Author: 呉明憲

中国最新コンビニ事情

 コンビニ店がどんどん増えてきてます。以前にも同じような内容を紹介したことがありますが、直近の情報ということで、あらためて日中コンビニ比較をしてみたいと思います。

 

1.日販額

2017年のコンビニの日販は4936元で、前年比10%。ただし、伸び率は以前ほどではなくなってきているとのこと。日本と比べるとまだまだなので、どこまで伸びていくかに期待が寄せられますが、伸び率は鈍っているのが現状です。

日販

2.粗利

 注目すべきは、2015-2017年の大多数のコンビニ店の粗利(中国語で毛利)が20-30%の間にあり、30%以上の企業は2015年の3%から16%に上昇しています。つまり、高粗利率企業の数量、比率とも増加しているということであります。

 

粗利

 

3.純利益

 純利益が0-4%の企業が多数を占めているものの、この比率も減少し始めており、4%以上の純利益率のコンビニ店と赤字店がそれぞれ4分の1ほどあり、徐々に二極化してきていることがわかります。しっかりと利益を稼ぐところと全く正反対のところが同じくらいいるという状況ですね。

 

 純利益

 

 

4.店舗数増加率

 店舗数の増加率を見ていきましょう。全国平均だと13%ですが、多くの都市、特に二線都市での増加率の大きさが目立ちます。

 店舗数伸び率

 

5.販売商品比率

 即食品(すぐに食べられるもの)の販売比率が10%未満の店舗が2016年が49%に対して、2017年は41%にまで減少しています。10-20%の店舗が18%から24%に上昇しています。つまり、即食品の比率が高くなってきているということです。日本だと生鮮及び半製品の比率が30-40%だそうですので、中国の食品販売り櫃はまだ低いとのことです。なんとなく食品ばかり販売しているイメージだったのですが、そのようなイメージの商品構成でないコンビニ店舗も多いようですね。

 

食品販売比率

 

6.自社ブランド品

 2017年において、自社ブランド商品の販売比率が10%未満と10-30%の店舗が増加しており、それぞれお63%と11%になります。一方、日本では自社ブランド品の販売比率が40-50%を占めており、中国ではまだまだ自社ブランド品の伸びしろがあるといえます。しかし、日本のコンビニってあんまり意識したことがないですが。そんなに自社ブランド品って多かったかなあ。

 

自社ブランド

 

7.加盟店

 2017年の中国コンビニ店の加盟店比率は43%となっています。日本国内における加盟店比率はローソンが75%、ファミリーマートが97%、セブンイレブンが98%であるのに対して、中国の加盟店比率はかなり少ないといえます。中国で加盟店を管理するのが大変だからでしょうか。しかし、店舗数を増やすということであれば、じゃぶじゃぶ資金を投下して直営店をどんどん作っていくのであればいざ知らず、そうでなければ加盟店を増やしていくしかないですよね。

 

加盟

 

 

8.会員

 コンビニごとにポイントをためるカードが日本ではありますが、中国にもあります。といっても個人的には中国だとファミリーマートだと印象がありますが、ローソンだとおそらくあるのでしょうがあまり印象がないです。セブンイレブンはそもそも上海はあまり見かけないのでよくわかりません。

 

 会員システムのあるコンビニ店が2017年時点で40%で、増加傾向にあります。

 

会員システム

 

 そして会員による消費比率は35%とやや増加という状況にあります。こんなもんなのかな。

 会員証比率

 

9.ネット販売

 コンビニって近くにあるものでありながら、ネット販売のニーズもなくはないようです。面倒くさがりな人が多いのでしょうか。ネット販売を導入しているコンビニ企業が2015年の25%から2017年の36%と、実に11ポイントも増加しています。

ネット販売導入企業

 

 で、ネット販売絵を導入した企業のネット販売比率はまだまだこれからのレベルで、2017年で8%程度です。個人的にはコンビニはその辺にあるので歩いて階に行けばいいのにと思うのだが、年々伸びている8%という数字は黙殺するわけにはいかんということでしょう。日本でもやってますし、そういう流れなのでしょう。

