日系メーカーはどう切り込む?小米EVの部品サプライチェーン

ここ最近、EV(電気自動車)市場は中国が世界をリードしているといわれています。確かに街を歩けばEVだらけ、駐車場を見てもEVだらけ。充電スタンドも充実しているので十分に選択肢になります。こういう環境にあることから、自動車メーカー以外の企業もこの領域に参入するようになり、スマートフォンや家電製品で知られる小米(シャオミー)もEV市場へ本格的に進出しています。

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小米EV「YU7」が大ヒット

2025年に登場した第2弾モデル「小米YU7」は爆発的な人気を誇り、販売価格は25.35万元〜。この値段で発売直後わずか3分で20万台、1時間で28.9万台を売り上げるなど、過去の自動車販売記録を塗り替えています。

では、この小米EVにはどのようなサプライヤーが、どんな部品を供給しているのでしょうか?見ていきましょう。

動力・電池関連

EVといえばバッテリー。EVの心臓部ともいえますが、これを支えるのは、CATLを筆頭とする中国トップバッテリー企業です。エネルギー密度・耐熱設計・マルチ構成が高度に融合しているといわれています。

部品名サプライヤー
モーター汇川聯合动力
三元系リチウムイオン電池/高密度電池パック寧徳時代(CATL)
リン酸鉄リチウム電池(セル・モジュール)菲迪電池
電池パック底部保護板/筐体/固定具豪斯特、拓普集団、奥達科
電池放熱・熱管理システム奥特佳(002239.SZ)、先禾新材料
電池パック高圧配電箱/モーター制御放熱部品振邦智能(003028.SZ)

車載センサー・制御系

熱・電圧・構造の三層制御により、安全性と効率性を裏側から支えるカテゴリになります。ハーネス・センサ・コネクタの選定は、高圧環境下でも安定した通信・制御が求められるEV特有の技術的な要請によるもので、現場組立や保守にも直結する“実装性”が重視されています。

部品名サプライヤー
空調センサー(圧力・温度)森薩塔科技(Sensata)
ロータリー位置センサー華旋伝感、赢双電機
高圧ハーネス・高圧コネクタ沪光股份(605333.SH)
電動駆動インターフェース用コネクタMOLEX(モレックス)
熱管理用低圧コネクタENNOVI 易納緯

スマートキャビン・運転支援

EVは移動ツールとしてではなく車内空間も大事といいます。ここは小米らしいデジタルUX設計が顕著に現れる分野といえるでしょう。ドライバー認知、表示、操作系においては「視・聴・認識・レスポンス」の統合が進んでおり、センターコンソールからLiDAR統合まで一貫して“人中心設計”が通底しています。計算能力700TOPS、NVIDIAチップとの融合は、ソフトウェア定義車(SDV)時代の象徴ともいえるでしょう。

部品名サプライヤー
表示スクリーン(センター・PHUD)TCL 華星光電、華陽集団
液晶メーター京東方A(000725.SZ)
オーディオシステムAAC瑞声科技、杜比実験室
LiDAR(レーザー距離センサー)禾賽科技、速騰創(02498.HK)
ミリ波レーダー/360°カメラ/DMS森思泰克、欧菲智能車聯
制御チップ(Thor-U/Orin-X)NVIDIA(NVDA.US)
車載SoC「玄戒」小米汽車科技

電子電器・車載装置

ここは車両制御の「神経回路」を構成する領域になります。ドメイン制御、音響処理、SoC統合など、複雑なエレクトロニクスが多数絡み合う中、部品ごとの実装分離とモジュール設計が巧みに調整されているのが特徴といえます。OTA・UX拡張やセキュリティ機能の発展余地が大きいカテゴリでもあります。

部品名サプライヤー
マイクユニット/音響測定機器雷石天地、CRYSOUND兆華電子
MLCC/コンデンサ類微容科技、上海鷹峰電子
ドメイン制御モジュール德賽賽西威(002920.SZ)
UWBデジタルキーNXP(恩智浦)
ゾーンコントローラー経緯恒潤(688326.SH)

シャシー・外装/内装部品

素材・構造・意匠の融合カテゴリになります。炭素繊維や調光ガラスなど軽量化と快適性の両立が求められ、EV特有の重量バランスや空力設計への配慮が随所に現れています。海外ブランドもちらほらみられます。

部品名サプライヤー
ガラス福耀玻璃(600660.SH/3606.HK)
フロントフェンダー/炭素繊維パーツ海斯坦普、HRC亨睿碳繊維
シートユニット/骨格延鋒、富維股份(600742.SH)
ドライブシャフト万向錢潮(000559.SZ)
EPS(電動パワーステアリング)耐世特(NEXTEER)
調光ガラス皖華光電
塗料BASF(バスフ)
ヘッドライト/テールランプVALEO(法雷奥)、HASCO VISION

その他部品・補助装置

乗車する人の使い勝手・静音性・美観性・装着効率に直接影響する領域になります。小米は従来家電・モバイルで培ったUIUX思想を、自動車の細部設計にも展開しており、例えばジェスチャー操作対応スクリーンやUXツールなどはその好例といえます。

部品名サプライヤー
サンバイザー安通林(ANTOLIN)
サブフレーム拓普集団(601689.SH)
TPMS/エアタンク保隆科技(603197.SH)
フレキシブル基板弘信電子(300657.SZ)
スクリーンジェスチャー対応龍旗科技(603341.SH)
UXツールProtoPie

今後の小米EV展開とグローバル連携の動向

ざっと見ると部品の90%以上を中国国内サプライヤーが供給しており、言ってみれば小米EVは

「地産地消×技術融合」

を象徴するプロダクトともいえます。これが功を奏してか、

  • コスト効率
  • 納期安定
  • 政策連動

という利点を生み出しています。とはいえ、NVIDIAやBASF、Magnaなどいった海外サプライヤーとも選択的に連携し、グローバル競争力を備えた設計を目指したものとも言えます。

単なる部品調達ではなく、“中国製造の強みを活かしながら、必要な技術は外から取り込む”

という思想が薄けてうかがえるようです。日本は自動車産業が発達していることから、その周辺産業も多く存在しています。これらサプライヤーの銘柄を見て、「あの会社のを使っているんだったらうちの部品使ってくれてもいいんじゃね?」と思ったメーカーの人もいるのではないでしょうか?どこまで切り込めるかわかりませんが、小米がまた新たなモデルのEVを販売した際に、その部品のサプライヤーの中に日本企業名が多く含まれるようになっているよう期待したいです!

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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