中国自動車市場の「反内巻(過当競争の抑制)」政策をどう読むか

2026年に入り、中国の自動車市場では「反内巻(過当競争の抑制)」が再び大きなテーマになっています。2025年に続き、今年は制度化・常態化の色合いが強まり、政府は“無序な価格戦争”を抑える姿勢を明確にしています。

ただし、政策文書の表現は日本企業には分かりにくい部分も多く、現場の実態と必ずしも一致しているわけではありません。ここでは、政策の狙いと現場の状況を整理し、日本企業が押さえておくべきポイントをまとめてみました。

目次

支払いサイト短縮政策は出たが、効果は限定的

2025年の政策では、完成車メーカーに対して「サプライヤーへの支払いサイト(支払期限)を短縮せよ」という明確な指示が出ました。ただし、現場の実感は次のようなものです。

  • 国有系メーカーは一部改善
  • 民営EVメーカーは資金繰りが厳しく、改善は遅い
  • 中小サプライヤーの負担は依然として重い

つまり、政策は出たものの、業界全体で劇的に改善したとは言い難いというのが実態のようです。

政府は「価格競争抑制」を掲げるが、現場では依然として価格競争が続く

政策文書では「無序な価格戦争を抑制」と強調されていますが、現場感覚では“価格競争はまだまだ続く” というのが正直なところです。理由は明確です。

  • 新興EVメーカーは販売台数を伸ばさないと資金調達が難しい
  • 地方政府は地元メーカーを支援するため、実質的に値下げを容認
  • 政策は「禁止」ではなく「誘導」に近い

つまり、

①政策の方向性=価値競争へ

②現場の実態=依然として価格競争

という“二層構造”が続いています。

ADAS(先進運転支援)をめぐる規制強化

自動ブレーキやレーンキープなどの先進運転支援(ADAS)については、中国では本来“運転支援”にすぎないL2レベルの機能を「自動運転」と表現してしまうケースが多く、これが政策強化の背景になっています。L2はあくまでドライバーが主体で、システムは操作を補助する位置づけであるため、政策側は誤解を招く表現を問題視し、正確な説明を求めています。ここは日本企業にとって比較的分かりやすい領域で、安全性や表現の正確さを重視する日系の姿勢と相性が良い部分です。

L2運転支援の位置づけ

項目内容
技術レベルL2(先進運転支援)
運転の主体ドライバー
システムの役割操作補助(ブレーキ・操舵など)
中国での課題「自動運転」と誤認されがち
政策の狙い表現の是正・安全性の担保

「価値競争」は日系の得意領域だが、現地企業も急速に追い上げている

政策は「技術・品質・サービス」を重視する方向へ舵を切っています。これは確かに日系の強みと重なる部分があります。しかし現地企業はすでに

  • ソフトウェア
  • UI/UX
  • コネクテッド
  • 自動駐車・高速NOA
    などの“体験価値”で急速に追い上げています。

しかも、「価値」+「安さ」という組み合わせで攻めてくるため、日系にとっては脅威です。単純に「価値競争=日系が有利」とは言えないでしょう。

「追い風になる可能性」は慎重に見るべき

政策文書だけ読むと「日系に追い風」と見えますが、現場の実態を踏まえると、より慎重な見方が必要です。

追い風になり得る部分

  • 品質・安全性重視の政策は日系の強みと一致
  • 誇大広告規制は日系の慎重姿勢と相性が良い
  • 価格競争抑制は日系にとってプラス材料

逆風となる現実

  • 現地メーカーは“価値+低価格”で攻めてくる
  • EV・ソフトウェア領域では現地勢が圧倒的に速い
  • 政策は「価格競争禁止」ではなく「無序な競争の抑制」に留まる

つまり、政策の方向性は日系に有利だが、市場の実態は依然として厳しい というのが最も現実的な評価でしょう。

まとめ:政策と現場の“二層構造”を理解することが重要

今回の反内巻政策は、「中国政府が望む競争の姿」を示したものです。しかし、「市場が実際にどう動くか」は別問題です。日本企業が押さえるべきポイントは次の3つになるかと思います。

  1. 政策は価値競争を促すが、価格競争はすぐには消えない
  2. サプライチェーン改善は限定的で、依然としてリスクは大きい
  3. 日系の強みは政策方向性と合致するが、現地企業の追い上げは激しい

政策の方向性と現場の実態を分けて理解することが、2026年の中国市場を読み解くうえで欠かせないといえます。

中国の政策動向は、文面だけを追っても実態がつかみにくく、現場の温度感と合わせて理解することが欠かせません。弊社では、日系企業が中国市場で判断を誤らないよう、政策解釈から現場ヒアリング、サプライチェーンの実務支援まで、日々の情報を丁寧に整理してお届けしています。今回のような政策の読み解きや、貴社の状況に合わせた個別のご相談にも対応しておりますので、気になる点があればお気軽にお声がけください。

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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