呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

増値税改革がついに試行開始

 営業税と増値税を一体化する増値税改革の必要性がずっと以前から話題となっておりました。具体的には営業税を納付している納税者が原材料、生産設備、燃料等を購入した際に納付した増値税が控除できず、営業税と増値税の二重課税の問題がずっと指摘されていましたが、2011年11月16日付で《財政部 国家税務総局:営業税を増値税に改正徴収する試点方案》が公布され、2012年1月1日より一部地域で試行されることになりました。要するに営業税という税目が増値税に統一される政策が試行されます。今回はこれについて紹介します。

 

 

1.試点の範囲と時期

 

試点地区 サービス業の発展状況、財政負担能力、徴収管理基礎条件等の要素を総合的に考慮し、あらかじめ経済放射効果が明らかで、改革模範作用が比較的強い地区を選択して試点を展開。
試点業種 交通運輸業、一部現代サービス業等の生産性サービス業から試点を開始し、徐々にその他業界へ広げていく。条件が成熟したときに、一部業界を選択して全国範囲内で全業種で試点を行うことができる。
試点時期 2012年1月1日より試点を開始。状況に基づいて方案を整え、時機を捉えて試点範囲を拡大。

 

 今般の通達とは別に《上海市で交通運輸業と一部現代サービス業の営業税を増値税に改定徴収する試点を展開することに関する通知》が公布されており、同じく2012年1月1日より試行されることになっております。

 

2.主な内容

 

(1)適用税率

 従来営業税は業種により3~20%の税率が適用されていましたが、本試点により営業税が増値税へと適用が変更され、これと同時に、従来増値税率は13%または17%であったのが、新たに11%と6%という税率が追加されます。業種による税率は次のとおりです。

 

有形動産賃貸 17%
交通運輸業、建築業 11%
その他一部現代サービス業 6%

 

税率をこのように区分する理由としては、サービス業ではずっと営業税を納付してきたことにより、増値税控除が始まったばかりではスムーズに処理されないと考えられること、業種によって営業税の税率が異なること等により、生産性サービス業に対して一般製造業と貿易類企業の増値税税率と異なる増値税税率を設ける必要があると考えていることによります。しかしながら、この二つの税率が現れることで、そもそもの増値税の税率が将来的に引き下げられるというシグナルではないかという見方も一部であります。

 

(2)課税方式

交通運輸業、建築業、郵便電信通信業、現代サービス業、文化体育業、不動産販売と無形資産譲渡について、原則として増値税の一般課税方法を適用します。金融保険業と生活性サービス業は、原則として増値税簡易課税方法を適用します。

 

一般課税方法 要納税額 = 当期販売税額 - 当期仕入税額
簡易課税方法 要納税額 = 販売額 × 税率

 

 

(3)サービス貿易

サービス貿易の輸入の国内環節において増値税が徴収されます。要するに輸入に際しては関税と増値税が徴収されます。輸出については0税率または免税制度が実行されます。

 

 

3.過渡的措置

 

(1)税収収入帰属

 増値税改革の大きなネックであった中央と地方の税収配分ですが、増値税は75%が中央、25%が地方に配分されている一方で、営業税は100%地方に配分されています。そのため、営業税が単純に増値税にスライドしてしまうと地方の取り分が大きく減少することになってしまい、そのため地方は増値税改革に積極的になれず、これが増値税改革がなかなか進まない原因のひとつでもありました。しかしこれもあらたに増値税に変更される従来の営業税部分については地方に配分されることから、地方の税収に影響しないということになっています。つまり、ひとつの税目でありながら、その配分が業種によって異なるということになります。なお、試点によって財政減収が生じる場合、現行の財政体制に従って中央と地方が分担して負担するとされています。

 

(2)税収優遇政策過渡

試点業種に対して与えている営業税優遇政策は延長することができますが、改革を通じて重複徴税問題を解決することができる場合、その優遇政策は取り消されます。そして、試点期間は具体的な状況に合わせて適宜過渡政策が講じられます。

 

(3)エリアをまたがる税目の調整

試点は一部地域のみで展開されるため、増値税改革が実行されている地域とそうでない地域にまたがった取引を行うことがありえます。その場合ですが、試点納税人が機構所在地を増値税納税地点とし、異地で営業税を納付する場合、増値税を納付するときにそれを控除することが認められます。非試点納税人が試点地区で経営活動に従事する場合、現行の営業税関連規定に従って引き続き営業税納付を申告することになります。

 

(4)増値税控除政策の連続性

既存の増値税納税人が試点納税人からサービスを購入するときに取得する増値税専用発票は、現行の規定に従って仕入れ税額を控除することができます。


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