中国では、借金や給与未払いを理由に、外国人でも出国を止められるケースがあります。様々な事例を紹介していきます。
借金未返済で出国禁止になった日本人のお話

とある日本人の話。中国人からお金を借り約定通りに返済しなかった。元利合わせて19万元(約380万円)。貸し手の中国人は裁判に訴え、返済を受けていないので当然返済しなければならないと裁決され、しかしながらそれでもなお返済は行われなかった。そのため、貸し手は強制執行の申請を行ったのである。
中国では中国の身分証はすべてに紐づけてされており、新幹線(高鉄)や国内線及び国際線の飛行機になる時なども身分証の提示が必要になります。大きな借金があったりすると新幹線や飛行機に乗れないという事をよく聞きます。
しかし今回は被執行者は外国人であることからもちろん中国の身分証はなく紐付けもされておらず、裁判官は上海での住所や電話などの連絡先をすぐに把握することができず、また被執行者名義の執行可能な財産もなく、執行申請者の中国人も有効な手がかりを提供することができなかった。いったん被執行者が出国してしまうとそのあと追いかけるのは難しく、せっかくの強制執行も実現できないため、執行裁判官は直ちにその被執行人に対して出国制限の強制措置を講じたのである。
裁判官は当該被執行人のパスポートとビザ情報を出入国審査に提供したが、なんとその被執行人は出国制限の強制措置を逃れるため、パスポートを紛失したとして新しいパスポートを申請し、パスポート番号を変更していたのである。こうなるともうわからない。同姓同名の人なんてそれほど珍しいわけでもない。
しかし裁判官と出入国審査との間で情報を共有し、その結果被執行人を空港で取り押さえ。その場で本人であることを確認することができたのである。被執行人は借金を返していないことを認め、3日以内に返済することに同意。しかし、3日たっても返済はされず、被執行人は返済するお金がないと言う。ところがそれから数日後、被執行人の知人から裁判官に電話があり、代わりに返済を行うとの申し出があった。そして実際に返済が行われ、これにより出国禁止措置が解除され、被執行人は日本に帰国することができたのである。
給与未払による出国制限された韓国人のお話

次はとある韓国人の話。その韓国人は上海で会社を設立したものの、経営不振のため会社は解散寸前の状況にあった。そして従業員に対する給与も未払の状況にあった。給与未払問題が解決できなかった3人の従業員は労働仲裁を行い、未払給与合計11万元(約220万円)を請求し、それが認定されたのだが、実際に支払われることはなかった。被執行人は電話にも出なくなったので裁判官は被執行人のオフィスに行ったところ、会社はすでに営業しておらず、執行可能な資産もないことが分かった。被執行人は外国人であるため、中国と韓国の住所といった情報を得られず、執行申請者からも有効な手掛かりが得られなかったため、裁判官は被執行人を信用喪失被執行者リストに入れ、出国制限の強制措置を取った。そしてある日、被執行人が韓国へ行こうとしたところ、出国することができなかったのである。これに懲りてか、その後ほどなくして被執行人は未払給与を全額支払い、出国制限措置が解除されたのである。
もうひとつの給与未払による出国制限

これも同じく給与未払による事例。給与未払のため、従業員8人が未払となっている給与総額20万元(約400万円)余りについて、労働紛争仲裁委員会に仲裁を申請した。被申立人は仲裁に積極的に参加せず、且つ期限どおりに仲裁内容に規定された義務を履行しなかった。その後、黄氏ら8人は裁判所に強制執行を申請した。
裁判所は被執行者の財産調査を行ったものの、被執行者の財産がなく、会社の登録地、実際の営業場所ともに営業実態が見られなかった。
8人の従業員はこの結果に慌てふためいた。まさか外資系企業が給与未払なんてすると思わかったと。そして裁判官はこの時に同社の法定代表人が外国人であることに気づき、工商関連資料から被執行者のパスポートのコピーをゲット。そして、すぐに国境管理に対して出国禁止措置を取った。この措置に気付いたのか、その後被執行人が裁判所を訪れ、未払給与の支払いを行い、さらに今後従業員の賃金を滞納しないと表明し、裁判官に対して出国禁止措置の解除を申し出たのである。
外資企業が撤退時に注意すべきポイント

ここ最近撤退話をよく聞きます。日系企業の場合、最後はきっちりとした処理をおこなうのが大半なので、手こずることはあっても従業員に対して払うべきものはしっかりと払って会社を手じまいしていると思います。しかしながら、本当の本当に払うべきものを払う余裕がないケースもなくはないでしょう。私も過去に何度かそういうケースを見たことがあります。ここまで追い詰められたケースになると、それ相応の費用をかけて後処理することもなく、私としても業務にならなかったため、その人たちが最終的にどのように処理したかまでは見届けませんでしたが、おそらくことがさらに大きくなる前に日本に帰られたのではないかとと思います。何事も追いつめられる前に慌ててするのではなく、ある程度余裕を持ったうえで物事を処理すべきですね。
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