カルフール中国事業を買収していた蘇寧易購はこのほど、蘇寧国際と仏カルフールの継続的な協議を経て、未払となっていた譲渡代金(16.67%相当)について、一括で2.2億元を支払うことで和解に達したと発表しました。これにより譲渡代金未払問題を終結させると同時に、知的財産権未払いやその他諸問題に関する仏カルフールとの争いが集結することになります。つまり、仏カルフールは蘇寧にカルフール中国事業を譲渡したと同時に中国事業停止し、買収した側の蘇寧も今後カルフールブランドを使うことができないということは、カルフール中国事業が完全に消滅するということであります。以下はこれに関する蘇寧易購集団が発表した公告です。

2019年6月22日、蘇寧易購集団股份有限公司(以下「会社」)の全額出資子会社であるSuning International Group Co., Limited(以下「蘇寧国際」)は、Carrefour Nederland B.V.(以下「譲渡者」または「CNBV」)およびCarrefour S.A.(以下「カルフールグループ」)と《株式購入契約》を締結した。
本契約において、蘇寧国際はCNBVからCarrefour China Holdings N.V.(以下「カルフール中国」)の株式80%を、現金48億元人民元相当のユーロで買収することが約定されている。
また、CNBVが買収日から満2年後の90日以内に、保有する残りの20%のカルフール中国株式を契約で定められた固定価格で蘇寧国際に譲渡することを選択した場合、蘇寧国際はそれを無条件で購入する義務を負う。
さらに、CNBVの売却オプションの期限満了後の90日以内に、蘇寧国際が契約で定められた固定価格に基づきカルフール中国の残り20%の株式を買収することを選択した場合、CNBVはそれを無条件で売却する義務を負う。
蘇寧国際がCNBVの上記売却オプション行使時に、CNBVが保有するカルフール中国株式の全てを契約に基づき買収する義務、特にその購入代金の支払い義務を履行するため、会社の第六期取締役会第49回会議において《子会社への保証提供に関する議案》が審議・承認され、会社は蘇寧国際がCNBVの上記売却オプション行使時に契約に基づく購入義務を履行するために、人民元12億元の履行保証を提供することに同意した。 2019年9月26日、蘇寧国際は買収代金の80%を支払い終え、譲渡者との《株式購入契約》に基づき、カルフール中国株式の80%の受渡手続きを完了した。(以上の具体的な内容については、会社の公告番号2019-060、2019-097、2019-099を参照)
カルフール中国撤退の全経緯

カルフールは中国本土に最も早く進出した外資系スーパーマーケット企業であり、最盛期には中国国内に321店舗を展開し、売上高は498億元に達していました。その後2019年6月に蘇寧易購が子会社の蘇寧国際を通じて、カルフール中国の株式80%を48億元で買収し、残り20%についても2年後に固定価格で無条件に買収することを約定しました。蘇寧が外資ブランドを買収した、と一見聞こえがよいものの現実はなかなか厳しいものでありました。買収した時期が2019年6月、そして2020年初頭からはコロナ禍、結果論ですが、タイミングも運も悪かったのでしょう。その後2020年には▲33.37億元、2021年には28.32億元、2022年には▲12.54億元、そして·コロナ禍が明けた2023年が▲5.46億元の赤字を計上。赤字幅が年々減少しているとはいえ、この4年だけで約80億元もの損失を計上し、蘇寧易購が買収してから2023年末までの累計赤字は90.68億元に達しました。蘇寧易購の持株比率80%として、蘇寧が負担した損失額は72.54億元となり、初期投資が全て失われたばかりか、さらに24億元以上の追加損失が発生したことになります。
蘇寧易購の業績推移

