呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国税務当局によるPE認定が大幅に厳格化か

 個人的にインパクトが大きいと思いましたので、普段会社のウェブサイトにアップしているニュースレターの内容を転載します。

 

 2013年4月19日付で、《国家税務総局:非居住者企業派遣人員の中国国内における役務提供で徴収する企業所得税に関する問題についての公告》(国家税務総局公告2013年第19号)が公布され6月1日より施行されることとなりました。

 

 本公告は《中華人民共和国企業所得税法》及びその実施条例、中国政府が署名した二重課税回避協定(香港、マカオ特別行政区との間に署名した税収協定を含む。以下「税収協定」という)及び《国家税務総局:〈中華人民共和国政府、シンガポール共和国政府における所得に対する二重課税回避及び課税漏れ防止の協定及び議定書条文解釈〉印刷配布に関する通知》(国税発[2010]75号)等の規定(いわゆる租税条約)に基づいたものとなっており、非居住者企業(以下「派遣企業」という」)よりの派遣人員が中国国内役務提供するにあたってのPE認定について説明するものとなっています。

 

 

1.PE認定

 派遣企業の派遣人員が中国国内で役務を提供するにあたり、以下に該当すれば派遣企業は中国国内にて機構、場所を設立し役務を提供したとみなされます。

(1)

 ・派遣企業が派遣人員の業務結果に対し一部もし

  くは全部の責任とリスクを負担。

 

 派遣企業は中国国内にて機構、場所を

 設立し役務を提供したとみなさなけれ

 ばならない。

 ・派遣企業が通常的に派遣人員の業務成績を考

 査、評価。

(2)

 ・派遣企業が税収協定の締結国に属する企業。

 且つ、

 ・役務提供をする機構、場所が比較的固定性なら

  びに持久性を有している場合。

 当該機構、場所は中国国内に設立され

 た常設機構を構成するものとする。

 

 

 (2)についてはそもそも固定的施設を有しているということなので常設機構、すなわちPE認定されるというのは理解できます。

 しかし、(1)については解釈に仕方によっては余りにも厳しいと言えます。技術派遣のケースと駐在員のケースについてみていきます。

 まず、技術派遣についてみた場合、「派遣企業が派遣人員の業務結果に対し一部もしくは全部の責任とリスクを負担」するのは当然なのですが、これだとPE認定されてしまいます。次に、二つ目の駐在員のケースですが、親子会社であれば独立採算性とはいえある程度「派遣企業が派遣人員の業務結果に対し一部もしくは全部の責任とリスクを負担」するようなケースもあるでしょう。さらに、「通常的に派遣人員の業務成績を考査、評価」に至っては、駐在員の人事は本国の本社で管理しているところが大半かと思いますが、それすらもPEとみなされると読み取れてしまいます。そのため、ここでいう「通常」というのがどの程度なのかという問題が出てきます。ここでいう「通常」が日常的と同義であれば本社が節目節目で人事管理をしていても大丈夫かと思われます。保守的な対応としてはPE認定を避けるために本社が駐在員の人事管理を行わないようすることが考えられますが、現実的にはありえないでしょう。

 

 また、上述の判断を行うにあたり、以下の要素と合わせて確定するものとされています。

 

要素

筆者の推測

1    

 役務を受け入れる国内企業(以下「受入

 企業」と総称)が派遣企業に対し管理費、

 サービス費の性質を有する金額を支払っ

 ている

 管理費、サービス費という名目はかなり広範囲に

 解釈することもできることから、かなりの混乱がも

 たらされることが考えられます。

2     

 受入企業が派遣企業に対し支払う金額

 が、派遣企業の立替金、派遣人員の賃

 金、給与、社会保険費及びその他費用の

 立替払い額を上回っている。

 受入企業が派遣人員に対するコスト以上に派遣

 企業に対して支払いを行うことが、派遣企業の利

 益につながるという考え方によるものと思われま

 す。

3    

 受入企業が支払った関連費用を、派遣企

 業は派遣人員に対し全額支払わず、一

 定額の金額を留保している

 派遣人員に対するコストを派遣会社が負担しきっ

 ていないことが、派遣会社の利益につながるとい

 う考え方によるものと思われます。

4     

 派遣企業が負担する派遣人員の賃金・

 給与全額について中国で個人所得税を

 納付していない

 租税条約締結国であれば183日以下の短期滞

 在者免税規定があります。駐在員の場合は一般

 的に中国で個人所得税を納付していることから左

 記の要素にふれることはありません。しかし、技

 術派遣やコンサルティングで短期間派遣された人

 員の場合、PE認定されない限り中国で個人所得

 税を納付しないのが通常ながら、それを判断要

 素にするという点に違和感が感じられます。

5     

 派遣企業が派遣人員の数、任職資格、

 給与基準及び中国国内における作業場

 所を決定している

 派遣企業が中国で業務を行っているのに等しい

 という考え方によるものと思われます。

 

 以上の規定に合致する派遣企業は正確に取得した所得を計算して企業所得税を申告、納付を行う必要があります。事実通り申告出来ない場合、税務機関は関連規定に従いその課税所得額を査定することができます。

 

 また、以上の規定に合致する派遣企業及び受入企業は《非居住者請負工事作業と役務提供税収管理暫行弁法》(国家税務総局令第19号)の規定に従って税務登記、備案、税務申告及びその他税関連事項の手続きを行う必要があります。

 

 

2.PE認定されないケース

 派遣企業が受入企業への株主権利行使、合法的な株主権益保障のためのみに人員を派遣して中国国内で役務を提供する場合は、当該活動が受入企業営業場所にて行われたからといって派遣企業が中国国内にて機構、場所あるいは常設機構を設立したとは認定されません。なお、ここでいう役務とは、派遣人員が派遣企業のために受入企業投資に対する関連提案を行ったり、派遣企業を代表し受入企業株主総会もしくは董事会へ参加したり等の活動を含みます。

 

 

3.重点的な審査内容

主管税務機関は派遣行為に対する税収管理強化を強化し、重点的に下記の派遣行為と関連する資料及び派遣アレンジの経済実態と執行状況を審査し、非居住者企業の所得税納税義務を確定します。

 

 1  派遣企業、受入企業と派遣人員との間の契約協議または約定。

 2  派遣企業あるいは受入企業の派遣人員に対する管理規定(派遣人員の職責、業務内容、業 務

     考課、リスク負担等の方面の具体的規定を含む)。

 3  受入企業の派遣企業に対する支払金及び関連帳簿処理状況、派遣人員個人所得税申告納 付

     資料。

 4  受入企業の相殺取引、債権法規、関連取引あるいはその他の方法を通じた隠蔽性支払と派遣

     行為関連費用の有無。

 

 これを見る限りでは、受入会社は派遣会社から完全に独立していることを各種資料・規定を以って証明し、むやみに経費の立て替えや相殺を発生させないようにすることで税務局の審査に備える必要があるといえます。

 以   上

 

 ということで、とにかく凄いことを書いてます。条文通りに適用されるのであれば非常に厳しいなあと思いました。「少しでも中国ビジネスに関わったら税金取るぞ!」と言わんばかりです。ただでさえ理不尽なPE認定があるといわれているなか、これが本格的に始まるとさらに大変になりそうです。

 

 会社のウェブサイトには訳文も掲載しましたのでご参考ください。こちらです。http://www.tnc-cn.com/tnc/68.html


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