Date: 11月2013

日中スターバックスのコスト比較

 少し古い話題となってしまいますが、中国でスターバックスの儲け過ぎ批判が出ました。個人的には中国のスターバックスよりも高い喫茶店なんていくらでもありますし、高いと思うのであればなまなければいいだけの話なので、批判すること自体が的外れに思いました。また、中国人消費者からも同じような意見が出ていました。

 さて、同じビジネスをするにしてもその国や地域によって損益構造が異なります。中国では最近人件費上昇、原材料上昇、賃料上昇あたりがよく言われていますが、スターバックスの日中のコスト構造がどのように違うか見てみたいと思います。なお、中国はラテの価格に対してどれだけのコストがかかっているか(一財網より引用)をベースにしており、日本はスターバックスコーヒージャパン株式会社の公開資料からデータを引っ張ってきており、まったく同じ尺度で比較しているわけではなく、目安として参考にしてもらいたいということでご了承ください。

 

 

 まず、店舗商売で一番よく言われる賃料について見ていきましょう。売上高に対する比率で見ますと、中国26%に対し日本11.2%、中国は日本の倍以上です。めちゃめちゃ高いです。

 次に人件費を見ていきましょう。中国9%に対して日本26.4%。これは日本が約3倍。人件費が上昇してきたといわれていますが、この手の業種の人件費だとまだまだ中国は安く手当てできるということでしょうか。中国の場合は店舗の人件費のみで、本部スタッフの人件費が入っていませんが、それでもこお9%という数値が飛躍的に上がることはないでしょう。

 中国の原材料費率は13%、日本の粗利率を逆算した原材料費率は16.3%、中国がやや安い。日本の売上総利益の計算方法にもよりますが、まあこんなものなのでしょう。

 中国の利益率が18%となっていますが、税金が5%と営業税のみを計算しているため、これは日本でいう法人税前利益ということになるかと思います。それにしても18%は結構高い水準です。日本だと営業利益で8.3%ですから。

 以上を比較すると、店舗賃料と人件費で日中の場合はほぼ相殺されて、原材料費率が日本の方がやや高いということになります。本当なら全く同じ物差しで比較してみたいのですが、これで大よそは分かっていただけるかなと思いました。それにしても、中国の賃料めちゃめちゃ高いですねえ。

中国地方都市の不動産のリスクの高まり

 中国内販のキーワードとしてよく中国内陸市場が取り上げられます。沿岸部はある程度成熟してきており、コストも高く競争も激しいので、いっそのこと地方都市を攻めようという考え方です。しかし、どうも不動産に関してはそうでもなさそうだというデータがあります。

 

 国家統計局が1-10月までの大中都市の不動産価格を発表したところによりますと、温州以外の全ての都市で値上がりが見られ、そのうち21の都市は値上げ幅が10%を超えています。しかしながら、これは一二線都市にみられる現象であり、三線都市はそれほどではありません。一線都市の値上げ幅は二線都市を上回り、二線都市の値上げ幅は三線都市を上回っています。三四線都市の不動産は既に供給過剰の状態にあり、不動産在庫もたまりつつあります。売れないのです。三四線都市と一二線都市の最大の違いは購買力の違い、そして土地の供給が多いことにあり、どうしても三四線都市では不動産在庫がたまってしまう状況にあります。なので、これらのとしては値引き販売が日常の光景になってきているようです。

 

 上海易居房地产研究院がモニタリングしている20都市において、10月末までのデータを見ますと、一二三線都市の新築商品住宅在庫量は2748万平方メートル、2760万平方メートル、2251万平方メートル、そして増加率で見ると、▲9.2%、▲3.6%と一二線都市はマイナスとなっているのですが、三線都市はなんとプラス17.4%となっています。一線都市と比べると30ポイント近くも違います。克而瑞信息集団研究中心が今年7月に発表した《中国都市住宅発展展望とリスクランキング》によりますと、三線都市の不動産市場リスクが一二線都市より高いことがわかります。ランキングの中で、隴南、武威、酒泉、定西、オルドス鄂尔多斯(オルドス)、固原、平凉、延安、慶陽、張家界が都市不動産発展リスクのトップ10で、その逆の発展見込トップ10は上海、北京、深圳、広州、重慶、天津、成都、瀋陽、蘇州、南京といった都市です。リスクの高い都市トップ50は基本的には三線都市で、中には二線都市も交じっています。そして発展見込トップ50位は一二線都市を中心としており、三線都市はあまりありません。

