中国減速の影響か!?決算発表で見えた「ユニクロの苦戦」

ファーストリテイリンググループが決算を発表しました。2024年度第3四半期、グレーターチャイナエリアの収入は5,224.69億円(約240億元、総収入の22.1%)で着地。この期における中国・香港市場の収入は減少、経営利益は大幅減少、既存店舗売上も減少したとのこと。中国経済の調子が今一つと呼ばれる中、ユニクロもその影響を受けています。

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ユニクロ中国最高経営責任者が言う「平替」とは

この結果について、同社グレーターチャイナエリアの最高経営責任者潘寧氏は「平替」に言及してます。「平替」とは手ごろな価格の代替品のことを指します。若者たちのコストパフォーマンス消費が特に顕著で、「平替」消費という価値観の下で、消費者はブランドで商品を選択せずに、品質の差が大きくないより手頃な価格の商品を選択するようになってきているとみており、ユニクロはその第一選択肢となる潜在力を持つと考えているとのことです。

ユニクロを「平替」する商品とは

もちろん、「平替」ニーズを取り込むことができる一方で、「平替される」こともありえます。今や中国でもファストファッションブランドは数多く表れてきており、その気になればユニクロを「平替」する商品も見つけやすいと考えられます。また、このニュースの元ネタでのコメント欄を見ますと、「決して安くない」、「値段上がりすぎ」といったような、価格が高いことに対するコメントが多くみられています。日本もそうだと思うのですが、ちょっと前までは「安い」や「リーズナブル」というのが多かった印象があるのですが、状況は変わってきているようです。

ユニクロのグレーターチャイナエリアの収入・利益が減少した点

2024年3月から5月にかけて、ユニクロのグレーターチャイナエリアの収入・利益が減少した点について、潘寧氏はメディアに対して以下のように外部要因と内部要因の分析コメントを提供しています。

外部要因

  • 前年度同期のユニクロは中国市場で好調だったが、今年は消費者の購買意欲の低下や異常気象などの影響を受けている。
  • 商業施設間の競争が激化し、店舗ごとの顧客誘致能力に差が生じ、市場にいくつかの変化が生じている。

内部要因

  • 顧客ニーズを満たし、各地域の異なる気候に適応するために十分な製品ポートフォリオがない
  • 商業施設間の差がどんどん拡大し、約150店舗(約1/6)において集客が不十分で、全体の月平均値を引き下げている。

ユニクロの中国大陸の主要市場での知名度は94%

とはいえ、同氏は中国市場には依然として大きな成長潜在力があり、ユニクロの中国大陸の主要市場での知名度は94%で、少なくとも一度はユニクロ製品を購入した回答者は84%に上ると指摘しています。

ユニクロを必須ブランドと見なしている中国の消費者

いまやファストファッションのリーディングカンパニーであるファーストリテイリング、中国本土の多くの消費者はすでにユニクロを必須ブランドと見なしているものの、半数はユニクロを定期的に購入するブランドとして選ばないと認識しています。そして潘寧氏はユニクロの現在の市場シェアはまだ2%以下に過ぎず、まだまだ拡大していく潜在力があるとコメントしています。

ユニクロの今後三年間の出店・リニューアル計画

そして今行うべきは出店戦略の調整であり、店舗の量ではなく品質を重視するとのこと。この考え方に沿ってユニクロは2024年度から3年間、毎年約50店舗の実店舗を閉鎖・リニューアルする計画で、売上高の低い店舗を閉鎖し、より良い場所に大型店舗を出店いていく一方で、より立地の良いショッピングセンターの店舗をリニューアルすることで、1店舗あたりの売上高を1.5倍以上に増やしていくとのこと。リニューアルを実施した22店舗において売上高が50%伸びているとのことなので、今後この動きは加速されるものと思われます。また、上海や広州などの旗艦店をリニューアルするとともに、成都、重慶、天津、西安、昆明、鄭州など「潜在力は大きいがまだ旗艦店を出店していない大都市に旗艦店を出店していく方針をコメントしています。

ユニクロ店内のスタッフを主役としたライブ配信販売が人気

また、ライブ配信販売についても言及しています。店内のスタッフを主役としたライブ配信が人気を集めているようで、現在約2000人の店舗スタッフに研修を行い、全ての店舗からライブ配信を行うようにしているとのこと。以前であれば店頭での対応さえしっかりしていればよかったのでしょうが、ライブ配信の能力まで必要とされるようになってきています。店員も大変ですね。

中国ユニクロ絶好調からの変化

中国のユニクロ絶好調とついこの間まで言っていたのが、だいぶ様相が変わってきています。街を歩いていると人はとにかく多いので活況のように見えるのですが、実のところ多くの人は財布のひもを絞っているようです。

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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