2016-03-29

越境ECの保税輸入ビジネスモデルの危機

 2016年3月24日付で《越境Eコマース小売り輸入税収政策に関する通知》が公布され、越境ECで個人輸入する貨物に対する税収政策が4月8日より変更になります。越境ECによる個人輸入に際して発生する輸入税は、一般貿易と比してかなり優遇されていたこともあり、一般貿易事業者から見た場合の不公平感はぬぐえませんでした。今般の通知では越境ECによる個人輸入商品に対して税率を引き上げることで、この不公平感を是正することを目的としているといえます。税率が引き上げられることから、低税率で購入できるという税務メリットが薄れ、これを頼りの下ビジネススキームへの影響が生じることは避けられません。なお、広州から適用がスタートされるという噂がありましたが、結局全国一律で適用されることになります。

1.輸入商品の納税

(1)対象物品

 越境Eコマース小売り輸入商品について、従来徴収していた行郵税ではなく、関税・輸入環節増値税・消費税を徴収することになり、購入する個人が納税義務者となります。

 越境Eコマース小売り輸入税収政策は《越境Eコマース小売輸入商品リスト》(別途発表の予定)範囲のうち、以下の商品に適用されます。 

1

(2)税率

 越境ECにおける税率は以下の原則のもとに定められます。

2

主な品目別の税率は次の通りになります。

無題

 輸入税額を算出するうえで、貨物価格と輸送費、保険料を合計した金額が実際取引価格として課税価格のベースとなります。実際の聴衆にあたりましては、Eコマース企業、Eコマース取引プラットフォームまたは物流企業が代理徴収義務者となることができます。

 上記(1)、(2)について、まずは取引、支払い、物流等の電子情報を提供できる越境Eコマース小売輸入商品を対象とします。越境Eコマース小売輸入に属さない個人物品および取引、支払い、物流等の電子情報を提供することのできない越境Eコマース小売輸入商品については、現行の規定に従って執行されるということですが、実際には保税区を経由しない直送の場合は納税していないケースが多いです。しかし、6月以降は厳しく管理する六重の通達が別途公布されており、実務においてどの程度厳しく運用されるかが気になるところです。

2.取引限度額及び税率

 取引限度額は1回あたりの限度額と年間あたりの限度額が設けられています。具体亭には、1回あたりは2,000元まで、年間あたりは2万元までの限度額となります。個人が使用するものとして合理的な数量であるか否かをもとに設定されたものといえます。しかしながら、日用品であればいざ知らず、ちょっとした高級品であればこの程度の金額はすぐ超えてしまいます。この金額制限は決して十分余裕のあるものとは言えないでしょう。

3.身分情報認証

 越境Eコマース小売輸入商品購入者(発注者)の身分情報は認証を行う必要があります。認証を行わない場合、購入者(発注者)の身分情報は支払人と一致する必要があります。多量に個人輸入することを防ぐことを目的としているといえます。

 こうなると運送料比率の高くなる定額品より高額品の直送モデルのほうがよさそうな気がしますが、直送モデルとてどこまでおめこぼしされるかわかりません。ビジネスモデルに影響する通達といえます。ついこの間まで奨励されていた越境ECがこの通達による逆風に対してどのように立ち向かうでしょうか。

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