2019-09-10

中国で働くのならビザの手続きは抜かりなく

タイトルは「中国で働くのならビザの手続きは抜かりなく」ですが、正しくは「外国で働くのならビザの手続きは抜かりなく」ですね。

さて、最近上海日本商工クラブのウェブサイトの新着情報で「入管の居留許可取得に関する運用について」という案内が掲載されました。ここで、「最近、居留許可手続き完了前に就労を開始したとして、摘発される事例が外資企業で相次いでいるという情報を入手しました。」と書かれています。要するに居留許可手続きをする予定ではあるものの、その手続きが完了する前に仕事を始めたということが摘発対象になっているというものです。これが発覚すると企業・個人ともに罰金が科せられます。手続きや手順(居留許可取得してから給与を支払う等)さえしっかりとしていれば防げる問題です。ここで紹介されるケースは居留許可を取得することを前提としていながら、踏むべき手順をしっかりと行わなかったことが原因であり、今後気を付けることで防ぐことができるでしょう。ここは中国という外国、外資企業、外国人は中国企業、中国人以上に気を付けるべきであるといえるでしょう。

この情報を見て思いだしたのですが、どうもビザに対する認識が甘い人が多いように思います。一つ目は、Mビザで働くケースです。そもそもMビザとは何か。中国ビザセンターのウェブサイトによると、「商業貿易業務で訪中する物」(原文ママ)とあり、申請にあたって「中国国内の貿易相手発行の商務活動書類、経貿交易会招聘状など。」が必要なことからあくまで中国国外企業の身分として訪中して商業貿易業務を行うことを目的としたビザといえます。しかしながら実体的には中国国内での就業を目的としてMビザのみを取得して中国国内で就業しているケースが見受けられます。このような人は以前も多かったのですが、私の個人の感覚としては、どうして会社は(当時)就業証を取得する手続きをしてあげないのか非常に不思議に思うのです。ちゃんとしたビザの手続きくらいしてあげればいいのにとしか思えないのです。そういえばかなり以前にはなるのですが、日本のちょっとした会社の副総経理をやっていた知り合いがいたのですが、その方は居留許可を取得せずMビザ(当時はFビザと呼ばれていた時代かも)で駐在していた人がいます。駐在手当を節約するためにそのようにしていたようですが(でも出張手当は出ていたとのこと)、現地法人の肩書まで与えておきながらおかしな話です。ばれやしないだろうと思う人も多いでしょうが、厳密には違反といえるでしょう。その根拠として次のような通達があります。

《中華人民共和国出境入境管理法》(中華人民共和国主席令第57号:2012.06.30公布、2013.07.01実施)第43条 外国人に以下のいずれかの行為がある場合、違法就業に属する。(1)規定に従って工作許可及び工作類居留許可証書を取得せずに中国国内で仕事をする場合。(2)工作許可で限定する範囲を超えて中国国内で仕事をする場合。

Mビザで勤務するというのはこの(1)に違反することになりますね。なんとなく中国だったら許してもらえるという思い込みを持っている人、特に古い時代から中国とかかわっている人にこのような感覚を持つ人が多いように思いますが、さすがに中国もだいぶん変わってきてます。このあたりの感覚もブラッシュアップしていく必要があるでしょう。

次にフリーで活動する人について見ていきましょう。フリーで活動している人は名目上どこかしらかの組織に所属している形にして就業するケースが多いかと思います。中国では外国人(香港・マカオ・台湾人を除く)が日本でいうところの営業性個人(中国だと個体戸という)で活動することが認められていないため、法人成りせずに営業性個人として活動するのであればこのような形にせざるを得ません。これは所属する組織とその個人の関係というか仕切り次第ですが、単に名義だけを借りて、名義を貸してくれた企業と何ら関係のない仕事内容で、フリーとして好きな活動をしていると、《中華人民共和国出境入境管理法》第43条(2)の「工作許可で限定する範囲を超えて中国国内で仕事をする場合。」とみなされるリスクがあります。工作許可証や居留許可を持っているからといって、どんな仕事をしてもいいというわけではないのです。このあたり留意すべき点かと思います。とはいうものの、個人レベルでものすごい規模のビジネスができているケースもそれほどないでしょうし、あえてそういうところに突っ込みを入れる可能性はあまり高くないように思います。

そして、外国人工作許可申請についてです。多くの駐在員の場合、大卒2年以上勤務という経歴を以って比較的簡単に外国人工作許可証を取得することができます。問題は大卒2年以上勤務でない場合、もっと絞り込みますと大卒でない場合ですね。大卒でない場合でも外国人工作許可証を取得することはできます。私のところでも扱った事例はあります。たまたま面倒なケースばかりを扱ってきたこともあって、大卒でない場合の外国人工作許可の取得の要領も大体わかってきてます。簡単に言えば真正面から申請するのが一番いいということです。ちまたで、「大卒じゃないから簡単に外国人工作許可をとれないので、特殊なルートを持つ人にお願いして取ってもらわないといけない」という話を聞きます。「難しい手続きなので、人脈を通じて進めていくしかない」と言われると、中国という国はそうなんだと思う人が今でも少なくありません。もちろん、このようなケースは皆無ではなく、特殊なルート、人脈を通じて物事を解決するケースは今でもありますし、私もそういう場面に出くわしたことがあります。が、特殊なルートを通じて申請すると言っておきながら、実はそんなルートを使っての手続きなんてしていないようなケースがあります。そもそも特殊ルートを使う必要がなかったり、申請にあたってちょっとした工夫をすることで普通ルートで申請しているケースです。多くの場合は特殊ルートなんて使わずにちょっとした工夫をすることで申請しているケースが多いと思います。このあたりは依頼する側が手続きをしてくれる人がちゃんとしているかどうかをしっかり見極める必要があるといえるでしょう。工作許可証(または工作許可通知)さえ取得できれば居留許可は難なく取れますね。

冒頭に書きましたように、ここは中国という外国、外国企業や外国人は立場が弱いという認識の下で、できるだけ正当な方法で物事を進めていくに越したことはありませんし、むしろそのようにすべきであることを意識していただければと思います。

タグ: ,
関連記事