いろんな方とお会いして最近の業況をお伺いすると、新聞やニュースで報道されているように、なかなか思わしくないという声が多く聞こえてきます。ここでどこそこの会社から聞いたというような話を書くわけにもいきませんので、メディアで報道された企業のケースについて紹介します。今回はTOTOです。
2026年上半期決算から見るTOTO中国事業の現状

TOTOが発表した2026年度上半期(2025年4月〜9月)の決算によると、中国大陸での売上は大幅に下落しています。
- 前年同期比で約30%減少し12.76億元
- 営業利益は1.92億元の赤字に転落
なんと売り上げが30%も減っているのです。商品の性質上住宅であれオフィスであれとにかく建物さえ建てられれば市況は好転すると思うのですが、ここで2023年以降の不動産竣工面積の前年比増加率を見てみましょう。

中国不動産不況をかなり影響を受けているTOTO中国事業

この表を見ますと、2023年はコロナ後の勢いがあったのか前年比大きくプラスとなっていますが、2024年に入ってからはそれがマイナスに転じ、プラスになったのは直近の2025年9月のみ、しかもわずかプラス0.4%。これはさすがに市場環境が厳しすぎます。これだけ市場が収縮してしまうと需要が減るに決まっています。
また、こういう景気状況の中だと、特に高価格帯製品の販売が苦戦するでしょうし、消費者の国産ブランドや中価格帯製品へのシフトが加速したことも十分に考えられます。
中国の生産体制の再編に踏み切ったTOTO

こういう状況もあって、TOTOは中国国内の老朽化した工場を閉鎖し、生産体制の再編に踏み切ったのでしょう。北京と上海の2工場を閉鎖し、福建省の既存拠点と新設予定の拠点に生産を集約。これにより、
- 中国での生産能力は約40%削減される見込み
- 工場閉鎖に伴う特別損失は340億円
これは短期的には痛みを伴う決断ですが、長期的には生産効率の向上とコスト削減を目指した構造改革の一環といえます。
販売戦略の見直し——ブランド再構築への挑戦

高価格帯製品が苦戦する中、TOTOは下記3つの強化を進行中です。
- TOTOは中価格帯へのシフトを模索
- オンライン販売やデジタルマーケティングの強化
- 若年層や都市部の新興消費層へのアプローチの強化
中国の消費者も「値段の高いものはいいものだ」という単純な考え方でなくなってきており、つまり従来の「高品質・高価格・高級感」というブランドイメージだけでは通用しない時代に突入しています。そのため、ブランド価値そのものの再定義にも迫られるでしょうし、製品開発にもその視点が必要不可欠になってきています。
「TOTO WILL2030」——再成長への布石

TOTOは2021年4月に発表した「TOTO WILL2030」という長期ビジョンを発表しています。この中で、
- 日本
- 中国大陸
- 米国
- アジア
と区分けしたエリア表記があるように、中国が重点市場であるのは間違いないでしょう。これが発表してから4年半で中国市場の様相も大きく変わってきています。工場閉鎖といった痛みを伴う改革を行いつつ、これにより2026年に生産能力の最適化とコストの低下を実現する見込みとのことですが、市場環境に負う部分が大きいのは言うまでもありません。個人的には不動産不況がここまで長引くとは思いませんでした。TOTOがこの環境をどう乗り越え、再び中国市場で存在感を示すのか。その答えは、2026年以降に現れるでしょう。