 

 

 

 上の表を見ていただければわかりますが、ほとんどがなじみのない三線都市です。あまりになじみがなさ過ぎて、直接的なビジネスへの影響はなさそうに見えます。しかしこんな状況でも一線都市だとまだまだぐんぐん上がっているのが不思議です。21世紀網というニュースサイトで手軽に不動産価格推移をみることができますが、一線都市と呼ばれる北京、上海、広州、深圳の昨年(灰色)と今年(オレンジ色)の動きは次の通りです。

 

   

 

  

 

 なんと去年よりも上がり方が激しいです。これを見る限りでは去年は結構不動産価格を抑えることができていたんですねえ。一線都市と特に三四線都市の価格差がますます拡大していく方向にあります。もういいけがんあげどまってもいいという見方をしていた人も多いと思いますが、市場の動きは全くそうなっていません。果たしていつまで続くことやら。

元駐在員の中国口座、凍結の危機?

 中国に駐在して、ためたお金をそのまま中国の口座においている人は少なくないと思います。今では銀聯カードで買い物ができますし、手数料は安くないですが日本でも出金できますので、なおさら中国の銀行に置きっぱなしにしている人も多いのではないかと思います。そんな元駐在員に恐ろしい知らせがあります。こちらをご覧ください。中国工商銀行の個人顧客に対するお知らせです。

 

 

 

 要するに、2007年6月30日以前に身分証で本人確認して人民元預金口座を開設した人、まあこれは関係ないです。そして戸籍簿、パスポート、軍官証等の身分証以外のその他の証書で本人確認して口座開設した場合、あらためて本人確認しますという案内で、この確認ができなければその口座からの出金や振り込みといった現金を出すための操作がストップされるというものです!これは中国工商銀行からのお知らせですが、ひょっとするとほかの銀行でも同じことが起こるかもしれません。日本に帰った元駐在員にこのような知らせが果たして届くかというと、連絡先を携帯電話にしていた場合、その連絡を受けることはできなくなってますし、電子メールもひょっとすると今は使っていないアドレスを登録しているかもしれません。連絡が取れなくなるとせっかくため込んだ口座が凍結されてしまうかもしれません!一大事ですぞ!

中国小売業者の商品損耗率

 中国の工場で部品や製品が盗難にあう、持ち逃げされるというような話を時々聞きます。工場はある程度限定された場所なので、あまり身近に感じませんが、ここでは店舗でどれだけの商品が亡失なっているかについて紹介しましょう。

 

 ユーロモニターインターナショナルという会社が16の国に対して行った《全玉零售窃盗晴雨表》という調査によりますと、2012年から2013年にかけて、中国大陸において、外部者による窃盗、従業員による盗難、サプライヤーの詐欺及び事務ミスによりもたらされる商品の平均損耗率が1.5%、全世界ベースでは小売総額の1.4%という結果が出ています。中国はブラジルとメキシコの1.6%に次いで下から三番目になります。そしてこの1.5%という数値が直近12か月の1.11%と比べて大きく上昇しています。

 

 さて、業態別の損耗率を見てみましょう。まず、電子製品・家電小売業者の損耗率は3%、雑貨小売り業者が0.3%となっています。大型の売り場の場合管理が難しいようで、どうしても小ぶりなスーパーや雑貨屋に負けてしまうようです。ちなみに、日本の損耗率は1%程度で調査対象国中で最も小さい数値となっています。それに次のが香港、オーストラリア、ドイツと言ったところです。

 

