといわざるを得ないですな。

 

 名義借りについてはこちらもご参考ください。

 あまりお勧めできない名義借り

 名義借り


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