呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

とある撤退企業の話

 この仕事をやっていますと前向きな相談もあれば後ろ向きな相談もあります。今日は後ろ向きな相談事例について紹介します。もちろん脚色を加えています。

 とある日系の貿易会社、もともとの設立の趣旨は中国市場が伸びてきているので、中国に拠点を設けて中国業務をより伸ばしていこうというものでした。ところがなぜか日本本社と共同して取引を獲得していくという方向にはならず、気が付けば本社と現地法人が同じ顧客に対して見積もりを出すような状態になっていました。非常にナンセンスな話です。中国に拠点を設けたのであればそれをフルに活用すればいいものを、活用することによって日本本社の業績が食われるという発想になってしまったようです。気が付くと現地法人は本社からの協力が全く得られず、業務をクローズする羽目になってしまいました。まあしょうがないですよね、あくまで本社が一番偉いわけですから。ただし、そもそもこのような結論に至る前にまず考えるべきは、

(1)そもそもなんで現地法人を設立したの?

(2)現地法人を設立したからにはどうしてそれを活用しようとしなかったの?

大きくこの二点がポイントかと思います。でもそのあたりの発想は本社は全くなかったようで、臭いものにはふた的な処理をしようということになったわけです。この貿易会社、保税区の会社なので日本本社では持てないこの保税機能を活用してビジネススキームで業務を展開すればよかったのですが、このような案を持っていても顧客からすると本社とその現地法人が同時に見積もりが来ると困ってしまいますよねえ。しかも本社の方が格上ですし、顧客にとって現地法人の方が魅力がある見積もりでも本社を選ばないといけないのかなあと困惑してしまうケースも生じ、マイナスな結果になってしまったわけです。現地法人も本社と協同したいという意向はあったようですが、いかんせん本社からみてしょせんは子会社という認識しか持てず、どのようなビジネスを展開しているか、あるいはできるかということにはまったく目もくれようとしなかったという問題があり、何かやろうとしても本社からは「はいはい」的な対応しかしてもらえなかったようです。これとは逆のケースで本来撤退すべき業績ながらそのような現地法人を設立するという言い出しっぺが本社内にまだ残っており、その言い出しっぺがいる間は誰も撤退という結論を言い出せない雰囲気にあるという例もありました。今回紹介しているケースでいえば、撤退を主導した副社長、それに対して事なかれ主義で何も言わない、決めれないその他の役員、そして自分の意見も全くなくただひたすら上が決めたことだからとしか言葉が出ない部長クラス、こういうメンバー構成も問題だったといえるでしょう。これでは現地法人は浮かばれないですね。

 これって明らかに組織が硬直化していると言わざるを得ないでしょう。特に冒頭の紹介事例でいいますと、会社の方向性自体が誤っていたと言わざるを得ず、それを巻き直す努力もないままに撤退するって、これは現地で働いている駐在員にも現地社員にも失礼でしょう。何にも現地法人をサポートしない上に、業務上はバッティングするのでうっとうしい存在になってしまい、最後には「俺様は本社だ!」みたいな態度で来ます。なんか聞いててアホらしくなるような話ですよねえ。


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