ネット販売比率

 

 

10.モバイル決済比率

 モバイル決済比率が30%以上の店舗が56%と半数越え。一方で、10%以下の店舗が32%もあります。二極化しているといえますが、中国でもモバイル決済に慣れていない人が相当数いるということが言えるでしょう。みんながみんな電子決済というわけでもないようですね。

 モバイルけっさし比率

 

 電子決済プレーヤーを見ますと、2016年はアリペイがWechatペイを上回っていたものの、2017年にはこれが逆転しています。その他のプレーヤーの比率も減少しており、もう入り込む隙もないと言い切ってもいいでしょう。

 モバイル決済プレっとフォーム

 

11.今後の課題

 小売業であればどこも同じような課題だと思うのですが、水道光熱費コスト、賃料コスト、人件費コストの上昇が課題と言われています。これに加えて、コンビニならではの管理レベルが低い、物流面の課題もあるといわれています。まだ発展途上であるといってもいいので、どの程度のスピード感で課題が解決されるのか、ここに興味が持たれます。無人コンビニも話題性はありますが、どうなんでしょう。物珍しさは感じますが、どこまで普及しますかね。

中国の個人情報一覧画面

 これ、こないだ中国で発生した通り魔事件の犯人の情報です。Wecahtのグループチャットで流れていたので、相当出回っているのではないかと思います。

 

無題

 

 黒塗りしていない状態で拡散されていました。身分証明書や戸籍住所部分はこちらで黒塗りしています。

 

 下の部分をよく見ると、基本情報、背景情報、活動情報というカテゴリーがあります。この画面では活動情報というのが展開されていますが、旅館宿泊情報、飛行地チケット購入情報、銀行情報、鉄道チケット購入情報という欄があり、この写真では宿泊情報として上海の旅館に泊まった情報、鉄道情報として広州から上海南駅と広州南から珠海までのチケットを購入した情報、中国工商銀行の借入関連情報が記載されています。こんなのが全部一一覧表示されてしまうのかぁ。この他、関係人分析や総合分析という表示があり、これがどこまでの内容を含んでいるのかわかりませんが、気になるところであります。外国人でも宿泊登記もするし、チケットを購入するときにパスポートを提示するので、同じようなシステムが導入されているのだろうか。この画面だけを見ると身分証明書の番号表示となっており、パスポート表示ではないので、少なくともこれと同じ画面でのシステムに外国人は含まれていないのでしょう。でもたぶん外国人のもあるのだろうなあ。自分なんて大した人物でもないのでプライバシーなんて別に知られていても気にしないと思いつつ、こんなの全部把握されているのは気分のいいものではありません。まあでも、中国は電子決済を通じて消費高度を把握されたり、あちらこちらに監視カメラもあったりして、普通の中国人だったらこれくらいのことは何とも思ってないのかも。そもそも変なことでもしない限りこの画面をチェックされることもそうそうないでしょうし。日本だとホテルなんて偽名で泊まれるし、飛行機チケットや新幹線だって本人確認しないし、それに慣れきってしまっているとここまで管理されているのはちょっと抵抗あるかもね。

直近の11省市の最低賃金を見てみましょう

 6月29日に北京市、四川省が最低賃金引き上げを発表しました。北京は毎月2000元だったのが2120元に9月1日より引き上げられます。四川省は1260-1500元だったのが7月1日より1550-1780元/月に引き上げられました。北京市の上げ幅は6%ですが、四川省では等級によって18.7-23.0%もの引き上げとなっています。

 6月29日までの間に、北京、四川、広東、遼寧、新疆、江西、西藏、広西、上海、雲南と山東の11省市が最低賃金を引き上げており、現時点において,上海、深圳、北京、広州、天津、杭州、寧波、温州等の8都市で最低賃金が2000元を超えています。

 

WeChat 圖片_20180704220709

 

最低賃金とはあくまで最低レベルではあるのですが、このレベルの賃金で生計を立てている人は実は決して少なくないようで、労務派遣工や、歩合制の販売員などがそうです。

 

