呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国不動産バブルが持続しても土地使用権の期限にはかなわない? ~その1

中国の土地は所有権ではなく使用権であることは知られているところでありますが、土地使用権は大きく二つに分けられており、無償割当土地使用権と有償払下土地使用権とがあります。無償割当土地使用権とは、使用者が無償で取得する土地使用権を指し、無償である代わりに譲渡、賃貸、抵当権の設定が認められず、処分性に乏しいといえます。逆に有償払下土地使用権とは譲渡、賃貸、抵当権の設定のいずれもが認められる処分性のある土地使用権です。土地使用権には期限があり、住宅用地70年、工業用地50年、商業用地40年と定められています。この土地使用権の期限に関して、浙江省温州で問題が発生しています。

 

 ある人が中古住宅を売買しようとしたところ取引が成立しませんでした。その理由は土地使用権の期限が到来したからだというのが理由です。期限を延長するためにはあらためて土地払下金を納付しなければならず、その金額は住宅価格の約3分の1とのこと。これに対して温州の役所は、

  • 上に積極的に反映するが、この制度はもっと上のレベルの設計が必要で、地方政府では突破できず、今のところ明確な回答が得られていない。
  • 温州エリアにおける政策及び解決策を検討しており、現在政策意見の初稿起草に着手しているが、近々関連人員を組織して討論したのちに上級に提出し、この問題を解決していく。
  • 現在期限延長したい市民に対して、随時歓迎し、優先的に処理する。

との回答をしています。答えられた側としてはいきなり住宅価格の3分の1を払えと言われて素直に払えないのではないでしょうか。そもそも中華人民共和国建国が1949年なので、仮にこの時に住宅用地を取得していたとしてもまだ70年に満たないのですが、なぜこのような問題が生じているのでしょうか。

 

 繰り返しになりますが、中国の土地使用権は住宅用地に関しては70年です。ところが、温州では地方政策として1990年代初めごろに70年を最高として20年から70年に等級分けして、譲受側が自ら等級を選択して払下手続きを行い、相応する土地払下金を納付するという政策がとられていたのです。そのため、70年に満たないものの住宅用の土地使用権の期限が到来する事例が発生したのであります。

 

 では、払下期限が到来すれば本来どうすべきなのでしょうか。中国の物権法では、「住宅建設用地使用権の期限が満了すれば、自動更新する」とあります。自動更新ということは、70年という期限で土地使用権を購入しても結局のところ期限が来るたびに自動的に更新されるので、結局は永久土地使用権ではないかと思いたくなるところなのですが、どのように更新するのか、更新のための土地払下金を支払う必要があるのか、払い込むとしたらどのような基準で納付するのか、こういった点が今のところ不明確な状況にあります。このような状況であるので、温州市国土資源局土地利用管理処の処長は、もし土地使用権の期限が到来すれば、国有土地使用権ン払下に準じて、第三者評価機関による土地価格の評価を行って土地払下金を算出し、あらためて国有土地使用権払下契約を締結せざるを得ないとコメントしています。期限付きの使用権なのでこの理屈はわかります。しかし持っている側からするとこの覚悟は全くないでしょう。

 

 では、期限満了時に払下金を納付しないで済み続けるとどうなるのかという問題が出てきます。今のところの考え方としては、その土地使用権は無償割当土地使用権のようなものになるだろうという見方があります。つまり、住むことはできるが、譲渡することはできないという土地使用権です。もし譲渡するのであればあらためて土地払下金を納付してからということになります。譲渡する気がないのであればこれでもいいでしょうが、投機目的で購入した人からすると納得すべきながら納得いかないでしょうし、納得しなければならない覚悟もできていないでしょう。

 

 不動産価格が異常だと指摘する人の多くに土地は所有権ではなくて使用権なのにこの価格はおかしいと指摘する人がいます。私もそう思います。最近の価格高騰ぶりを見ると土地と住宅を合わせた価格は本来3分の1当たりが適正と思っていたのですが、土地使用権のこんな問題を聞かされると4分の1でも適正水準なのではないかという気もします。住宅用土地使用権の期限が集中的に到来する時期がいつか来るわけですが、その時に果たして所有者は更新のための払下金を納付する覚悟はできているのでしょうか。更新しなくても(払下金を納付しなくても)済み続けることができるという考え方もありますが、その場合は無償割り当て土地使用権と同じ考え方、すなわち譲渡もできないし賃貸もできない、つまり投機目的で購入した人にとって何の価値もない物件となります。ということは、特に投機目的で購入した人たちがどこかの段階で一斉に売却する時期が来るというのは考えられることですし、そうなると当然のことながら価格は暴落するのではないでしょうか。ギリギリいつまで保有するか、あたかもチキンレース、あるいはババ抜きか。

 

 住宅用土地使用権の期限が集中的に到来する時期はまだ当面先でしょうから、住宅を購入するつもりのない人はこの不動産ゲームを横目に見ながら楽しむということでいいんじゃないですかね?でも、でももし土地使用権の期限が到来したときに投機目的物件に対してまだまだバブって値段が上がると踏んで、通常の売買代金の相場の3分の1に相当する払下金さえ納付すればまた70年売却できるチャンスができると考える人が続出すれば、この狂想曲はまだまだ続くのでしょうか。


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