国慶節期間中に中国不動産市場が大盛況~持続か一過性で終わるのか~

国慶節期間中、中国の主要都市である北京、上海、広州、深圳の不動産市場が活況を迎えました。これらの都市では、新築住宅の取引量が前年同期比で大幅に増加し、市場全体が活気づいています。

目次

北京・広州・深圳・上海の新築住宅予約件数が急増

北京では、新築住宅の予約件数が前年同期比で倍増し、中古住宅の取引量も2倍に達しました。広州では、80%以上の新築住宅プロジェクトで訪問者数と取引量が顕著に増加し、ある地域では最初の3日間で日次取引量が500%以上増加しました。深圳では、新築住宅の取引量が前年同期比で10倍に急増し、上海も国慶節の最初の6日間で前年同期の2倍の新築住宅取引面積を記録しました。

大都市以外ででも盛り上がる高額不動産購入

これらの都市以外でも盛り上がりを見せた都市があり、例えば株式市場の好調を受けて成都で住宅を購入した人や、この盛り上がりの中で迅速に購入を決定した人々がいます。また、重慶では7人の姉妹がお金を集めて高額な不動産を購入したような話もあります。

なぜこんなに不動産業界が盛り上がっているのか?

この盛り上がりの背景には、政府が打ち出した頭金比率の引き下げや貸出金利の引き下げといった一連の不動産市場新政策があるのは言うまでもなく、購入者の信頼感や安心感を大きく向上させたといえるでしょう。また、同じタイミングで株式市場も大きく戻したことが気持ちの上でも前向きになることを促したのは間違いないでしょう。特に四大一線都市では取引が活発化しました。

中国の不動産市場新政策を掘り下げる

四大都市一つ一つについて見ていきましょう。

1.北京:行列する見学者
人気物件には見学者が順番待ちの行列。それもこれも新政策にあやかろうという動きであり、そもそもの購買力の厚みが爆発したということなのでしょう。頭金比率の引き下げや社会保険年数の短縮、貸出金利の引き下げといったわかりやすい政策がもたらした動きであるのは言うまでもないでしょう。

2.上海:購入者の信頼感が戻った
上海は一線都市の中で最も早く新政策を打ち出した都市であります。9月29日に発表された「滬七条」は、住宅ローン政策や税政策の一連の調整を含み、国慶節期間の市場熱を高める基盤となりました。非上海籍の住民の購入資格が大幅に緩和され、取引コストも低減されています。これにより購入者の市場に対する信頼感が回復し、訪問者数や取引量の増加に寄与したといわれています。

3.深圳:外国人をも引きつける不動産市場の活況
深圳の不動産市場も国慶節期間中に活況を迎えました。特に新築住宅の取引量は大幅に増加し、9月30日から10月6日までの期間で前年比979%の増加を記録しました。新政策により、社会保険の支払い年数の要件が撤廃されたこともあり、多くの新規購入者が市場に参入しました。
深圳の不動産市場には、外地からの購入者や外国人も含め、多くの新規参入者が見られました。特に宝安区や龍華区では、外地客の成約比率が20%に達しました。全体として、新築住宅の見学から成約への転換率が9月の2%から12%に向上しました。
好調な新築住宅プロジェクトも少なくなく、竜崗区や光明区などの物件が人気を集めました。一部の物件では販売が完了したように、今までの市場の静寂からは想像もつかない状況となっています。

4.広州:政策緩和で不動産市場が活況に
広州では、一線都市の中で最も徹底的に政策が緩和された都市です。9月29日、広州市政府は14年間にわたる購入制限を解除し、広州市全域での住宅購入が自由化されました。これにより、多くの市民が住宅購入の機会を得ることができました。経済的な圧力や高値掴みのリスクを懸念していた人たちも、新政策の発表を受け、住宅購入を決断した人が少なくありません。国慶節期間中、見学者数が日平均200組を超え、深夜12時まで営業する状況が見られて物件もあります。
また、広州中原地産によると、国慶節期間中に80%以上の新築住宅プロジェクトで訪問者数と取引量が顕著に増加し、多くの物件が売り切れ、販促活動も活発化したとのこと。広州市の新築住宅市場では、特に中小型住宅の需要が高まりを見せました。

全国的に政策緩和が株式市場の好調が影響

上記は四大一線都市についてですが、全国的に見ても、政策の緩和や株式市場の好調が住宅市場にポジティブな影響を与えています。例えば、成都では株式市場の利益を元手に住宅を購入する人が増え、重慶では7人の姉妹が共同で高級住宅を購入するなど、いろんな話が聞こえてきます。

新政策により購買層の信頼を回復したことで取り戻した不動産購入

全体として、四大一線都市は政府の新政策に迅速に対応し、購買者の信頼感を回復させたことで、国慶節期間中の不動産市場の取引が活発化したといえます。今まで中国の不動産市場は崩れては何らかの政策を出して盛り返すという動きを繰り返してきました。今回も過去の動き時と同じく政策を出すことで市場に盛り上がりを与える呼応化を出しまし型、中国不動産市場が今回もまたこのまま盛り返すのか、はたまたこれは単なる一過性の動きですぐに下落基調に戻ってしまうのか。なにぶん景気についてよくない話ばかり聞こえていましたので、これを払拭するだけのパワーにつなげられるのかに注目したいところです。不安要素としては、ここに紹介した四大一線都市は景気のいい話ばかりですが、不動産市場は特に地方都市で痛んでおり、地方都市における不動産市場がどこまで盛り上がるかは気になるところです。

重点都市一部プロジェクトについての取りまとめ

重点都市の一部プロジェクトについて取りまとめた表がありましたので参考までにご紹介いたします。

2024年国慶節連休中の重点都市の市場パフォーマンス

都市平均訪問数平均購入申込数平均転換率価格優遇
北京297207%2-7%引き
上海403277%3-5%引き
広州830607%2%引き
深圳833688%3-15%引き
成都487409%2-12%引き
杭州5396615%2-20%引き
重慶3534114%2-25%引き/特価
西安664356%1-2%引き
武漢573368%特価
蘇州180179%5-21%引き
出所:中指データCREIS(重点都市の一部プロジェクトに対する調査研究状況) 作成:TNCリサーチ&コンサルティング

 よく見るとなんだかんだで割引してるのですね。割引率の大きいのは20%前後に達していますが、だいぶ長いこと寝かせていた物件なのでしょう。しかし個人的に驚いたのは平均転換率、つまり見に来た人のうち購入申し込みした人の比率ですが、小さいところで7%、大きいところで15%にも達します。ざっと10人が見に来ればそのうちの一人くらいが購入申し込みするということですね。

株式市場と不動産市場の盛り上がりの関係性

話は戻りまして、株式市場の活性化も今回の不動産市場の盛り上がりの動きにつながったといえます。なにせ国慶節前から毎日のように株価が上がりました。しかし株式も上がり下がりを繰り返すのが常で、さすがにずっと上昇し続けるわけではありません。実際これを執筆している時点では前日までに上げ相場がウソのように下がっています(10/9午前引け上海市場▲5.3%、深圳市場▲6.19%、創業市場▲7.2%)。果たして四大都市で見られた不動産市場の盛り上がりがどの程度地方都市にも広がり、中国全土で不動産市場が活性化するのでしょうか。要するのこの動きが持続するのか、一過性で終わるのか。気になるところでありますね。

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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