呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

従業員解雇交渉の現場 ~その3~

 さて、残った二人は財務責任者と営業の男だ。営業の男に対して提示した金額は4.2万元(ルール通りだと本来であれば7.1万元)、そして男が5万元を下回るのは受け入れられないという。そこであらためて、今妥結しとかないと1元も受け取れなくなるリスクがあると相当丁寧に説明したのだが、そのリスクをとると言い張る。まったくもって合理的ではないと思うのだが、本人の希望なのでしょうがない。その場はそれで妥結しないまま終わらせた。この日はこれで終わりだと思い、帰ろうかと思っていたところ、なぜか財務責任者と胡散臭い男が交渉の続きをやろうと言いながらやってした。この胡散臭い男がいる場での交渉をするつもりはなかったので、今日はもう時間がないと言って帰ってもらった。結局財務責任者の顔を直接見たのはこの日が最後となった。しばらくそのオフィスでぼーっとし、今度こそ帰ろうと思いエレベータに乗ろうとしたところ、一番の大口債権者とバッタリ。無視するわけにもいかずしばらく話し込み。こちらとしてはない袖は振れないとしか言えず、向こうは向こうで粘ってくる。すでに弁護士を通じて何らかの手続きは進めていたようなので、それに沿って進めていけばいいのではと伝え、その日はお別れ。

 

 退職の交渉が妥結しなかったので、残留した二人はなんだかんだ言いながら従業員という存在であり、必要があれば業務は遂行してもらわなければならない。実際はこの会社は沈むことが決まっている船であり、業務はほとんどなく、事務的な業務があればそれをやってもらうよう指示するだけである。それもちゃんとやってくれず、自己主張だけはする。実はこういう動きがあった。

 

 この会社、日本人の個人が出資しているように紹介したが、実は名義借りで出資しており、実際にお金を出したのは日本人、形式上の株主は中国人となっている。残留した二人は会社の財務状況も分かっており、日本側からとれない(と私からさんざん説明していた)こともあり、なんと形式上の株主からふんだくろうともくろんだのである。実はこれ、わりと最初の頃から会社は有限責任公司なので、出資者の責任も有限責任であり、出資金以上の責任は発生しない、そのため株主に催促しても株主は支払う義務はないというのを何度も何度も説明した。確かに、個人独資企業という概念で設立した会社の株主は会社の債務に対して連帯債務を負うというルールはあるのだが、中国の会社法が改正され、一人有限公司という概念ができてからは株主が連帯債務を負わせられかねない個人独資企業で会社設立する例はほとんどなくなり、基本的には一人有限公司の形態で設立するようになった。この会社も一人有限公司なので、形式的にとはいえ出資金払い込みが完了している以上、株主にはこれ以上の責任は発生しない。しかしわからずやのこの二人の従業員はなんと形式上の株主の娘さんが経営しているお店に出向いて嫌がらせ行為を行ったのだ。(続く)


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