訪日客は増加も免税売上減少!インバウンド消費に変化あり

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免税売上は減少中?2025年春以降の変化とは

日本で免税売上が大きく減少しています。日本百貨店協会が発表したデータによりますと、今年3月から前年割れしており、購買客数は前年割れとまでいかないまでも大きく減少しており、免税売上、購買客数のいずれも2025年1月を直近のピークとして下落基調にあります。下表の表は2022年以降の数値ですがコロナ後の爆増はともかく、その後も大きくプラスではありますが、下落基調が続いています。直近で見ますと2025年1月に上向いていこうまた下落してます。

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日本百貨店協会のデータに基づきTNCが作成

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日本百貨店協会のデータに基づきTNCが作成

あれだけ外国人が町中にいるのになぜ?外国人を見慣れ過ぎて、実は訪日客数が減少してきているのか?という疑問から、2024年以降の月次訪日客数前年比の統計を見てみました。

訪日客数は増加、でもモノが売れない理由

これを見ると伸び率にばらつきがあるとはいえ前年割れはしておらず、直近ピークが2025年1月であるのは同じですが、4月はむしろ増えています。

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日本政府観光局(JNTO)のデータに基づきTNCが作成

2025年4月月次で10万人以上訪日しているところに限定してその比率の推移を見てみました。

比率でみると韓国減少、中国増加、台湾微減、香港微増、米国増加、といったところでしょうか。今まで爆買いの代名詞だった中国人の比率が増加しているにもかかわらず、免税売り上げが落ちている。どういうことでしょうか。

日本政府観光局(JNTO)のデータに基づきTNCが作成

免税の売上が落ちてる理由はなんなのか?

考えられる原因としてはおおよそ次のものが挙げられます。

為替要因

 今でも十分に円安とはいえ、一時と比べると円高になっています。海外旅行には来るけど、買い物は従来よりは手控えたということでしょうか。

消費内容に変化

日本にインバウンドニーズが高まってきているのは間違いないのですが、リピーターも増えているでしょうから、単純に買い物するのではなく、違うところに消費の重点を置くようになってきていると考えられます。単純に宿泊費も上がってきていたり、単なる買い物以外のコト消費(飲食やその体験)に消費がシフトしているということも考えられそうです。消費金額自体が減少しているわけではないので、トランプショックが直接的に消費金額自体に影響しているようには見えないですね。海外旅行にまで来る人にとってはあまり関係ないのかもしれません。

インバウンド客の日本での消費の変化

内訳を見てみます。

特に中国は買い物代の絶対額が高いものの、その構成比は減少しており、宿泊費や体験型支出へのシフトが進んでいます。

台湾・韓国は短期滞在が多いため、買い物代の絶対額も控えめですが、飲食・娯楽費の比率が上昇しています。

「財布のひもは緩んでいるが、使い道が変わってきている」といえます。

もう少しさかのぼって2017年から見ていきましょう(下表)。私がワイドショーで中国人観光客の爆買いについてコメントしたのが2016年なので約10年前、その後も下表にあるように前年比100%越えが続きつつも、その伸び率が少し下向きに代わっていくようになったのが2018年以降。コロナ禍の特殊期間は別として2018年くらいからモノ消費からコト消費へのシフトが始まりつつあったのではないかと思います。コロナ禍が明けた後はモノ消費も大きな伸びを示しましたが、傾向としては伸び率は小さくなり、極めつけが冒頭に紹介した今年の3・4月の百貨店の免税売上高(いわゆるインバウンド消費)が急激に落ち込んでしまったというものです。

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日本百貨店協会のデータに基づきTNCが作成

大手百貨店3社が2日発表した5月の既存店売上高(速報)によりますとと、

  • 高島屋 41・7%減
  • 大丸松坂屋百貨店 40・1%減
  • 三越伊勢丹ホールディングス(HD) 33・0%減

となっています。高島屋の広報担当者によりますと、アジア圏の訪日客を中心に「需要が一巡した感はある」との見方を示しています。ということは、この流れは当面続きそうです。

中国に関しては景気がよくないといわれる中でも訪日客数は増えており、しかし物を買わない、モノとして残らないもの(宿泊、飲食、体験)へと消費がシフトしています。消費という観点から見て、物を買いに日本にやってくるという時代は過ぎたと考えるべきで、モノとして残らないもの、いわゆるコト消費、ここを狙ったビジネスはすでにありますが、これがさらに伸びていきそうですね。

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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