呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国企業による対日投資

 ここ最近日本企業に対するファンドのイグジット先を探してほしいという話も含めて中国企業の出資を受ける、いわゆる対日M&Aに関する相談を受ける機会が増えてきています。以前の日本企業であれば出資者に中国企業・ファンドが名を連ねることに心理的な抵抗感を持つ企業は少なくなく、本音の部分では今でも変わらないと思います。実際に、「中国系は嫌だけど台湾系ならいい」と言われたこともあります。かといって日本の企業・ファンドだけを対象にしたり、台湾系だってそんなにふんだんにあるわけではなく、なかなか買い手が現れない中で中国系に売却するのもやむなしという考え方も増えてきており、2011年に行われた調査によりますと6割弱の企業が中国企業により買収を望むという結果が出ています。しかしながら、現在中国企業の対日投資は全体から見るとまだまだ規模は小さく、香港等を経由しての間接的な直接投資の数字が反映されていないと思われますが、中国の2010年の非金融類対外直接投資は総額601.8億米ドルに対し、同期の対日直接投資は全体の0.3%の2.1億ドル、2011年は同685.8億米ドルに対し0.2%の1.49億米ドル、2012年の1-11月は前年同期比19%の伸びを示しているものの、絶対額ベースから見るとまだほんのわずかでしかありません。

 

 ここで中国企業の対日M&Aのパターンについてみていきましょう。

 

 買収対象となる日本企業もどの市場に依存しているかで大きく分けて二通りあります。対象企業の日本市場に依存する比率が高ければ高いほど日本マーケットに対する高い理解も必要となり、ドメスティックな企業であればあるほどコミュニケーションの上での言語や商習慣の障害もあります。そのような企業に対するM&Aを成功たるものにするためには、単にカネを出すだけでなく日本企業を切り盛りできる人材もセットで提供する必要があるといえます。それができる人材はそんなに多くないでしょうから、結構貴重なはずです。

 

 一方で、海外依存比率が高い、あるいは高めていこうとする企業であれば日本市場は日本本社に任せ、それ以外の地域に関してイニシアティブを取る-具体的には中国をはじめとする中華圏を中心にアジア市場でのプレゼンスを高めるという戦略が考えられます。これであれば日本企業にとっても日本市場という自らの権益を侵されることなく、買収相手に海外市場でのプレゼンスを高めてもらうことができるのでウィンウィンのM&Aとなる可能性が高くなるでしょう。というか、そもそもそれを目指すのがM&Aでしょう。

 

 日本政府は2020年の対日直接投資残高を2011年実績の17.5兆円から35兆円に倍増させる目標を設定しています。国際的プレゼンスが増している中国からの投資もこの目標達成に寄与することになるでしょう。日本企業が中国系企業による買収を希望するにしても、売って/買ってしまえばそれで終わりというわけではなく、お互いその後の成長=企業価値の上昇が究極的な目的であるはずです。ファンドは企業価値を高めて将来的に売り抜ける、企業の場合はブランドを手に収めることによってそれを経営に生かしさらに企業価値を高めるのが目的となりま。そのため、売る側は「中国系に売却するのもやむなし」とするのではなく、そしてまた買う側は手間暇かけられて育った企業資産を入手し、商品売買よろしく高値で売り抜けることのみを直接的な目的とするのではなく、お互いがどれだけのビジョンを持って新たな方向に育てていけるかでその成否のポイントになるといえますね。


メルマガで最新情報をお届けします
「呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記」の新着記事をメールにてお届けします。今の中国ビジネスの実態をお伝えしております。
メールアドレス *
* 必須項目