呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

商社マンOBが中国をふり返る ~本音の中国を語ろうその5

私「面子の事で、私が具体的に注意する事は何でしょうか?」

M「いい質問だね。日本ではいと簡単に人前で注意する、大きな声で叱正する、“お前アホか!”とかね。又簡単に腰とかお尻を叩いて“しっかりせいよ!”とするが、これは中国では厳禁。こんな事したら、社員全員から猛反発喰らい最悪サボタージュで仕事はできない。わが社の遼寧省にある繊維工場に中堅の中国語ペラペラの社員が本社から派遣され赴任した。ある日朝礼終了後、現地社員に冗談まじりに先ほどの“しっかりせいよ!”と極く軽くお尻を叩いたそうだ。そしたらその社員が怒り、反発した。これを目撃した他の社員も反発、事態は急激に悪化して、社員はサボタージュ。

 その中堅社員は本社中国室の出身で即本社側に指示を仰いだ。本社は“とにかく誠心誠意謝れ”の返答。で、誠心誠意謝った。しかし社員全体は許せない。何しろ中華民族が大和民族に侮辱された、と思ってるから。

 中国のゴールデンタイムでは殆ど毎晩ドラマで日本軍の中国人に対する蛮行が放映されてる。髭を生やした鈴木とか渡辺と言う陸軍の兵隊幹部が中国人を中国語で怒鳴り、殴る、蹴るなどの暴力を振るい、最後は日本語で“バカヤロ”と言って立ち去るシーンで、これを大衆は見ており、日本人から小さな侮辱でもこれを受けたら本当に大変。」

 

私「結局、この騒動はどうなったのですか?」

M「その本社から派遣された社員は、数日後の朝礼で皆の前に跪いて誠心誠意謝罪したそうだ。で、その社員はその後中国人社員と折り合いが悪くなり、早期に帰国を余儀なくされた。傷心の帰国となって、社内でも居心地が悪くなり、その内退職した。簡単な動作、冗談と思ってやった動作がその後の人生を狂わせる重大な事案となってしまった。故にアナタも注意せなあかんですよ。バカヤロと言う言葉は中国人は知っているからね、絶対口外しない事だね。」

 

私「日本人から見た中国人の扱いにくさ、とはどういうものでしょうか?」

M「さあー、何だろう?幾つか有るね。

 一つは簡単には謝らない事。これは中華民族のDNAだね。謝るとその後徹底的に突いて来る。つまり“お前が悪いんだ。お前の所為でこんなになった。どうしてくれるのか?”だね。北京駐在の頃、日本のその石化会社の代表と偶々地方出張で同じ飛行機でばったりと遭った。席が近くなもので、近くの中国人にお願いして隣同士になり、雑談をしたが、その中でその人は以前内モンゴルに出張した時、突然飛行機が揺れて、傍でサービスしていたお茶がその人の肩、膝などにかかり、まあびしょ濡れになったそうだ。で、その人はサービスしていたキャビンアテンダントが黙っていたものだから“謝りなさい”と言ったが、彼女から出た言葉が何と“私が悪いのではありません。飛行機が悪いのです。”と堂々と言った。その人はそれを聞いて空いた口が塞がらなかったそうな。普通なら口論になる事態であったが、その様にDNAが植え付けられているので仕方ない、と後味の悪さだけ残して一日面白くなかった、と言う話をしていた。

 

 以前毒入り餃子事件ってあったでしょ?山東省のメーカーが製造した餃子に農薬が混入していてそれを食べた確か千葉県の人、3人が重体になるという事件が発生したが、中国側は”これは日本側が袋に穴を開けて農薬を混入させたんだ!“と怒った様に言っていたが、数か月して、皆が忘れかけていた頃、中国で犯人が見つかり、結局中国側の問題となったが、この場合でも、謝罪は無し。国家の体面を傷つけられた日本は強烈に文句言うべきであったが、大人の態度を見せて、納めたね。もし中国側の誰かが謝罪していたら、その人、および家族は永久にガタガタ言われるだろうな。自分も広東の会社では社員が重要な書類を紛失したので、謝れ、と言ったがその人は謝らなかった。私はその人の上司に謝ると言う意味、意義を説明してその人から当人を説得して貰う様にWORKして、後日、本人から別途“済みません”の話が来た。この謝罪するべき場面は至る処に有るが、前言った、謝って“お前が非を認めた、賠償はどうのこうの”と話がなって行くと簡単には言えないだろうね。だから、要は謝る意味、意義を教えられていなかったのでは、特に解放後共産主義教育では人間性否定、宗教否定の社会となり、ギスギスしたムードになった。儒の国、論語の教えは遠い彼方に行ってしまったね。

 

 ところが、私が僅か一年勤務したとある会社では、このDNAを打ち破る教育をして顧客を旨く勝ち取っている。どういう事かと言うと“顧客とトラブルになった場合は先ずは社員が謝れ”と教育している。謝ったら、顧客の不平は50%減少、更に幹部が出向いて謝るなら更に25%減少、翌日幹部が菓子折り持参して顧客の家訪問、謝罪したら更に25%減少する“と教育している。で、問題は前言った”謝ったから罪を認めた云々“が気になるところだが、謝るのはたとえ顧客に非はあっても、顧客は不愉快になった、その不愉快に対して謝るという論法で、これを盾に顧客がナンクセを付けると顧問弁護士が出てきて、別室で話するという形を取る。トラブルといっても顧客のミスでのトラブルも多い。要は感情の問題で、あからさまに”アンタがボヤボヤしとったから、こんなになったんや!“と大声でなじったら、面子を失った顧客は頭に来るだろうね。そのところを顧客のプライドを保ちつつ善処しているわけ。」

 

私「面子の問題も絡み、複雑、難しい問題ですね。要は大勢の前では謝らない、個人対個人では謝ると理解して良いですか?」

M「それが必ずしもそうだとは言えないが、一理は有る。人格にも関係するが、後で言いますが性悪説の社会では先ずは自分で自分の身を守る事を身に付けて欲しい。その一つがまずは簡単に謝らない事だね」

 

続く

 


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