 

上記11省市以外では、安徽省、重慶市の最低賃金が今年中に引き上げられる事が予想されています。関連規定によると、各省市の最低賃金は少なくとも2-3年に一回調整しなければならず、且つ調整幅は原則として社会平均賃金増加幅を超えてはならないとされています。

 

特に工場では最低賃金を見ながら賃金設定をしているところも多いようなので、この数字の動きは結構気になるでしょうね。

 

中国の電子決済(モバイル決済)ってこんな感じ

 日本から中国に来た人がいざ目にして新鮮さを感じるのは電子決済。日本でも非現金決済はクレジットカードや交通系カードを中心にそれなりに普及していますが、中国と比べるとその比率はまだまだ低いといわれています。下の写真にあるVISAが発表したところによると、カード決済比率が日本では17%、中国が55%。中国のカード決済はおそらくアリペイやWechatpayのような電子マネーも含まれているのではないかと思います。

 

st52693_mp-02

Visaが公開した各国でのカード決済比率(Euromonitor調べ)

 

 日本からとある小売業企業が中国視察にやって来て視察に同行する機会があったのですが、そのときにあるスーパーのレジを見ていると電子決済している人がざっくり半分くらい。この写真では55%ですが、誤差範囲内ですね。その方の感想としては、「電子決済って別にそんなにと思っていたけれども、実際に目にするとこれはやばい!」というものでした。レジでの人の流れが速くなることに感心しているようでした。レジさばきが速くなると、その分多くのお客さんがさばけますからね。

 

 日本でも映像で中国の電子決済の様子が流れたりしますが、どうしても現地で見ないことにはその使い勝手の良さが伝わらないのではないかと思います。最近昔の同僚が日本から遊びに来ていて、実際に電子決済を使ってみると、すくなくとも中国ではこれを使えないと日常生活が大変ですなあと感じたとのこと。確かに。

 

 日本で感じるのが、少額決済でクレジットカード使うなよという雰囲気。電車乗るときは別ですよ。でも、お店で数百円程度の買い物をしてクレジットカードを出すことに気が引ける人は多いのではないでしょうか。私も日本だと感じます。でもpasmoみたいな交通系カードだとそういうのはないですよね?これってクレジットカードだとカードリーダーをを通過するのにちょっと時間がかかるせいなのかなあ。

 

 さて、最後に中国電子決済の場面です。スマートホンでQRコードを映し出し、それをお店側が読み取って決済します。ほどなくして決済できたことが確認できます。確かに早い。クレジットカードより早く、日本の交通系カードよりちょっと遅いくらいの感じ。中国にいる間はお金をたくさん持たなくなりましたし、すくなくとも小銭をじゃらじゃら持つことはなくなりました。でも日本に来ると小銭がどうしてもたまってしまうんですよねえ。技術的には日本でも全然できると思うのですが、いろんな会社がやろうとしているので、ブランドが乱立して使い勝手が悪くなりそうな気がします。乱立したブランドを統一して使用できるような機関ができればまた違うかもしれないですね。

 

QBハウスのパクリのパクリ

 以前中国にあるQCハウスという散髪屋を紹介したことがあります。

 

 QBハウスならぬQCハウスが中国で展開

 

 日本のQBハウスと同じく、髪の毛を切るだけ、シャンプーや髭剃りとかはしないところで、料金はわずか10元というものです。そしてこれと同じような、というか同じコンセプトのお店にに行ってきました。QCハウスならぬQHTという会社です。

 

 オープンスペースになっていて、外から丸見えではありますが、清潔感はあります。

WeChat 圖片_20180608144415

 

 決済は現金も使えますが、もちろん主流は電子決済でしょう。アリペイとWechatペイのQRコードが見えます。画面に並んでる人数や番号札の番号が表示されていますが、だれもいなかったので、番号札も並んでる人数もありませんでした。

 

WeChat 圖片_20180608144404

 

 そして、この看板です。これは今回見に行ったQHTの看板です。

WeChat 圖片_20180608144420

 

 そしてこれがQCハウスの看板です。パクッテるとしか思えん!

