呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国からの撤退はどこまで面倒?

 中国からの撤退は難しい、よくそのように言われます。税務局や税関からいろいろと調査されて何年たっても撤退できない、現地政府が撤退を認めてくれないなどという話も聞きます。最近も知り合いから後釜となる企業を見つけてこない限り撤退はまかりならぬといわれている企業の話をききました。本当にそんなに面倒なのでしょうか?私が取り扱ってきた案件でいえば、すんなりと終わったケースも少なくありません。面倒だったケースだとこのような現地政府が邪魔するようなケースよりも、むしろそれ以外の要因に悩まされた印象があります。現地政府から何の指摘もないわけではありませんが、指摘されたとしてもそれほど大したことは言われたことがない印象です。たまたまなのかもしれませんが。

 

 さて、現地政府が邪魔する以外の要因とは一体何かというと、撤退する会社の人間関係ですね。会社が撤退することにより困る人がいるのです。日系企業でいえば、駐在員は本社という帰るところがあるので別にいいのですが、現地社員あるいは関係者にとっては非常に困るケースがあるのです、身勝手な話ではありますが。簡単に言えば会社を食い物にしてたような人がいると必ず邪魔してきますね。

 

 いままでやってきた中で最も面倒だったケースについて紹介しましょう。紹介された案件なのですが、会社を設立したものの、まったく売り上げを上げないまま会社を清算することになりましたという案件です。非常に不思議な話ではありますが、そもそも売り上げがないわけなので、行政手続きでもそれほど詰まることもないだろうと安請け合いしたところ、後から出た出た、問題点が。なんとこの会社、営業許可証、批准証書、印鑑といった会社の存在を正米する資料が一切ないのです。どうやら設立を依頼した弁護士事務所に預けていたようなのですが、授受を証明する資料がはっきりしておらず、弁護士事務所は持ってないと言い張る。しょうがないので再発行しようとするわけですが、営業許可証の再発行をお願いしようとすると印鑑が必要だといわれ、印鑑の再発行をしようとすると営業許可証が必要だといわれ、これだと何も前に進みません。そうこうしているうちにやはり設立を依頼した弁護士事務所が持っているに違いないという話になり、その事務所に私自身が言って担当弁護士と話をしたのですが、驚きました。話がかみ合わんのです。あまりに話している内容がめちゃくちゃで、精神障碍者かと思ったくらいです。しかもこの弁護士の報酬水準がめちゃくちゃ高く、弁護士登録してたかだか2年目のくせに日系有名事務所のパートナー以上の報酬設定なのです。弁護士事務所もはっきり言ってトイレの汚いビルなので、事務所自体の格がそれでわかろうというものです。でもどうしてその九合案とがこんな事務所に当初設立を依頼したのかというと、ある人に紹介されたからということなのですが、あるころからこの紹介者(日本国籍に帰化した元中国人)との仲がこじれ、コミュニケーションが取れなくなったとのこと。最初からズンドコだったのかもしれません。で、結局、営業許可証や印鑑類はどこにあったかというとやはりこの弁護士事務所にあったのです。要はこの弁護士、そんなものは預かってないとウソを言い続けてきたわけですわ。

 

 なんとか印鑑類を取り返した後、会社清算の手続きを進めていくわけですが、その間もこの弁護士、何かと私にケチをつけ、やれ政府を通じて手続きできないようにするとか脅してくるのですが、この弁護士が言う政府、日本でイメージするところの政府でも何でもありません。ただの役所です。ここポイントなのですが、中国人が政府という表現を使う場合、日本でいうところの市役所や区役所レベルを表現するケースが多いですので、決してこの言葉に飲み込まれないように。

 

 こんな紆余曲折があったのですが、結局会社清算の手続き自体は印鑑類を取り戻した後は極めてスムーズに進み、無事終えることができたわけです。あの弁護士が言っていた政府っていったい何だったのか、拍子抜けもいいところでしたわ。

 

 いまだ日本ではいったん中国に進出したら撤退できないとか、いったん中国に入れたお金は持って帰れないとかいう都市伝説のようなことを真に受けている人がいるようですが、全然そんなことはありません。確かに、開発区が撤退を嫌がるのは私も確かに聞いたことがありますが、むしろ古い事業をやっている会社に出て行ってもらって、新しい事業をやる会社に入ってもらうように、会社を入れ替えて新陳代謝するほうがいいと思うのですが、目の前のことばかり考えているのか、この新陳代謝理屈がわからない人は確かにいますが、こういう考え方しかできないのはアホかと思います。

 

 いったん作った会社を清算するということ自体に抵抗を感じる人もいるのですが、個人的にはそのように考える必要はないと思います。ビジネスというのは時代の流れの中で変わっていって当たり前で、撤退することになった会社でも輝いていた時期があったはずです(なかったらなかったでそれは撤退するのに十分な理由ではありますが)。その会社が輝いていた時期と撤退を考える時期とはビジネス環境が違うのは当たり前だということを考えれば、その輝いていた時期に対して「お疲れ様でした」でいいんじゃないでしょうか。何が言いたいかというと、撤退に対してそんなにネガティブに考える必要がないということです。そのように考えることができればもっともっと企業の新陳代謝ができていいのではなでしょうか。


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