呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

外資の人民元による直接投資

 2011年10月12日付で《商務部:クロスボーダー人民元直接投資の関連問題に関する通知》(商資函[2011]第889号)が、2011年10月13日付で中国人民銀行より《外商直接投資の人民元決済業務管理弁法》(中国人民銀行公告[2011]第23号)が公布されました。この二つの通達に基づいて、外資による人民元の直接投資が認められることになりました。外資による人民元直接投資は2011年6月3日に公布された《中国人民銀行:クロスボーダー人民元業務関連問題を明確にすることに関する通知》(銀発[2011]145号)の中でも触れられていましたが、個別案件を試験的に行うというレベルのものでした。今般の二つの通達により、外資による人民元直接投資は試験的ではなく一般的に行われるようになるといえます。

 

1.直接投資する人民元の源泉

 (1)  外国投資者がクロスボーダー貿易人民元決済を通じて取得した人民元、及び中国国内から法に依って取得しそして国外に払い出す人民元利益と持分譲渡、減資、清算、人民元投資所得の先行回収。

 (2)  外国投資者が国外で合法チャネルを通じて取得した人民元で、国外で発行した人民元債券、人民元株式発行等の方式を通じて取得した人民元を含むがそれだけに限らない。

 

 (1)のうち、外国投資者が中国国内から法に依って取得しそして国外に払い出す人民元利益と持分譲渡、減資、清算、人民元投資所得の先行回収による人民元投資は以前からできていたことですので、引き続き現行の規定に従って行われます。  

 

 

2.直接投資資金の禁止される用途

 クロスボーダー直接投資により払い込んだ人民元は有価証券投資とデリバティブ商品に利用することは禁じられます。また委託貸付に用いられることも禁じられます

 

 なお、国内上場企業の第三者割当増資、株式の協議譲渡については《外国投資者の上場企業戦略投資管理弁法》(商務部、中国証券監督管理委員会、国家税務総局、国家工商行政管理局、国家外貨管理局令(2005年第28号))に従って審査されることになります。

 

3.審査権限

 以下に属するものは地方商務主管部門が商務部に上げて審査が行われます。

  (1)  人民元出資金額が3億人民元以上

  (2)  融資担保、ファイナンシャルリース、小額貸付、オークション等の業種

  (3)  外商投資性公司、外商投資ベンチャー投資または持分投資企業

   (4)  セメント、鋼鉄、電解アルミ、造船等の国家マクロコントロール業種 

 

 逆に言えば、これらに該当しない場合は商務部への報告は不要とされますので、地方商務主管部門の審査のみでいいということになります。

 

 概略は以上ですが、若干気になる点があります。商務部門が公布している通知は審査に関する部分なのでこれでいいかと思うのですが、問題は中国人民銀行が公布している部分です。既述のように外資による人民元投資は中国国内からの人民元利益と持分譲渡、減資、清算、人民元投資所得の先行回収による人民元投資は今までも可能であったのですが、これの実務面は外貨管理局の通達を基にして行われてきています。今般の通達は中国人民銀行のみが公布するものであり、外貨管理局との連名となっていません。そのため、中国人民銀行と外貨管理局の通達のどちらを優先すべきかということで、実務面で混乱が生じる可能性があるといえるでしょう。一例を挙げますと、払い込まれる資本金の験資は着金日のレートで換算されるというルールでしたが、今般の中国人民銀行の通達では、「人民元と外貨の換算レートは登録験資日当日の中国人民銀行が公布する人民元レート中間値」となっております。

 

 人民元直接投資を検討している企業は、実務面での混乱に巻き込まれないためにも今後の運用面がどのように集約されていくかを注視していく必要があるといえるでしょう。


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