WeChat-Image_20170327092236

 

 ひょっとして同じ会社なのではないかと思ったのですが、調べたところ同じ会社ではないのです。

 

 私はここを非常に気に入りました。その理由としては、私はシャンプーされるのが嫌いなのです。中国の散髪屋で頭を洗うと爪を立てて頭をごしごしするのですが、それがあまり好きではないのです。散髪屋にって頭を洗いたくない旨伝えても色々理由をつけて頭を洗おうするのです。まず、この会話をしたくないというのが一つ。もうひとつが、しつこくプリペイドカードの購入を勧めてくることです。「1000元のカードを買うとさらに1000元付きますよ、すごくお得だから今日買ってしまいましょう!」といったことを延々話しかけられるのですが、マッサージとかエステとかしないとそんなに消費できないですし、そもそもそういう消費をする気もない、そうなると1000元のカードを使いきるまで何年かかるかわからない、そんなカードは買えないと考えてしまうのです。私と同じような考え方をする人だとこういうセールを延々続けられると相当うっとうしいと思います。本当の本当に髪を切るだけなのですぐ終わりますし、シャンプーやプリペイドカードのセールスの心配もないですし、このお店はオープンしたてということもあって客がほとんどおらず、待ち時間も極めて短い。気に入った!

 

 ちょっと前まで中国の散髪はとても安いので、この手のサービスはそういった激安散髪の存在もあってちょっとしんどいのかなあと思っていたのですが、散髪屋の料金も結構高くなってきてまして、10元とか15元で髪を切れるところってほとんど見かけなくなっています。こういうサービスが受け入れられる土壌になってきたのかなあと。しかし、パクリまではよく見るとしても、パクリのパクリですよー、でも気に入った!

従業員解雇交渉の現場 ~その5(最終回)~

 日本側から依頼を受けた期限の3月31日がやってきた。この時点で残り二人の従業員との交渉は妥結しておらず。お金が欲しかったらそっちから連絡してきたらいいというスタンスで構えて放置していたので、特に交渉もしなかった。実はこの会社、いまどきまだ派遣会社から社員の派遣を受けるというスタイルをとっていたこともあり、私は従業員を放置しつつも、その間派遣会社とは打ち合わせしており、派遣会社の希望もあり3月31日付で派遣された社員を派遣会社につき返すという方針で進めようということが決まっていた。「会社の規章制度を守らない(娘さんのお店に対する嫌がらせという社会道徳に反する行為を行った)、職務を執行せず(メールでの支持を受けないと明言)会社に損害を与えた」という理由で派遣会社につき返したのである。派遣会社に対してはもちろん娘さんの店に嫌がらせをしたことも説明。これで会社と残り2人の社員との関係は切れたも同然。無責任なようであるが、今後従業員は不満があれば派遣会社とやり取りすればよい、それを狙って突き返したのだ。派遣会社も同じようなケースは何度も遭遇しているようで、それは困ると言いながらしょうがないなあという反応であった。この日に男のほうからは連絡があったが、銀行口座が既に差し押さえられてしまったので、金額がいくらであれもう支払うことはできないと説明した。だからあの時に妥結しておけばよかったものを。たかだか0.8万元にこだわって4.2万元をふいにしてしまうとは。アホとしか思えん。この件について一番最初に交渉妥結したリーダー格の人とやり取りがあった。

 

「彼はもう1元ももらえへんよ」

「何を考えているかよくわからなかったが、なんとなくかわいそう」

「今妥結しとかないと1元ももらえなくなるかもしれないって、俺はちゃんと説明してたやろ?」

「してた」

「そのリスクを彼は取ったのだからしょうがない。」

「確かに」

 哀れといえば哀れだが、小さなことにこだわって4.2万元をふいにしたのは本当にアホとしか言いようがない。

 

