中国の不動産バブル崩壊を日本の経験と比較して分析

中国の不動産バブル崩壊と騒がれてから1-2年は経つでしょうか。

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日本と中国の不動産バブル崩壊の違い

かつての日本の不動産バブル崩壊と中国のそれとの違いは、日本の場合、全国的に不動産相場が下落したのに対して、中国の場合は都市部も相場が下落しているわけではないですが、全国的に崩壊しているというものではなく、地方の相場が崩壊レベルに下落しているという違いがあるというように考えています。金融を比べるとわかりやすいかもしれませんが、不動産バブル崩壊時の日本は、破綻した銀行が大都市から地方まで広範にわたっていたのに対し、今のところ中国で破綻している銀行は地方に限定されているといっていいでしょう。ここに大きな違いがあります。

つまり、中国の不動産相場は状況がよくないとはいえ、都市部はまだ崩壊というほどのレベルではなく、地方都市の状況がやばいということです。近所の上海の不動産仲介業者に聞いても売り手は値段を強気にできないとはいえ、めちゃくちゃ売れていないわけではないという話も聞いてました。

上海の街で見かけた物件価格

ところが、最近知人を連れて魯迅公園近くを散策していた時のこと。甜愛街というカップル向けの通りがあり、壁という壁に愛する相手、恋する相手に対するメッセージが書かれているようなところです。そして、建物は風情のある建物が多く、こんな感じの建物が見られます。

この写真の通りに入る角に不動産屋があり、興味本位で物件価格を見てみました。それがこれです。

左の物件はまさに先ほどの写真のような感じの建物、いわゆる雰囲気のある建物です。右の物件はいわゆるマンションです。そして、この張り紙をよく見ると金額が消されては書き直されています。

物件価格の変動とその影響

場所価格変遷当初比割引率
山阴路208弄510万元 ⇒ 450万元 ⇒ 390万元▲23.5%
甜爱路128弄430万元 ⇒ 400万元 ⇒ 300万元▲30.2%

なんと2~3割もマイナスとなっています。場所的に売りにくい場所なのか、はたまた売主が売り急いでいるのか。これはあくまでこのエリアでの価格ですので、上海市全体で見てみることにします。

上海市の不動産市場の動向

2020年1月から2025年1月までの5年間の推移です。中古物件がブルー、新築物件が緑です。ここでは中古物件を見ていきます。不動産が下がっているといわれてはいますが、2025年1月の価格は2020年1月及び2021年1月よりは上回っています。但し、近年下落しているのは間違いなく、2024年1月が前年比▲1.1%、2025年1月が前年比▲4.5%となっています。

日本のバブル崩壊時と近づいている不動産の下落

日本のバブル経済が崩壊した1990年代初頭に、住宅価格は大幅に下落し、1991年から1992年にかけて、全国平均で住宅価格が約30%から40%下落、東京23区の一部の地域では最大で50%以上の下落、大阪市中心部で40%以上下落が見られたと言われています。比較する上で都市等級から見て上海は東京や次点の大阪と比べるのが妥当だと思います。張り紙の物件の下落率だけ見ると、どれだけの期間でこれだけ下がっているかわかりませんが、下落率だけ見ると日本のバブル崩壊時と結構近づいているように見えます。今のところ下げ止まったかといわれると、相も変わらず前月比上がっている都市もあれば下がっている都市もある状況。ちなみに上海の1月末時点は前月比で+1.86%。春節を超えて少し落ち着いた3月末あたりでどのくらいになっているか、そこで改めて評価する必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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