中国の医薬業界では、AI活用がここ数年で大きく進み、実務の中に自然に組み込まれ始めています。 2026年の「医薬钉峰会」では、すでに6割以上の医薬企業と半数以上の公立病院が钉钉(DingTalk)を導入していることが紹介され、業界全体がAI前提の働き方へ移行しつつあることが示されました。

この変化は、単に「便利なツールが増えた」という話ではなく、 医薬企業の仕事の進め方そのものが変わり始めているということです。
日本企業にとっても、この動きは参考になる点が多くあります。 ただし、ここで強調したいのは「日本企業が遅れている」という話ではなく、 日中で仕事の文化や価値観が違うからこそ、AIの取り入れ方にも違いが出ているという点です。
中国IT用語を書き出してみた!

耳慣れない用語がいくつか出ていますので、先にこの記事で登場する用語の簡単な説明をしておきます。
| 用語 | 意味 |
| RPA | 平定型作業を自動化する技術。 |
| PV(薬物警戒) | 副作用情報を収集・評価し、当局へ報告する業務。 |
| AIエージェント | 目的を理解し、判断し、複数の作業を自律的に進めるAI。 |
| Feishu(Lark) | ByteDanceが提供する企業向けコラボレーションプラットフォーム。 |
| DingTalk(钉钉) | アリババが提供する統合業務プラットフォーム。 チャット、会議、勤怠、ワークフロー、ドキュメント、AIアシスタントなどが一体化している。 |
| UI(ユーザーインターフェース) | アプリやシステムを操作するときに目にする画面やボタン、メニューなどのこと。 使いやすさや分かりやすさに直結する部分。 |
中国の医薬企業で起きているAI活用の変化
中国の医薬企業は、AIを「部分的な効率化ツール」としてではなく、 企業全体の仕事を支える“基盤”として活用する方向に進んでいます。
● 情報収集の自動化
MRの訪問記録はAIが自動で構造化し、共有まで完了。 事務作業が大きく減り、現場の負担が軽くなる。
● データ活用の広がり
自然言語で指示するだけで、分析やアプリ作成が可能。 専門知識がなくても、必要な情報にすぐアクセスできる。
● PV業務の自動化
AIエージェントが報告収集から提出までを担当。 担当者は判断が必要な部分に集中できる。
● グローバル協働の効率化
AIが時差調整、同時通訳、多言語UI切替を担い、 海外拠点との連携がスムーズに。
日本企業にとっての意味:違いは“優劣”ではなく“アプローチ”

日本企業には、
- 品質を大切にする文化
- 丁寧で確実な業務運営
- コンプライアンス意識の高さ
といった特徴があります。
一方、中国企業は、
- スピード重視
- 新技術の積極採用
- 全社横断のデジタル基盤構築
といった特徴を持っています。

この違いが、AI活用のスタイルにそのまま表れています。
どちらが良い悪いではなく、 それぞれの文化が違うからこそ、進み方も違うということだといえるでしょう。
日本企業に紙やExcelが残る理由

日本企業では、業務によっては紙やExcelが使われる場面も残っています。 一方で、すでにクラウド化が進み、紙やExcelをほとんど使わない企業も増えています。
紙やExcelが残る背景には、
- 記録の正確性を重視する文化
- 手順の厳格な遵守
- コンプライアンス要件
- バリデーションの負荷 など、医薬業界ならではの理由があります。
つまり、 紙やExcelが残っている=遅れている、という単純な話ではありません。
ただ、AIが業務全体を支える時代になると、 紙やExcelだけではスピードが出しにくい場面も増えてくるため、 少しずつ役割を見直す企業が増えている、という状況です。
部分最適と全体最適:アプローチの違いを理解する

● 日本企業の特徴:部分最適
- 現場の課題を丁寧に拾い上げる
- 小さく改善し、確実に成果を積み上げる
- リスクを最小化しながら進める
これは日本企業の良さそのものです。
● 中国企業の特徴:全体最適
- 企業全体の業務をAIで一気通貫
- データ統合を前提に設計
- スピードを優先し、改善を高速で回す
AI時代は「全体最適」のメリットが大きくなるため、 日本企業も少しずつこの方向へシフトしていくと、 より大きな成果につながりやすくなります。

日本企業がこれから取り組めること

これらは、日本企業の特徴を活かしながら進められる取り組みです。
おわりに:日本企業にはまだまだ伸びしろがある

中国のAI活用は確かにスピードが速いですが、 日本企業には、
- 丁寧な業務設計
- 品質を大切にする姿勢
- コンプライアンスの強さ といった確かな基盤があります。
これらがAIと組み合わされば、 日本企業らしい形で、より働きやすく、より強い組織へと進化していくことができます。今後の動きが楽しみになる、そんな状況といえるでしょう。
