呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

民間資本による病院への出資・買収

 中国に復星集団と言う企業集団があります。積極的に病院に対する投資を行っており、将来的には500の病院に対して投資を行うことを計画しています。もともと復星集団は2009年より医療サービス市場に買収という形式で参入し始めており、一番最初は2200万米ドルで美中互利公司(Chindex)を買収しました。chindexのハイエンド医療ブランドと和睦家医療集団(ユナイテッドファミリー)に目を付けたのですが、中国国内でハイエンド医療市場が伸びていくことを予想してものものでした。その後chindexに対して追加投資を行い、持分を70%にまで引き上げましたが、今のところ投資に見合うリターンは得られていない模様です。中国国内では成熟したハイエンド医療ブランドは極めて少なく、買収対象を探すこと自体が難しく、また中国国内で有名な公立病院は売却の可能性があまりないこともあり、その後復星集団はターゲットを買収しやすい病院に変更しました。2011年に安徽省済民肿瘤医院、同年に岳陽広済医院、2012年に宿遷市鐘吾医院を買収しました。これらはみな三・四線都市の大衆向けの医療サービスブランドです。もっとも最近では広東省仏山の禅城医院という三級甲レベルの民間病院の60%の持分を6.9億元で買収していますが、この病院も大衆的な病院です。今までのところ、復星は合計で5つの病院を買収しており、現在の戦略は沿海部の発展都市においてユナイテッドファミリーのブランドでハイエンド市場を攻め、二・三線都市で総合病院と肿瘤専門病院市場を攻めるというものです。

 

 昨年買収した宿遷市鐘吾医院は、買収するに当たりまず病院を非営利性から営利性に変更することを条件としました。先ごろ買収した禅城医院も大型三級甲レベルの病院ですが、ここは営利性の民間病院でした。営利性病院のみが配当を行うことができ、非営利性病院は病院内での投資しかできないため、ビジネス目線で考えるとどうしても営利性病院である必要があります。このため、復星が病院を買収するにしても基本的には非営利性である病院を買収するにあたっては営利性へ転換してもらう必要がありました。

 

 営利性を非営利性にするのはたやすいのですが、非営利性を営利性に変更するのは結構難しいと言われています。非営利性病院は政策面で多くの優遇を受けており、国家の補助を受けたりしているので、営利性に転換する場合、過去の補助を返上する必要があります。返上すべき補助金を計算することは簡単ですが、政策面での優遇についてどのように補償するかは曖昧にならざるをえず、これも非営利性から営利性への転換が難しい重要な要因の一つになっています。中国国内の公立病院が全て非営利性病院であり、民間病院の多くも非営利性質ですが、これは主に地方政府が営利性病院で医療保険を適用するのを制限してきたことによりもたらされた状況であります。

 

 非営利性から営利性への転換を回避するビジネスモデルとして、病院管理会社を設立する方法があります。非営利性病院が管理会社に委託して病院管理を委託して管理会社に費用を支払い、管理会社はそれを営業収入とするものです。確かにこういう方法はありますが、そもそも非営利性から営利性へ転換することさえできれば余分に会社を設立する必要もありません。非営利性から営利性への転換は現地政府のスタンス次第であり、現地政府が病院を営利性に転換し、それを売却することを認めさえすれば物事は簡単になります。政府が望めば病院に対して資産評価を行い、売却価格を算定して、譲受方に売却すれば済む話です。宿遷市最大の人民医院はこのようにして国有企業金陵薬業に売却され、復星集団が買収した鐘吾医院も宿遷市の非営利性病院だったのですが、政府が営利性病院への転換に同意したことからスムーズに売買が成立しています。

 

 9月28日付で《健康サービス業の発展を促進することに関する若干意見》が発表され、その中で民間病院の数量、規模、配置に対する制限が緩和されるという内容が盛り込まれています。そのため、病院に対する投資、買収が今後増えていくことが予想されます。日系が同じような動きをするかどうかという知ちょっとしっくりこない部分がありますが、全体の流れとしては今後の展開に注目です。


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