 さて、その後この二人の従業員は会社に対して労働仲裁を申し立ててきた。仲裁庭からは誰が出席するのか聞いてきたが、だれも出席しないこと、そもそもこの二人の従業員は派遣会社に突き返したのでもう会社とは関係ないこと、会社に関係があるとしても会社の銀行口座はすでに債権者より差し押さえられており、仮に仲裁の結果が会社は二人の従業員に対して支払うべきというものであったとしても支払いようがないこと、法定代表人も中国にいないので追いかけようがないこと、なのでこんな仲裁をやっても意味がないと二人に伝えてくれと仲裁庭の人に伝えたのだが、「そんなこと私の立場からは言えない」ってさ。まあ、そりゃそうか。

 

 このほか、債権者が債権取り立てのための提訴をしたりしてきたが、そのあたりはちゃんと相手の弁護士に状況を説明し、事務手続きだけは協力し、こちらとしてはこの案件はいちおう終結した。

 

 この案件を通じて一つ気になった言葉がある。以前携わった会社清算の時にやはり解雇にあたっての経済補償金の交渉をしたことがあったのだが、その時にある従業員が言った一言を思い出した。

 

「我对这家公司有感情」(私はこの会社に対して思い入れがある)

なんとも美しい言葉なのだが、これを言った従業員はちょっとややこしい人だったのを思い題した。そして今回の案件でも全く同じことがを聞いた。言ってきたのは財務責任者だ。これから同じような話があった時、このフレーズには要注意だな。(終わり)

従業員解雇交渉の現場 ~その4~

 このとき娘さんから電話が来た。

「あの二人が店に居座って出ていかない、どうしたらいいか?」

「ガードマンにつまみだしてもらえばいい。ガードマンが役に立たないようであれば公安に言えばいい」

「そんなことすると大家さんのお店に対するイメージが悪くなって、お店の賃貸契約の更新ができなくなるかもしれない。」

「そんなこと言ってたら何もできんでしょう。とにかく、写真バシバシとって、後に何かあった場合に備えて証拠を残しておきましょう」

 

 この二人の従業員は再三再四にわたる説明にもかかわらず、株主は連帯責任があるのでそこからとってやれと考え、娘さんのほうにも再三再四にわたって株主には連帯責任はないと説明したのだが、どうも連帯債務を負わなければならないという観念から離れられなかったようで、要するに理解していない者どうしでもめていたという訳の分からない状況だったのだ。しかし、これはこれで社会道徳に反する行為なので、あとから何かあった時に、この時の素行をカードとして持っておくことにした。

 

 この財務責任者、本当にややこしいやつで、ルーティンワークもすべて拒否し、日本側に対して「メールは法的効力がないものなので、メールを通じて受けた指示に従うことはできない」というメールを送ってきたのだ。このメールは社長宛で、私あてには送られてこなかったのだが、社長から転送してもらった。社長が中国語を読めないとわかっていることもあり、機械翻訳なのか、知り合いに頼んだのかわからないが、ちょっとたどたどしい日本語で送られてきた。事態の流れがわかっているので、だいたいの内容は理解できた。しかし、メールには法的効力がないという内容をメールで送るという何とも自己矛盾したメールだ。日本側からこのメールに関して相談があったが、会社を放置するという方針で進めていく以上、こんなメールにまじめに対応する必要がないと説明し、これもまた後から何かあった時のためのカードとして持っておく材料とした。(続く)

従業員解雇交渉の現場 ~その3~

 さて、残った二人は財務責任者と営業の男だ。営業の男に対して提示した金額は4.2万元(ルール通りだと本来であれば7.1万元)、そして男が5万元を下回るのは受け入れられないという。そこであらためて、今妥結しとかないと1元も受け取れなくなるリスクがあると相当丁寧に説明したのだが、そのリスクをとると言い張る。まったくもって合理的ではないと思うのだが、本人の希望なのでしょうがない。その場はそれで妥結しないまま終わらせた。この日はこれで終わりだと思い、帰ろうかと思っていたところ、なぜか財務責任者と胡散臭い男が交渉の続きをやろうと言いながらやってした。この胡散臭い男がいる場での交渉をするつもりはなかったので、今日はもう時間がないと言って帰ってもらった。結局財務責任者の顔を直接見たのはこの日が最後となった。しばらくそのオフィスでぼーっとし、今度こそ帰ろうと思いエレベータに乗ろうとしたところ、一番の大口債権者とバッタリ。無視するわけにもいかずしばらく話し込み。こちらとしてはない袖は振れないとしか言えず、向こうは向こうで粘ってくる。すでに弁護士を通じて何らかの手続きは進めていたようなので、それに沿って進めていけばいいのではと伝え、その日はお別れ。