 従業員による盗難と外部者による窃盗ですが、損耗の二大要因と言われています。中国大陸の従業員の盗難率は35%で、調査対象国中第二位、多いですねえ。よくスーパーのレジを超えたところにセンサーがあり、いちおうレジを通していない商品を持って出ようとした場合に音が鳴るものがあります。私は一度だけセンサーがなってしまった(確か武漢だったかなあ)ことがありますが、ちゃんとレシートを見せて事なきを得ました。ちゃんと買いものしてもなるということは、逆に買ってなくても出れてしまうこともあり得るのではないかと思いきや、実際に商品のリュックを背負った子供がレジを通さずに何事もなくそのまま出て行ってしまったという話(もちろん故意ではない)を聞いたことがあります。果たしてあのセンサーはどこまで有効なのだろうかというのは前々から気になっていました。しかし、従業員による盗難率が35%はちょっとひどいですねえ。小売店舗にとっては家賃が高い、人件費が高い、そして盗難率が高いというのも意外と気にしないといけない点かもしれないですね。

共同購入サイト比較 ~日本・中国・台湾~

 先日こんな報道を見かけました。

 台湾、共同購入が大人気 10月の月間総売上高15億円超

 http://japan.cna.com.tw/news/aeco/201311080013.aspx

 台湾で行動購入が大人気だそうです。そういえば中国も共同購入が騒がれていた時期があったなあ。なんかすっかり昔のことのような気がします。それもそのはず、2010年よりみられるようになった中国の共同購入ですが、腰までの間に9割のサイトが消えてしまっています。まずは取引成約額を見ていきましょう。

 

 

   (21世紀網より)

 

 取引額はずっと伸びてきており、直近もかなり伸びています。個人的には最近ほとんど気にも留めなくなった共同購入ですが、人知れず成長していたのですね。さて、次にサイト数を見ていきましょう。

 

 

   (21世紀網より)

 

 オレンジのラインを見てください。2011年初めに5058もあった共同購入サイトが2013年2月には943、そして9月末時点では494にまで減少しています。ざっと9割がなくなってしまったということです。サイト数は減ったのですが、赤のラインで示されている成約額は今年は2011年の3倍になることが見込まれており、要するに寡占化が進んだということですね。水色が上位5サイトのシェアですが、2011年は55.8%だったのが、今では88%にもなっています。知らない間に力の強いところだけが残る形になったということですね。ちなみに上位5サイトというのは美団、点評、拉手、窝窝、糯米です。気に留めないようになったとはいえ、この辺りの名前は知っています。

 台湾では10月の成約額が5億NT(約17億円)、中国は7-9月の月間平均がざっとと30億元(480億円)、中国は台湾の30倍近くか。ちょっと古い数値ですが、株式会社ルクサというところが発表した日本の共同購買のデータだと、2012年1月が29.5億円、日中台の経済規模を考えると日本は少ないですねえ。日本の推移を見てみましょう。同じく少し古いですが、2010年5月から2012年1月までです。

 

 

 (出所:株式会社ルクサ)

 

 これをみると日本は頭打ち感があります。これはちょっと古いので、2013年1月と2月の数字を見つけてきました。

 

 

  (出所:クーポンJP)

 

 やっぱり日本月間30億円強なんですね。改めて振り返ると、台湾が月間17億円、中国が480億円、時期も違うので単純比較はできませんが、仁こういぇ経済規模を考えると、台湾も中国も共同購入は日本よりもずっと多いといえるのではないでしょうか。特に中国なんて推移をみているとまだまだ伸びていきそうですね。行動購入の存在を気にしなくなっていたのですっかり落ち着いたと思っていたのがまだまだ伸びているのにちょっとびっくりでした。

中国31省区市の2012年都市住民収入ランキング、トップは上海

 国家統計局の発表によりますと、2012年の都市住民の一人当たり平均可処分所得は24,565元で、1978年と比べて71倍になりました。価格要素を除くと年平均増加率は7.4%です。農村住民の一人当たり平均純収入は7,917元で、これは1978年と比べて58倍、年平均増加率は12.8%、価格要素を除くと7.5%となっています。都市と農村の格差が広がったと言えます。数字が一見小さいように思えますが、あくまで一人あたりですので、収入のない未就業者も数に入っていることによります。

