呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

反日行動のさなかでみられる現実

 ここ最近の中国の話題と言えば反日デモや、それに伴う不買のことばかりです。さすがに少しは落ち着いてきて最近は尼崎のドラム缶事件の方が話題になっていますが。しかし振り返ってみれば今まで日中間の問題といえば、発生しては関係が冷え込んで政冷経熱の状況が続き、気が付くと元のさやに納まっているという、まるで夫婦げんかのような展開が繰り返されてきたように思います。ところが今回に限っては政冷経冷の様相です。最近のテレビ番組の中国特集を見てもだいたい反日デモと中国からの撤退を組み合わせた内容になっており、あたかも反日行動をきっかけに撤退を決めた企業が続出しているかのように見えます。しかし、そもそも現地法人の撤退というような重大な意思決定がたかだか1か月程度の期間で決定されて、それをコンサルティング会社に依頼して、尚且つ進捗している方が不自然な話で、現在進行中の撤退案件は反日行動によるものとは言えず、反日行動以外の理由のものであるはずです。撤退するかどうかは企業が自らの判断で決めればいいのですが、ちょっとあおりすぎのような気がします。

 

 実際のところ、日本企業の中国事業に対する熱は冷めきっているとは言えず、その見方は大きく二つに分かれています。まず、まだ中国に拠点のない企業は往々にして現地から直接得られる情報ツールがなく、厳しめの報道をする日本のメディアから多くの情報を収集することもあってか、ネガティブに構えているところが多いように思います。逆に中国に既に拠点を持つ企業は中国事業に対する熱は冷めていない印象です。NNAが10月中旬に行ったアンケートによりますと、半数以上の日系企業が影響を受けたものの、縮小や撤退を考えている企業はわずか8.7%に過ぎないという結果が出ているように、実際には撤退を考えている企業は日本で考えられているほど多くはありません。すでに深く入り込んでしまった以上今さら撤退しようがないということでしょう。これを危機感がないと指摘する人もいますが、これが現実です。とはいうものの、今後撤退案件は増えていくと思います。まず、近年の中国における人件費コストの上昇等の事業環境による変化がまず一つあげられます。どこかの時点で生産地移転を行おうとしていたところ、今回の騒動をきっかけにするケースですね。もう一つが、本来ならば撤退すべきであったにもかかわらず、社内的なしがらみでズルズルと運営してきたような現地法人が、今回の反日行動を「客観情勢の変化」と口実にして撤退するケースです。誰の責任でもないという状況を理由にできるので、対外的にも説明しやすいですね。

 

 反日デモの時に「日本嫌い」のワーカーが日本人駐在員を追い出す動きが見られた工場がありました。また、最近では沿岸部のワーカーが不足しているため、内陸部まで行って募集するようなケースが出ていますが、受入地側が日系企業に来てもらうのを遠慮してもらうケースも出てきています。賃金以外の理由での採用難です。工場は人がいないことには稼働しようがありません。稼働できなければ工場をたたむしかない。しかし、今のところ景気が弱含んでいるためか募集をかければ面接に来る人は少なくないようです。「反日」よりもやはり「現実の生活」が優先される、これも現実です。こうした「現実」を見ると、今回についてはちょっと先になるように思いますが、結局はいつもの夫婦げんかのごとく気が付くと元のさやに納まるという「現実」がやってくるのではないかと思います。


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