呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国のエコシティの今

 よく番組改編期のスペシャル番組で「あの人は今」のような特集を組んだりします。個人的には結構好きな企画です。懐かしいのを見たくなってしまう、年を取ったのでしょうか。さて、今日は「あの人は今」ならぬ、「生態城は今」について書いてみます。

 

 生態城といっても耳慣れない言葉なので少し補足しますと、生態学と現代科学技術を駆使した好循環型都市、俗にエコシティと呼ばれています。中国各地でこのエコシティなるものやスマートシティなるものが300とも500とも存在しているといわれています。上海東灘生態城、唐山曹妃甸生態城、重慶両江生態城、河南新田生態城、長沙生態城、山東黄河生態城、中国知青生態城、いやあ、たくさんありますねえ。ちゃんとしたものから胡散臭そうなものまであり、中国知青生態城のような不動産プロジェクトが文書偽造で取締りに遭ったようなケース、停滞状態にある唐山曹妃甸生態城のようなケース、そして最もまともそうな天津中新生態城もあまりぱっとしていません。

 

 今年9月に経済観察報というメディアの記者が天津中新生態城の建設5周年にあたり取材にやってきたとき、プロジェクトがスタートして5年経過していながら、8平方キロメートル(当初開発部分)のエリアに住民はわずか4000人余りしかおらず、アニメ産業園等の産業園内の登録企業も1000社余り、集まった金額は700億元余りで、一社平均だと70百万元とそこそこの規模に見えますが、大多数は零細企業のようです。集まってきている業種は、アニメ、クリーン技術、エコ技術、情報技術、現代サービス業等です。しかし投資誘致はかなりしんどかったようです。私も天津のとある投資誘致を担当しているところから企業誘致のお手伝いをしてほしいと頼まれたことがありますが、うーん、やっぱり難しかったですねえ。

 

 このような状況から、中国ではよくもぬけの殻になっている都市のことを揶揄する「鬼城」という言葉が天津中新生態城でも使われるようになってきています。今年中には常住人口1万人を目指すとのことですが、なにせ9月時点では4000人余り、建設業者が6000人と住民より多いという状況です。当初計画では10年程度で30平方キロメートルの荒れ地に35万の住民をあつめる新型エコシティを目指していたのですが、それと比べるとあまりにも寂しい状況です。なぜか?交通インフラが悪いという指摘があります。バスはつながっているのですが、地下鉄は計画中であるものの、いつからスタートするのか見えていない状態。交通インフラの整っていない都市開発なんて、おいおい。こんな状況でも不動産開発だけは注目を集めていたようで、マレーシア、シンガポール、フィリピン、日本(三井不動産)、台湾等からディベローパーが進出し、売出し中の物件は19あります。ここだけ見ると不動産プロジェクトチックです。おそらく交通インフラが整備されると当て込んでいたでしょう。胡散臭いエコシティだと完全に不動産プロジェクト化しているものもおそらくあるでしょうが、天津の場合ははさすがにそこまでではないだろうと思います。

 

 しかし、生態城の30平方キロメートルという敷地の中で、3-4平方キロメートルしか産業用地がなく、ここから得られる税金だけで果たして35万人の住民を養うことができるのだろうかという課題が指摘されています。

 

 色んな地域にわんさか現れた「生態城」、当時は結構注目を浴びてました。昔の記事だとこんなのがあります。

 

 http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20110920/222713/

 

 http://diamond.jp/articles/-/7464

 

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500E_V20C11A5000000/

 

 以上のもの以外でも探してみるとたくさん出てきますが、どれもこれもちょっと前の記事、つまり旬ではなくなってきているようです。ひたすら不動産プロジェクト化して走っていくのか、それとも当初の理念通り進めていくのか、どこかで路線変更していくのか、どれもできずに野ざらしになってしまうのか。具体的にどのような取り組みが行われているかよく知りませんが、経済観察法の報道の通りだと冒頭に書いたような「あの人は今」と同じような扱いになってしまいかねませんね。こんな状況でも二線・三線都市では智慧都市(スマートシティ)建設が流行りのようで、200都市以上で計画されています。こういうのが好きなんでしょうねえ。


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