 

 さて、都市別のランキングを見ますと、トップは上海で40,188.3元です。続いて北京、浙江省、広東省、江蘇省までがベスト5です。中国の消費者をターゲットにするビジネスにおいて、この数値は一応の参考になりますが、必ずしもこれだけを頼りにするわけにはいきません。収入が多いイコール消費も多いイコール売り上げが上がる、までは言えるでしょうか、利益が上がるに直接結びつくとは限りません。そうです、各地域によってコストが違うからです。ここ最近中国消費マーケット関連の調査を行っており、上海からスタートしているのですが、やはり上海のコスト高には皆悩まされています。同行している日本側から出た質問が、「そこまでわかっているのであれば内陸も含めた別の都市に行けばいいのでは?」。そうです。そうなんですが、情報の少ない地方都市でどこまで独自で市場開拓できるのかという別の問題が立ちはだかるわけです。それに重慶の平均可処分所得を見て上海の半分強程度なので、そこにためらいを感じる人もいるでしょう。最近でこそ地方の大都市である成都、重慶、武漢あたりの情報も増えてきており、大よその状況まではつかめてきていると思うのですが、個社がその市場を開拓するまでの報収収集はまだ不足していると思います。とはいうものの、飽和状態の沿岸部をひたすらせめても効率的によくないでしょうから、異なるエリアの開拓も考えていかなければならないでしょう。もちろんやみくもに広げても会社の資源的な問題もありますので、そのあたりは会社の状況を射ながらではありますが。

 

 

【11/21(木)東京】TNCセミナー「中国における贈収賄のリスク~不正を暴け!~」

 中国では2013年7月に英国系医薬品大手のGSK社が賄賂容疑で幹部が逮捕され、これをきっかけにその他の外資系医薬会社にも調査の手が伸びています。これほどまでに大がかりな事件とまではいかないものの、日系企業の中でもビジネス取引上、あるいは行政機関との付き合いの中で生じる賄賂、さらには現地法人が収賄側となるようなケースもあり、およそ日本企業のコンプライアンスの観点から看過できないような事象が現実に見られます。実際に日系自動車部品メーカーにおいて中国の地元政府に対する贈賄容疑で逮捕者が出るような事件が発生したのは記憶に新しいところかと思います。

 

 中国では贈賄は必要悪と言う見方をする人もいます。確かにそのような面があることを完全に否定しづらい面もありますが、だからといってそれを野放しにしたままでいいものでしょうか。もしそれが発覚した場合に自社に対してどのようなリスクが生じるかまで腹をくくったうえで行っているのでしょうか。贈賄も問題ですが、収賄も問題です。そして、中には実際に収賄を行うことで駐在員も含む従業員が私腹を肥やしているケースもあります。

 

 そこで今回のセミナーでは今後の中国における贈収賄のリスクについて解説するとともに、現地で実際に発覚した事例、贈収賄を防ぐためにとられている日系企業の取り組みについて紹介することで、今後の中国事業運営にご参考いただくことを考えています。

 

 ご多用とは存じますが、多数ご参加賜りますようご案内申し上げます。 

 

【講演内容】中国における贈収賄のリスク

呉 明憲 株式会社TNC ソリューションズ代表取締役/拓知管理諮詢(上海)有限公司総経理  

・近年発覚した贈収賄事件の代表的事例紹介

・贈収賄に伴うリスク及び処罰

・贈収賄を未然に防ぐための取組

加藤康夫 深圳市和商瞭望広告有限公司董事/華南(香港)日商企業信息資訊有限公司董事

・日系企業における贈収賄の具体事例の紹介

 

【パネルディスカッション】不正を行う従業員の傾向

 

【パネラー】橋本 哲哉 派蘇尼企業管理諮詢(上海)有限公司総経理

      及び講師の2名

 

