ついにこういう時代が来てしまいました。なんとパナソニックが小米のOEM生産を行うとのこと。今までよく聞かれたのはブランドを持つ企業が中国(に限らず)の企業に生産させるというものでしたが、ブランドを持つパナソニックが他社ブランドを生産するのであります。先月の時点で日本側でもこれに関する報道がされています。
Panasonic、シャオミー(小米)と提携へ
日経新聞による記事「パナソニック、小米と提携」
中国での報道をもとにこれについて紹介していきます。パナソニックの中国現地法人である広州松下空調器有限公司は小米(Xiaomi)のために製造を代行するとのこと。以前の感覚だと外資ブランドは品質はいいが値段も高い、中国ブランドは確かに安いのだが、品質がいまいち、というのが定番の評価でした。そして、中国ブランドがなかなかそういう状況から抜け出せないというイメージがありました。しかし最近では外資ブランドに対する評価は、「サービスが悪い」、オフラインの販売ルートは主に大手チェーンに依存しており、オンラインの最新事情に追いつけていないというものでした。そんな中でパナソニックの中国エアコン市場におけるシェアは年々低下し、『2022年度中国エアコン市場総括報告』によると、パナソニックのエアコン市場シェアはわずか1.1%でした。中国ネット通産サイト天猫で「空調」と検索したところ、表示されたブランドは以下の通りです。中国ブランドと外資ブランドともに含まれていますが、想像以上に多くのブランドが存在しています。
中国のハイエンドのエアコン市場
ハイエンドエアコン市場では、Casarte(ハイアールグループ)やCOLMOといった中国ブランドが台頭してきております。シェアを伸ばしてきています。
値段を見ると確かにハイエンド。恥ずかしながらこの二つのブランド、知りませんでした。
中国の一般的なエアコン市場
ハイエンドというくくりではなく、一般的な中国エアコン市場を見ていきます。ハイアール、グリー、美的の三大エアコンメーカーが75%前後を占めています。これらブランドとの競争もなかなか熾烈で、パナソニックも苦戦気味で、生産能力も余剰気味になりつつある一方で、人件費が年々増加する状況の中で労働者の待遇も見直さなければならず、小米と組む、つまり小米のために製造を行うことで苦戦してい状況や余剰生産能力の問題を解決しつつ、中国のエアコン市場での生き残りを図ろうとしたと言えるでしょう。
携帯だけでない小米の製品
小米といえば携帯電話が代表的ですが、ショップに行くとかなりの種類の商品を扱っています。個人的にはスマートテレビや空気清浄機、TVスティック、自動給餌器、猫用自動トイレ、電池、スマートウォッチなどなど、いろんな商品を使用しています。これだけのカテゴリーなので、全部が全部小米が生産しているとは限らないでしょう。エアコンにおいては年々シェアを伸ばしてきており、しかしながら小米自体に製造能力が不足していることから、パナソニックと提携することで製造能力の問題を解決することになります。パナソニックも中国ブランドの製造を行っていたことがあるものの、そこまで多くなかったようで、この小米との提携でそれが本格化することになります。まずはエアコンからスタートしますが、今後はさらに多くの家電製品にも広げていくようです。
中国ブランドを好む若者たち
エアコンに限らずですが、近年は特に消費主体である90年代生まれや2000年代生まれをを中心とした世代が中国ブランドを好む風潮にあります。この風潮は国潮(中国の要素を取り入れているファッショントレンドのこと)と呼ばれますが、家電においても同じような動きがみられてきているのでしょう。国潮が過ぎて今回の提携をよく思わない人たちも一部いるようですが。中国ブランドも品質は向上してきており、価格も外資ブランドと比べると買い求めやすく、外観デザインや機能面でも中国消費者に受け入れられるようになってきています。私も中国ブランドの家電を使用していますが、欲を言えばきりがないですが、それなりに満足はしています。このような状況の中で外資ブランドは新しいアプローチを模索する必要が生じたのですが、パナソニックは生産を撤退するという選択はせず、国内ブランド(ここでは小米)製品を生産することで工場の稼働率を引き上げることにしたのであります。
ブランド力のある「小米」技術力のある「Panasonic」
中国におけるブランド力の強い小米と技術力の高いパナソニックが提携することで、「小米のスマートテクノロジーとパナソニックの品質」という相互の強みを活かすことができ、ウィンウィンの関係を築くことができると期待されます。この提携がどこまでいい形として仕上がっていくか、楽しみですね。