2019-05-29

中国企業 IN カンボジア

 米中貿易戦争が発生する前からすでに中国の人件費上昇を嫌気して東南アジアにシフトする動きがみられていました。それは日系企業だけの話ではなく、中国企業も同じです。少なからずに中国企業が東南アジアに工場を進出したものの、思ったほど理想的な業務運営ができなかったこともあり、また中国へ戻ってくるという動きがみられます。カンボジアあたりでも縫製工場なんかが多くクローズしています。その要因を見ていきましょう。

1.人件費コストの上場

 下のグラフをご覧ください。これは1997年以降のカンボジアの人件費コストの推移です。表では2017年までしか出ていませんが2018年が170米ドル、2019年が182米ドルとのこと、実にこの20年余りで4倍以上にもなっています。この金額に福利厚生等を加えると毎月約210米ドル程度となり、なかには500米ドルになる従業員もいます。こんなあがり方なので、カンボジアの周辺国でもカンボジアよりも人件費の低い国はあります。バングラデシュは同じ縫製工場で見ると、毎月の人件費コストは67米ドル、スリランカも67米ドル、インドは77-143米ドル、ミャンマーが79米ドル、パキスタンが134米ドル、ラオスが110米ドルといったところです。ということは、人件費コストからみる限り、カンボジアにはもうメリットは見られなくなったといえ、これゆえにカンボジアに進出したものの、そこから撤退してされに別の国に行くというのはしごく当然のことといえるでしょう。

2.物流コスト

 縫製にあたって必要な生地等の原材料はカンボジア国内で調達することはできず、多くは中国からの輸入に頼っています。中国からカンボジアまでの運送費、関税等を勘案すると、原材料コストは当然中国国内で調達するよりも当然高くつきます。

3.生産性

 東南アジアの人件費コストは低く、これゆえに東南アジアに進出するということにつながるわけですが、生産性が低いというのも中国企業の中では共通認識のようです。ベトナムとインドネシアの工場の生産性は中国の8割くらい、カンボジアは6割くらいとのこと。人件費コストが低くても、生産性も低いので、中国国内で生産する場合と比べても、思ったほど効率的な生産ができないということのようです。

4.従業員の権利意識

 東南アジアのワーカーの権利意識は高く、ストライキ等が起こりやすいそうです。この部分に不満を感じているようですが、他国から見ると中国も同じように見えているかもしれないですね。中国企業といえも他国に行くと労務に悩まされるのです。

5.優遇関税

 今のところカンボジアはヨーロッパとの間では優遇関税が適用されていますが、これが取り消されるとコスト優位性が完全になくなってしまいます。こうなることを見越してカンボジアから撤退する動きが出ているようです。

 日系企業が中国で感じるような苦労を、中国企業は同じように他国で感じているようですね。

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