呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

従業員解雇交渉の現場 ~その1~

 最近携わった案件のお話。案件規模は大きくないのだが、ストレスは結構溜まった。長くなるので何回かに分けてアップしていく。

 とある広告会社なのだが、もうやっていけないということで撤退の相談があった。撤退というと会社の清算手続きをするというのが一般的かと思うだろうが、このケースは投資者が法人ではなく、個人出資の会社で、業績が不振だったのをその個人が資金を投入して支えていたのだが、もうこれ以上支え続けるのは大変だということで撤退しようという話になったのである。

 

 清算手続きを行う場合、基本的には従業員の処理や全ての債務を精算したうえで清算手続きを行っていくのだが、この会社の場合は債務超過なので、会社独自で債務を精算することはできない。投資者がそこそこの会社の場合だと、投資者がお金を突っ込んで債務を精算しようとするのだが、この会社は個人会社、そこまでの資力はない。ということで、会社そのものを放置しようということになった。いわゆる夜逃げに近い形である。ただし、従業員に対しては、永年勤めあげてくれたこともあり、少しでも報いてあげたいという思いが日本側にあり、支払える範囲内で従業員に対して補償金の支払いを行うという交渉が私に託されたのである。小さな会社なので従業員は4名、たいして難しい話でもないかと思っていたのだが。。。

 

 経済補償金の交渉は以前にも行ったことがある。従業員はできるだけむしり取ろうとするので、金額を吊り上げようとあれやこれやと言ってくる。しかし、今回のケースは今までのものとは違った。会社に金がなく、日本側からも追加で資金投入する状況にないのだ。つまり、いくら従業員が騒ごうが、いまある資金の中で我慢してもらうしかなく、それ以上のものを求められても「無理!」と返すしかないという状況、いわゆるない袖は振れないという状態だ。

 

 経済補償金の交渉に入る前に、オフィスの大家さんからの強い要望もあり、入居しているオフィスの分公司登記を抹消手続きを進めようと思ったのだが、提出資料として税務関連資料が必要だった。それ以外の資料はすべてそろっており、財務関連の資料だけは財務責任者に用意してもらわないといけなかったのである。そして財務責任者にそれを手配させようとすると、その準備のために必要な金税盤(発票発行のために必要な器具で、この中に発票発行データ等が入っている)と財務ソフトを立ち上げるためのUSBがないとぬかしやがった。財務責任者によると、押しかけてきた債権者が嫌がらせのために持って行ったに違いないとのこと。このときはまだこの財務責任者を信じていたのだが、実は適当なことを言っていたということが後でわかった。証拠があるわけではないのだが。というのも、従業員全体を集めて打ち合わせしたときに、分公司抹消手続きの話をし、あらためて税務関連資料が必要なので、財務責任者に何とかしてほしいと申し入れした。具体的には、金税盤の再発行手続きと、1月末時点までの財務資料があるのだから、2月分の証憑をかき集めて2月末の財務報告書を作り上げることを指示。はっきり言ってかなりめんどくさい作業だ。実はこの時点でこの財務責任者にはかなり問題があるように思い始めていた。この指示を受けて財務担当者は探すと言い始め、探し始めて5分ほどで金税盤と税務ソフト用USBとも見つけたのである、しかも自分で。明らかに怪しいとしか思えない。(続く)


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