 

 退職の交渉が妥結しなかったので、残留した二人はなんだかんだ言いながら従業員という存在であり、必要があれば業務は遂行してもらわなければならない。実際はこの会社は沈むことが決まっている船であり、業務はほとんどなく、事務的な業務があればそれをやってもらうよう指示するだけである。それもちゃんとやってくれず、自己主張だけはする。実はこういう動きがあった。

 

 この会社、日本人の個人が出資しているように紹介したが、実は名義借りで出資しており、実際にお金を出したのは日本人、形式上の株主は中国人となっている。残留した二人は会社の財務状況も分かっており、日本側からとれない(と私からさんざん説明していた)こともあり、なんと形式上の株主からふんだくろうともくろんだのである。実はこれ、わりと最初の頃から会社は有限責任公司なので、出資者の責任も有限責任であり、出資金以上の責任は発生しない、そのため株主に催促しても株主は支払う義務はないというのを何度も何度も説明した。確かに、個人独資企業という概念で設立した会社の株主は会社の債務に対して連帯債務を負うというルールはあるのだが、中国の会社法が改正され、一人有限公司という概念ができてからは株主が連帯債務を負わせられかねない個人独資企業で会社設立する例はほとんどなくなり、基本的には一人有限公司の形態で設立するようになった。この会社も一人有限公司なので、形式的にとはいえ出資金払い込みが完了している以上、株主にはこれ以上の責任は発生しない。しかしわからずやのこの二人の従業員はなんと形式上の株主の娘さんが経営しているお店に出向いて嫌がらせ行為を行ったのだ。(続く)

従業員解雇交渉の現場 ~その2~

 さて、経済補償金の話に戻ろう。経済補償金は計算公式があり、従業員の勤続年数や給与水準で自動的に計算することができる。いちおう従業員側から経済補償金の案が出されたのだが、そもそもの計算方法が違法解雇を前提として法定の2倍を要求してきており、現状はこれを適用する状況ではないと突き返し。さらに、そもそも会社の預金残高も不足しているので、法定水準のレベルも支給できないと説明。そこで、現実的な案として、現在ある残高を本来支払われるべき経済補償金に準じて4人で案分するというのを提示した。本来は支払いに回すべきお金を払わず、その時点の銀行残高をすべて補償金に充てようという、従業員にとっては状況を考えると現実的且つベストな案といえるはず。しかも、その後破産申請する可能性があることまで説明し、破産申請になってしまうと1元たりとももらえなくなる可能性があると説明。ところが従業員の反応はノー。ということでこの日の交渉は決裂。我ながら現実的でいい案だと思っていたので、ちょっとびっくり。ところが、その後リーダー格の一人からWechatで連絡が欲しいとメッセージがあり、電話したところ「あの案いいと思うだよね。でも協議書がなかったし」って、協議書用意してたっちゅうねん!この案は受入ららないというから見せなかっただけなのに。

 

 後日基本的には同じ案で改めて交渉。債権回収が一部できていたので、補償金として配分する金額を日本側の了解を取ってほんの少し増額して提示。法定通りの金額に満たないとはいえ、この日は妥結するだろうと思っていたのだが。。。

 

 交渉の場には従業員の4人が出席。これは当然として、なぜか財務責任者が今まで一度も会ったこともない男を連れてきて、交渉に参加させるという。その男は、「私は労働局の者で、このような場面に何度も立ち会ったことがあり、交渉を妥結させるべくやってきた。労働局に電話して確認してもらってもいい」と言う。普通役所の人が来る場合、自らの身分を証明する工作証明を提示するはずなので、私のほうから、

 