【日   時】2013年11月21日(木曜日)

      受付 8:40~9:00

      講義 9:00~12:00

 

【主  催】株式会社TNC ソリューションズ/拓知管理諮詢(上海)有限公司 

      深圳市和商瞭望広告有限公司/華南(香港)日商企業信息資訊有限公司

 

【後  援】日中経済貿易センター

 

【会   場】新宿アイランドタワー20階セミナールーム

http://www.shinjuku-i-land.com/access.html

 

【参加費】 事前入金10,000円/当日支払12,000円

(主催者の顧問先または会員制ビジネス誌「HKM-日商投資」の有料購読者については事前入

金5,000円/当日支払6,000円) 

お申込みいただいた後に振込先情報をご連絡申し上げます

 

【定  員】 100名

 

【お申込み】下記リンク先よりダウンロードした参加申込書にご記入の上、開催2日前までにEメールにてお申込み下さい。定員に到達次第締め切りとさせていただきます。なお、主催者及びパネラー所属企業と同業を営む企業からのご出席はご遠慮願います。

セミナー参加申込書

 

【お問合せ】拓知管理諮詢(上海)有限公司 Ms陳(イライザ)

eliza@tnc-cn.com TEL :(中国)021-6270-0022 (日本)050-5806-2111 

 

講師プロフィール

呉 明憲 氏

株式会社TNCソリューションズ 代表取締役 / 拓知管理諮詢(上海)有限公司 総経理

神戸大学経営学部卒業。住友銀行(現三井住友銀行)入行後大阪及び上海勤務、日本総合研究所の上海駐在を経て2011年10月よりTNCソリューションズ代表。進出に当たっての事前調査、進出支援、進出後の経営支援を軸に中国を中心とした中華圏ビジネスに関するコンサルティングを行っている。

 

加藤 康夫

深圳市和商瞭望広告有限公司 董事/南(香港)日商企業信息資訊有限公 董事

会員制ビジネス誌「HKM-日商投資」編集長。東京外国語大学除籍後、編集プロダクション、週刊現代(講談社)契約記者を経て、2001年より華南NET(日商メディア)代表。9,000社以上の在中国、香港、台湾の日本企業トップ層へ、中華圏マーケット情報を発信中。

 

橋本 哲哉

派蘇尼企業管理諮詢(上海)有限公司

立命館大学経済学部卒業。2000年から上海に滞在し、10年間ヘッドハンティング、人材紹介、人事コンサルティング業にて従事。パソナ、中智(中国国営)などを経て、現職に至る。外国人では3名しか持っていない、人材仲介員資格を保持。

中国企業、アフリカへ行く

 中国企業がアフリカへ進出している話は聞かれたことがあるかと思います。ポジティブな報道もあればネガティブな報道もあります。徐々に中国経済圏に取り込まれていくのだとすれば日本もうかうかしていられないでしょう。これからはアフリカだという日本人にもお会いしたことがありますが、確かにアフリカは今後かなり刺激的な進出地と言えるかもしれません。ここでは中国最大の婦人靴メーカー華堅集団の事例を紹介します。

 

 同社は広東省東莞で婦人靴を生産しているのですが、10数年前からコストが次第に上昇するだろうと意識し、生産分布の調整を開始し、一部の注文を江西省に移転すると同時に、ベトナムにも工場を設けました。ベトナム工場は数年後に閉鎖することになってしまいましたが、ベトナムは製靴業の環境は珠江デルタほど整備されておらず、多くの原材料も広東省から調達しなければならず、生産効率もあまり高くなく、総合コストも珠江デルタに劣るのがその要因でありました。

 

