呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

商社マンOBが中国をふり返る ~本音の中国を語ろうその3

私「Mさんは中国での滞在が長い。そしてお仕事を商社駐在以外合弁会社でもされました。このお仕事の過程で実際賄賂を贈りましたか?」

M「鋭い質問ですな。どう答えたらよいか?時効故言いましょう。商社駐在の時は直接金品を送る事は無かったですね。現地法人では、金品の贈りは有りました。先ずは、春節と仲秋節の時は役所に赤い小さな封筒に銭を入れて送ります。初めての時は山東省での電機メーカーと我が商社、中国側との合弁会社を設立して、中国側会社の幹部が役人に銭を送るので了承願いたい、と言って来て、これには私及び日本側は猛反発しましたね。賄賂ではないか!と。中方(中国側のこと)は“長い間の慣習で、しかしこれをしなかった場合、今後ビジネスで不利な立場になる”と脅しをかけて来ましてね。」

私「それで、結局どうなったのですか?」

M「仕様がないと言う事で、払いましたよ。本社側と相談しましたが、当然本社は反対します。しかし最終的には現場に任す、となりまして、“腹が立ちましたが、銭を送りました。賄賂と言う概念ではなく、一種の交際費と考えて処理しましたね。更に、役人接待も頻繁に有りましたが、これも接待と考えて処理しましたね。」

 

私「賄賂と接待費の違いを明確にしておく必要有りますね」

M「賄賂というのは、何か魂胆があってそれを実現させる為に使用するもの。単なるお付き合いは接待費としていました。これは本部の了解を得て実行したもので、後年広東勤務になって、酷いところだね、広東は。とにかく、銭、銭の世界。税関の下っ端職員が私の勤務する現地会社に午後ふらーっと来て“今日田舎から親、親族が来ている。御馳走してやりたい。費用負担してくれるか?”と図々しく言って来た。この様な話が多いので、本社にお伺い立てたら“現地で枠を設けて接待費で処理するなら構わない”との回答で、しかし彼らの要請を断ったら、さあ、大変な事になる。下っ端役人は窓口で権限を有するので、ツムジを曲げたら、相手にしてくれない。賄賂は今言ったとおり、何か魂胆が有って便宜を図ってくれる事を期待して贈るものと心得ていたので、故に賄賂を贈らねばならない状況は絶対避けねばならない、と肝に銘じておりましたがね」

 

私「肝に銘じておりましたが、それらしき物を送ったという事でしょうか?」

M「うーん、まあ、その様な事が有ったのですよ。」

 

私「済みません、どの様な事でしょうか?差支えなければ、お話頂けませんか?具体的にーー。」

M「ウーン、さあ、――それは後で話しますよ。15年以上前の事だからなあーー、記憶も定かでないなあーー。とにかく今言ったとおり、すべて銭、銭の世界ですな。広東での話、中秋節の前に工場長と我が地区の供電公司を訪問しまして、この会社は電気を流す会社で非常に重要。わが社は電気使用量は少ないし、反応釜には半製品が有り、停電するとすべて無価値になるので停電は絶対しないで欲しいと要望に行ったら、地区の共産党の書記にばったりと逢った。その書記は“M先生、そろそろ中秋節だね?”と言ったが、私“何を当たり前の事言っているのか?”と疑問に思っていたら後で工場長が“あれは、紅包を要求しているんだ”」と解説してくれた。その様な銭は小さな紅包に入れて渡す風習なので、この様に言われているのですが、書記の態度が図々しく腹が立って来ましたがそんな偉いさんと喧嘩しても全く意味なく、“仕方ないなあ”と諦めの気分で承諾した事覚えていますよ。

 

役人をしていて財産を築けない人はバカ!と言う風潮が昔からあり、新入りの役人で始めは清廉潔白な人もその内銭の誘惑に負けて図々しくなって来る、ひどい社会ですな。習近平氏が先頭に立って汚職追放運動しているが、本人も結構な財産を築いており、説得力を欠く汚職追放運動ですな。税関の入り口には“金品を貢ぐな!違反したら企業名を公表して出入りを禁ずるという”内容のお触れが出ていたが、これまともに理解している人はいなかったですな。前の総理であった温家宝も一見清廉潔白に見えて実は22億ドルの蓄財をしていた、とニューヨーク・タイムズは報道したが、さもありなん、と思ったよ。当たり前の事で何ら驚くに当たらない。日本では役人が賄賂で摘発されるのは年間精々50名-60名、中国は汚職で2016年は41.5万人が摘発された。メタメタ酷い。」

 

続く


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