2020-08-13

海底撈 VS 河底撈【中国の商標トラブル】

 麺伸ばしパフォーマンスでおなじみの海底撈が何やらもめています。もめている相手はこちら河底撈だ!

 海底撈が河底撈を商標権侵害で訴えたのです。ちなみに海底撈の商標はこれ。

 パッと見は違うということはわかるのですが、いかにもパクった感が否めないでしょう。印象としてはアントニオ猪木とアントキの猪木、長州力と長州小力の違いのようなものか。河底撈は長沙市に登録されている会社ということもあり長沙の人民法院でで一審が行われましたが、なんと原告海底撈の訴えは棄却されました。

 海底撈は1994年に設立された四川風味の火鍋を主とする各地の火鍋の特色を取り入れた大型直営火鍋チェーンです。以前行ったことありますが、からかったという印象はないので、いろんな味付けがあるのでしょう。これに対して河底撈は2018年9月に登記されたばかりの会社です。海底撈は河底撈が使用している河底撈のマークと海底撈が商標登録している「海底撈」は類似商標であり、河底撈が使用している河底撈は海底撈の「海底撈」商標侵害に当たるという訴えです。はい、とてもよく理解できます。

 被告の河底撈の抗弁としては、「河底撈」のマークと「海底撈」の証憑は類似商標にあたらない、読み方も違えば、字形も異なるし、提供している料理やスタイルも明らかに異なるというものです。

 一応補足しますと、四川料理も湖南料理も辛いのですが、細かく言うと四川料理が辣(ひりひりする唐辛子の辛さ)、湖南料理が麻(山椒の舌がシビれるような辛さ)ということで、辛さの性質の違いはありますが、いずれにしても辛いという点では一致してます。

 さて、人民法院の考え方ですが、①「河底撈」のマークと「海底撈」の商標のいずれにも「底撈」の二文字があるものの、文字の全体の字体や、両者に一定の違いがあり、発音からしても「河」と「海」は近いとは言えない、②海底撈の店舗で提供しているメニューは全て四川風味の火鍋で、河底撈が提供しているのは典型的な湖南料理、というもの。①②とも被告河底撈の主張そのまんまですね。そして人民法院は被告河底撈は原告海底撈の登録商標「海底撈」を侵害していないと判断し、原告四川海底撈餐饮股份有限公司の訴えを棄却しました。感覚的には海底撈が勝ってもよさそうなのですが、こういう考え方になるんですね。なんでも「海底撈」商標の侵害案件はこれだけではなくいろいろあって、勝ったものあるのですが、今回は負けてしまったのであります。

 おしまい。

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