 ベトナムはこのような結果になりましたが、2011年に華堅集団は中国製靴業で初めてアフリカに投資し、2012年1月より生産を開始しました。進出国はエチオピアで、同国は良質かつ廉価な原材料を調達することができ、労働力も十分にあり、そしてその労働力のコストもかなり安いという環境にありました。中国商務部の発表によるとエチオピアの製靴工場ワーカーの月間給与は262.8元(約4200円)とかなり優位性があります。珠江デルタのワーカーの給与は以前紹介したことがありますが3000元前後であり、ベトナムはこれの半分、そしてアフリカはこれよりも大きく下回ります。これにより、同社のエチオピアにおけるコスト構成は、原材料コスト約50%、従業員コスト約30%で、工場建物及びその他の支出約という構成になっています。

 

 アジア靴業協会と言うところがあるのですが、そこの発表によりますと、労働力コストの影響もあり、珠江デルタ地区の製靴企業の半分は中国国内の中西部に移転し、3分の1が東南アジアに移転しています。しかしながら、東南アジアのコストも上昇していくことを考えると、東南アジアを飛び越えてアフリカに進出する方がいいという考え方をする人もいます。また、世界的に見ても、労働集約型産業の移転先としてアフリカは最後の場所ともいえ、アフリカには若年労働者も多くいることから、コスト競争力もあります。しかし、あまりに東南アジアやアフリカに移転してしまっても、中国国内の就業に影響してしまうという問題があります。そのため、中国としても労働集約型産業を完全に切り捨てるようなことはせず、どんどん中西部に移転するようにすべきという意見もあるようです。今時日本の労働集約型産業が中国の工場で生産するという時代でもないと思いますが、かといってアフリカとなるとハードルが高そうですし、そうなると中国と東南アジアのどちらか、今の趨勢だと東南アジアなのでしょう。中国の中西部地区に労働集約型産業を集めたとして、おそらく多くの人は今の中国を見ると急激にコストが上昇することを恐れるのではないかなあと思います。自分が労働集約型産業の経営者だったら、やっぱり中国はないかな。

中国の映画館ビジネス

 今日は中国の映画ビジネスについて見ていきましょう。中国の映画チケット収入は2008年には70億元余りだったのが、2012年には170億元にまで成長しています。そして今年はあと2か月ほど残していますが、すでに昨年の数字を超えています。結構儲かるビジネスのようで、一部の二線都市であれば2年で回収できてしまうようです。これを頭に入れながらグラるを見てみましょう。下左のグラフの黄色い円の中の数字は映画館数、水色の枠の上にある数字はスクリーン数です。スクリーン数が映画館数より多いのはいわゆるシネコン(シネマコンプレックス、複合映画館。同一施設内に複数のスクリーンが用意されている映画館)が多いからだと思います。しかし増えてますねえ。中国の場合は動画サイトで映画もダダ漏れですし、相変わらず海賊版DVDもたくさん売られているので、映画館に行こうというニーズはあまりないのではないかという気もするのですが、やはり大スクリーンで見たいという気持ちがあるのでしょう。下右のグラフは万達院線という映画館のチケット売上とその伸び率です。増えてますねえ。

 

 さて、今度は下の方にある棒グラフのようなところを見てみましょう。これは都市別ランキングですね。左から都市名、チケット売上(億元)、スクリーン数、10万人当たりのスクリーン数、年間一人当たり映画鑑賞数、平均の入り具合、平均チケット料、映画館一日当たり平均収益です。北京、上海、広州、深圳と並んでいますが、やはりチケット売上は大都市ほど大きいですねえ。この4都市はチケット料もほとんど同じですね。上位4都市に靴のが成都、武漢、重慶、いわゆる中国内陸市場を語るときに必ず出てくる都市ですね。面白いなあと思ったのは年間平均映画鑑賞数で、重慶の人って映画観ないんだなあと感じました。スクリーン数も少ないし。きっと何か理由があるのでしょう。

 