一方、蘇寧易購自身も近年は財務状況が悪化しています。2020年以降の業績は以下のような推移です。
年度 | 売上高(億元) | 備考 |
---|---|---|
2020年 | 2,522.96 | 家電・3C販売が主力。初の通年赤字(純損失約42億元) |
2021年 | 1,389 | 売上急減。純損失▲432.65億元 |
2022年 | 926 | 不採算事業整理。純損失▲162.22億元 |
2023年 | 822 | 家樂福中国の業績悪化が影響。純損失▲40.89億元 |
2024年 | 567.91 | 事業集中・資産売却により黒字化(純利益6.11億元) |
2020年から2024年にかけて売上高は4分の1以下に減少し、5年間の累計純損失は670億元を超えています。売上高が大きく減少した要因としては、単純に売れなくなったのが一つ、もう一つは会計上の要因です。過去において、自営買い取りモデルが中心でしたが、現在は加盟店と各種オンラインプラットフォーム業務の発展に力を入れています。これらの業務の中で、蘇寧の役割はプラットフォームプロバイダーとブランドの提供者のような位置づけであり、商品の所有権は加盟者やサプライヤーに属しています。そのため、その売上高収入は商品全額の金額から、加盟費、ブランド使用料、物流サービス料と販売手数料だけを確認することに変わっています。
現在みられる蘇寧の店舗はほとんどが加盟店であり、自営店舗数は激減しています。加盟店数は1万店舗を超えていますが、自営店舗数の推移を見ますと、2020年が2,647店舗あったのが、2021年には2,163店舗、2022年には1,524店舗、2023年にはわずか52店舗、今では自営店舗はほぼほぼなくなっています。なにかと負担の大きい自営店舗をやめて基本的には加盟店舗のみでやっていく方針に切り替わっています。この動きの中で2020-2023年までは赤字だったのが、2024年にようやく黒字に回復しています。
中国M&Aが失敗する典型要因
結果として、蘇寧によるカルフール中国事業の買収は失敗だったといえます。何かで読んだことがありますが、そもそもМ&Aの成功確率は2分の1くらいで、失敗するケースも少なくなく、本件に関してはその失敗確率2分の1にはまってしまったといえます。買収事業が失敗、そして本業も大不調。まさに踏んだり蹴ったりの結果です。家電小売りとスーパーを融合させることでシナジーを発揮しようとしたということなのでしょうが、完全に裏目に出てしまった事例です。これも結果論ではありますが、仏カルフールは落ち目になる直前に、蘇寧は落ち目に入るちょうどそのころにカルフール中国事業の譲渡が成立したといえます。
カルフール中国の継続的な赤字が蘇寧易購の財務に悪影響を与え、蘇寧自身の資金繰りの問題もカルフールの正常な運営に支障をきたしました。そして、2020年以降、蘇寧の資金流動性の逼迫により、2022年に支払う予定だった残りの株式代金(利息含む)は約定していた満額を支払うことができず、蘇寧国際はいったん2.04億元を支払いましたが、残りの16.67億元は支払えないまま、その後ずっと未払いの状況が続き、2023年11月、仏カルフールと蘇寧易購はついに法廷で争うこととなったのであります。
未払い株式代金を巡る係争と2.2億元和解―知財停止でカルフール中国が消滅

そして今年8月12日に発表されたのが上の公告《債務和解に関する公告》です。これによりますと、蘇寧国際と仏カルフールは協議の結果《和解協定》を締結し、会社(または指定する主体、ただし蘇寧国際を除く)がCarrefour Nederland B.V.に現金2.2億元を支払うことで和解が成立。仏カルフール側は和解金受領後、関連債務を免除し、両者は争議事項について今後一切の法的手続きを行わないこととしました。また、カルフール中国およびカルフールコンサルティング会社は、協定締結日から1ヶ月以内に知的財産の使用を停止することが定められました。この和解により、両者はすべての訴訟・仲裁手続きを取り下げ、両者間の債権債務問題は解消されることになり、カルフール中国および関連会社は「Carrefour」「カルフール」などの知的財産の使用を1ヶ月以内に全面停止、店舗の看板やロゴも順次変更され、「カルフール」は中国国内から完全に姿を消すことになります。元々16.67億元支払わないといけないところ、それが2.2億元で決着がついたのは蘇寧の粘り勝ちともいえるでしょう。逆に仏カルフールからすると、いまの蘇寧の業績から満額からは程遠いもののもらえるうちにもらっておこうという判断があったのかもしれません。
債務免除益の一時効果と蘇寧本業の課題―取引先が注視すべきリスク
蘇寧はこれにより多額の債務免除益が計上され、今期の業績は損益面では大きく改善するでしょうが、はたして本業はどうなっていくでしょうか。2020年から2024年にかけてビジネスモデルの変更があったとはいえ売り上げが4分の1以下にもなってしまい、損益は改善しているとはいえ過去の損失を取り返すほどにはいたっていない現状を見る限り、本業はまだまだ厳しい状況が続くと思われ、特に蘇寧と取引をしているサプライヤーは蘇寧が今後どれだけ巻き返していけるかには留意を要するといえるでしょう。
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