呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

小売店とメーカーの協同

 中国でよくみられる失敗事例としてあげられるのが、国外の製品、サービスまたは商業モデルを持ってきさえすれば中国で成功すると思っているというものです。実際にはこれが原因で失敗している例は少なくありません。逆に海外の企業が本国のスキームをそのまま日本に持って来てどれだけ成功できるのかとイメージするとわかりやすいでしょう。国外の成功モデルを持ってくるだけで成功にいたらないため、逆に過度に中国市場に迎合するようなケースもありますが、中国においてはそれがコンプライアンスに抵触するような事件につながり、そうなるとブランドイメージに影響を与えてしまうことになってしまいます。2011年10月に重慶で発生したウォルマートの豚肉の偽装販売がそれにあたるといえるでしょう。この事件は通常の豚肉を有機飼料だけで育てた豚と偽って販売したものです。これによりウォルマートには偽装販売などを理由に同市内にある全13店舗の15日間の営業停止と269万元(約3240万円)の罰金を科す処分が科せられました。また、同社の中国のトップが引責辞任することとなりました。

 

1995年に中国に参入したカルフールは2004年に小売業が解放されたとき、すでに全国17都市に30店舗を構えていました。当初は3か月の決済期間を設けたうえでの仕入販売を通じて利益を上げていくモデルだったのが、いつの頃か決済期間も5か月以上となり、入場料やプロモーション費用等を徴収するモデルを取るようになりました。ウォルマートはカルフールと比べて単一店舗当たりの売り上げで負けていたのですが、同社も2007年からこのモデルを採用し始めた。しかしこのモデルはサプライヤーとの間で緊張関係が発生しやすいこと、お金さえ払えば品質の劣るものまで棚に並べてしまうようなことが発生しやすく、これに加えて最近では経営コストの増加や、人材の流動性が高いことにより運営がより難しくなってきています。 

 

小売店は消費者のニーズと短期利益を過度に追求したために、多国籍企業が本来持つグローバルな競争力を中国に持って来るのではなく、既述したような中国モデルを採用することとなってしまいました。ではなぜそのような状況に陥ったのでしょうか。主に三つの要素があるといわれています。 

 

1.国内の販売店はコストコントロール能力が弱く、単位面積当たりの販売効率が低く、サプライチェーン管理能力が欠如しているため、仕入販売差額を通じて利益計上することが難しい。

2.小売店の販売量は小売販売総量に占める比率は高く、家電類の多くの子類別は80%を超えているが、これだけのシェアを持つためにサプライヤーの価格競争力が劣ってしまっている。

3.消費者が価格に対する要求があまりにも厳しく、販売店はサプライヤー絶えず値引きを行わせることをもたらした。

 

 小売店向けにいくら売っても全然儲からないというボヤキを聞きます。しかしながら、最近では小売店とサプライヤーが協同するような事例も出てきています。蘇寧電器ではERPシステムをサプライヤーに対して開放しており、サムスンやハイアールといったメーカーは随時自社製品の販売と在庫状況をフォローすることができるようになっています。小売店とサプライヤーが売る側と納める側という対立構造でではなく、協同するようになってきているのです。このほかには同じく蘇寧電器の事例ですが、同社は昨年三菱重工と家庭用エアコン販売の合弁販売会社を設立することを発表しています。この動きの中で、蘇寧電器の本部がある南京に研究開発センターを設立し、三菱重工の製品ラインナップの充実化につなげるという動き、そして蘇寧電器を通じて三、四級市場の消費情報を共有し、現地消費者のニーズに合わせた製品を研究開発するという動きが行われます。中国の家電量販店といえば蘇寧電器と国美電機の二大巨頭がおり、このうちの一つと組むということはもう一方との関係が微妙になるのは容易に想像がつくと思います。そういう意味ではかなり思い切った戦略だといえるでしょう。三菱電機のこの取り組み、すなわち小売店とメーカーが協同するような戦略が果たして今後どのような展開を見せるのか、また今後同じような動きを取るようなメーカーが出てくるのか、このあたりが気になりますね。


メルマガで最新情報をお届けします
「呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記」の新着記事をメールにてお届けします。今の中国ビジネスの実態をお伝えしております。
メールアドレス *
* 必須項目