呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

社会保険の記事をきっかけに思ったこと

 日経新聞の報道によりますと、11月25日、北京市政府幹部が年末までの加入登録を義務付けることを明らかにしました。日系企業にとっては影響が大きいということでそれなりに騒がれている記事です。個人的に思うのは、この記事でいまさら騒ぐのもなんだかなあと思います。なぜならば、そもそも社会保険法は昨年すでに公布されており、その条文を読む限りでは外国人も社会保険の対象とするのはわかっていたからです。ところが外国人にも適用するという書き方がされていないから確定といえないという論調があり、中国も気をつかってなのかどうかは知りませんが、外国人も社会保険の対象ですよとアナウンスする通達をわざわざ公布し、各地政府がそれに基づいて現地ルールを制定しようとしているというのが現状です。個人的には社会保険法が公布され、且つ該当部門から「外国人も対象」とコメントすればそれで終わっていた話かと思うのですが、そういう意味では外国人に対して気をつかっているなあと感じます。

 

 日中間に限定して言いますと、医療保険でいえば確かに日本の病院と中国の病院ではあまりにも環境が違い、日本人だと中国の病院のあの黒山の人だかりの中で順番を待つというのはなかなか耐え難く、おのずと海外旅行傷害保険を利用して日系を含む外国系の病院に行くことになります。そうなると中国の社会保険は関係ありません。また、失業保険だって駐在員の場合は関係ないですし、現地採用者の場合でもいざ本当に失業すると滞在資格の問題につながりますので、そもそももらえるのかどうかもわかりません。とはいうものの、日本でも外国人から社会保険は徴収しているので、お互い様という部分で中国が外国人から社会保険を徴収するのは特別問題視される話でもないと思います。将来的には日中間で社会保障協定を締結することで解決に向かう話でありますし、伝え聞くところによると日本側も社会保障協定締結に対してかなり前向きだそうです。いずれにせよ、そう遠くないうちに外国人もすべて社会保険の対象となるということは間違いないといえます。繰り返しになりますが、前からわかっていた話ではありますが。

 

 さて、企業の観点から見ると外国人の人件費コストが上昇するというのがありますが、そもそも外国人の人件費コストは社会保険に関係なく高いのが事実で、現地日系企業の運営について話をしていても「駐在員のコストが高くて、、、」という言葉がよく出てきます。駐在員コスト負担を解決するためには「駐在員を減らす」、「駐在員がコストに見合うコストパフォーマンスを上げる」という方法しかないでしょう。企業によっては前者の「駐在員を減らす」という動きをすでに始めており、現地幹部に中国人をどんどん活用している企業もあります。中には現地化を進めているとアピールするために中国人にポストを与えつつでも権限はポストに見合っていないというのも少なくないですが。私は現地化にも二つあると思ってます。ひとつは皆さんのイメージする現地化、つまり現地法人の職員をどんどん現地人化し、権限も与えていくという現地化です。もうひとつがそのもっと手前にある、そもそも現地法人で勤務する駐在員に対して権限を与えるという意味での現地化です。駐在員ですら権限を与えられていなければ現地スタッフについては言わずもがなでしょう。

 

 社会保険については社会保障協定を締結すれば一応の決着を見ることができるわけですが、現地化については企業によっては時間を要する課題かもしれません。最近『中国で勝つ10の原則と50の具体策』という本を読みました。そこで並べている原則を見ていきますと、

 

1. 日中市場の特質、マネジメントスタイルの違いを理解した上で行動する

2. 日本で成功したビジネスモデルをそのまま中国に当てはめてはいけない

3. 激変する現代中国の実像をつかみ、先見の明を持つ

4. さまざまなステークホルダーの需要を捉え、矛盾の中でバランスを取る

5. 日本本社と中国法人が一体となり、迅速に取り組む

6. 現地人材を惹きつけ、魅了し、やる気にさせる

7. 迅速勝つ賢明な意思決定をし、戦略的に行動する

8. 情に流されない

9. 商談、交渉においては、周到な準備をした上で根気強く駆け引きする

10.    中国社会の動向を把握し、リスクに備え、公的危機を最小化する

 

 まさにそのとおりです。同じようなことを自分もいっているなあと思いました。これってずっと以前から言われているのと同じことなんですよねえ。どれも大事なことだと思いますが、その中のトップ3と思うものについてアンダーラインを引きました。この3つのネックは共通していると思うのですが、あまり中国を理解していない、あるいは昔の中国(オールドチャイナ)のイメージを引きずっている人、がこの傾向にあると思うのです。そしてこういった人が旗振り役になり、その旗振り役に意見する人がいないようだともうどうしようもありません。最近日本にいる比率が増えてきていて、よく耳にするのですが、結構日本の会社で外部の人の協力を仰ぐ会社があり、それは別にいいのですが、オールドチャイナを引きずっているようなコンサルタントやブローカーにいいように言いくるめられているケースが少なくないとのことです。以前からそういう話はよく聞いていたのですが、あらためてやっぱりたくさんいるのかと思いました。そういう人たちって危機をあおったり、相手を言いくるめるのが上手な人が多いようです。なんとかしてそういう輩を駆逐していきたいと思う今日この頃なのであります。

 

  中国で勝つ 10の原則と50の具体策
クリエーター情報なし
東洋経済新報社

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