「こっちから労働局になんか電話しない。あなたのお名前は?工作証明を見せてもらえますか?」

と問いかけるも、それに対してはゼロ回答。私からすると身分の確認できない二元なので、

「身分のわからない人なので出て行ってください」

と伝え、追い出した。要するに胡散臭い男を連れてきたのである、財務責任者は。そしたらその財務責任者もブチ切れたようでその場を一緒に出て行ってしまった。この日で決めてしまおうと思っていた残りの従業員は大慌てだ。その後すったもんだあったものの、二人が交渉妥結し、なぜか一人で戻ってきた財務責任者が補償金の振り込み手続きまで済ませ、なぜかまた出ていってしまった。まあ、提示金額を受け入れたこの二人の行動は正解だ。(続く)

従業員解雇交渉の現場 ~その1~

 最近携わった案件のお話。案件規模は大きくないのだが、ストレスは結構溜まった。長くなるので何回かに分けてアップしていく。

 とある広告会社なのだが、もうやっていけないということで撤退の相談があった。撤退というと会社の清算手続きをするというのが一般的かと思うだろうが、このケースは投資者が法人ではなく、個人出資の会社で、業績が不振だったのをその個人が資金を投入して支えていたのだが、もうこれ以上支え続けるのは大変だということで撤退しようという話になったのである。

 

 清算手続きを行う場合、基本的には従業員の処理や全ての債務を精算したうえで清算手続きを行っていくのだが、この会社の場合は債務超過なので、会社独自で債務を精算することはできない。投資者がそこそこの会社の場合だと、投資者がお金を突っ込んで債務を精算しようとするのだが、この会社は個人会社、そこまでの資力はない。ということで、会社そのものを放置しようということになった。いわゆる夜逃げに近い形である。ただし、従業員に対しては、永年勤めあげてくれたこともあり、少しでも報いてあげたいという思いが日本側にあり、支払える範囲内で従業員に対して補償金の支払いを行うという交渉が私に託されたのである。小さな会社なので従業員は4名、たいして難しい話でもないかと思っていたのだが。。。

 

 経済補償金の交渉は以前にも行ったことがある。従業員はできるだけむしり取ろうとするので、金額を吊り上げようとあれやこれやと言ってくる。しかし、今回のケースは今までのものとは違った。会社に金がなく、日本側からも追加で資金投入する状況にないのだ。つまり、いくら従業員が騒ごうが、いまある資金の中で我慢してもらうしかなく、それ以上のものを求められても「無理!」と返すしかないという状況、いわゆるない袖は振れないという状態だ。

 

 経済補償金の交渉に入る前に、オフィスの大家さんからの強い要望もあり、入居しているオフィスの分公司登記を抹消手続きを進めようと思ったのだが、提出資料として税務関連資料が必要だった。それ以外の資料はすべてそろっており、財務関連の資料だけは財務責任者に用意してもらわないといけなかったのである。そして財務責任者にそれを手配させようとすると、その準備のために必要な金税盤(発票発行のために必要な器具で、この中に発票発行データ等が入っている)と財務ソフトを立ち上げるためのUSBがないとぬかしやがった。財務責任者によると、押しかけてきた債権者が嫌がらせのために持って行ったに違いないとのこと。このときはまだこの財務責任者を信じていたのだが、実は適当なことを言っていたということが後でわかった。証拠があるわけではないのだが。というのも、従業員全体を集めて打ち合わせしたときに、分公司抹消手続きの話をし、あらためて税務関連資料が必要なので、財務責任者に何とかしてほしいと申し入れした。具体的には、金税盤の再発行手続きと、1月末時点までの財務資料があるのだから、2月分の証憑をかき集めて2月末の財務報告書を作り上げることを指示。はっきり言ってかなりめんどくさい作業だ。実はこの時点でこの財務責任者にはかなり問題があるように思い始めていた。この指示を受けて財務担当者は探すと言い始め、探し始めて5分ほどで金税盤と税務ソフト用USBとも見つけたのである、しかも自分で。明らかに怪しいとしか思えない。(続く)