 時々エンタメ関係のお話が来たりしますが、「元気があれば何でもできる!」ではなく、「豊かになれば娯楽も楽しめる」ということで、エンタメ分野は自分の中ではちょっと気になってる分野です。ここでは数字で紹介しており、まあ伸びてますということを紹介しているわけですが、個人的には中国のエンタメはまだレベルがそれほど高くないなあと思ってます。映画、ドラマ、時々見ますし、中には面白いものもありますが、なんだかなあというレベルの者も多いです。あと、歌手なんかは本当にまだまだだなあと思います。中華圏のスターは中国が生み出したスターではなく、ほとんどが香港、台湾、シンガポールです。俳優は有名どころがいますが、歌手はいないなあ。もちろん有名な歌手はいるにはいるのですが、香港、台湾、シンガポール初の人たちと比べるとかが薄い。このあたり狙い目なんじゃないかなあ。

中国でみられる「半加盟半直営」というフランチャイズビジネスモデル

 中国の家庭用紡績品で宝縵家紡(Bermo)というブランドの店舗があります。

 

 

 

 中国のフランチャイズ展開を研究したことのある人であれば、フランチャイジーの管理を含め中国のフランチャイズ展開がいかに難しいかをよく知っておられるかと思いますが、このBermoというブランドはちょっと変わった方法を採用しています。ブランド本体がフランチャイジー(以下、加盟店)に対して店長を派遣するというものです。中国では「半加盟半直営」スタイルと呼ばれており、この業界では初めての試みとのことです。加盟店は店長を派遣してもらうコストを負担する必要がありますが、このスタイルにより加盟店の質は改善されます。

 

 繰り返しになりますが、Bermoで行っているのは、本社が業務に熟練した店長や従業員を加盟店に一定期間送り込み、加盟店に一通りのことを伝授し、加盟店が独り立ちできるように育成していくというものです。ある家庭用紡績品ブランドでは100店舗あるとすると、ブランド本体から30人以上がそのケアのために用意され、1店舗に対して1人がケアする体制を取るところまであるそうです。しかし、この半加盟半直営モデルの場合、ケアする要員を店長に充当するため、ブランド側と加盟店側との間で行われる多くの中間フローが簡素化され、また本部が発する政策を加盟店が執行するスピードも向上するという効果があります。

 

 店長のコストは加盟店が負担するため、それを補うだけの業績を上げていかないと加盟店側から不満の声が上がるのは目に見えています。もし加盟店の経営状況が今一つの場合、一般的なフランチャイズだと、「加盟店もがんばってもらわないと」という逃げ口上も聞くのでしょうが、そもそも店長はブランド側から派遣されてきているので、店舗の経営状況がよくないと、「あんたが派遣してきた店長全然ダメじゃん」と切り返されることは間違いありません。そう考えると、結構リスクをかぶるビジネスモデルであるといえます。でもこれくらいしないと加盟店もちゃんとやってくれないという不安もあるのでしょう。

 

 中国のフランチャイズはトラブルが少なくありません。トラブルの多くは加盟店側がフランチャイズと言うものをあまり理解していないこと、あるいはそもそもフランチャイズと言うビジネスモデルで定められていることを守ろうという意識が薄いこと、要するにフランチャイズと言うビジネスモデルが成熟していないということかと思います。このため、日系企業だと大々的にフランチャイズ展開をしている業態としてはコンビニくらいで、それ以外でフランチャイズ展開を行っているところは決して多くありません。しかし、フランチャイズ展示会等を視察すると韓国系や台湾系が結構出展しており、フランチャイズに対して前向きであることがうかがえます。私が以前接した台湾企業ではフランチャイズはトラベルが多いのであまりやりたくないという人もいましたが、それでも相対的に日系企業はフランチャイズに対してネガティブな見方をしている印象があります。仕組みを作り上げるのが大変という問題がありますが、特に多店舗展開をしようというのであればもっと積極的にフランチャイズを真剣に検討してみてもいいのではないかと思います。よほどの体力がない限り直営店舗だけで多店舗展開なんてできるはずがないですし。中国という場所でフランチャイズ本部をどのように築き上げるか、加盟店をどのように増やしていくか(これを専門にやっている会社もあります)、もっともっと前向きに考えてもいい分野なのではないかなあと思います。そのためには非中国系企業がどのようにフランチャイズビジネスをオペレーションしているか、まずはそのあたりから研究していく必要があるのではないかと思います。