2012-10-01

反日デモの現場への影響

日本政府による尖閣諸島の国有化にきっかけに中国全土で吹き荒れた反日デモ、ピークは9月18日に向かえ、その後は徐々に落ち着きの様子を見せ始めている。しかしながら、今後このまま落ち着いていくか否かについては決して今のところまだ楽観視できるような状況にはなく、このまま終わって欲しいと願うばかりです。単なるデモであれば危険な場所に近づかない、目立つ行動をとらないことでリスクは避けられますが、それは日常生活の話ですし、でもそのものは今のところ一段落してます。ではビジネス面ではどうでしょう。反日デモを境にしばしば見られた表現として「抵制日貨!」(日本製品を買わない)があります。要するに日本製品ボイコット運動です。ネット民たちの間では当然のことながら、メディア報道でも当たり前のように見られますが、果たしてこれがどこまで中国の消費者に影響を与えるのでしょうか。中国国内市場での販売を進めている企業になっては気になるところです。尖閣諸島を国有化する前の時点で都有化への動きがありましたが、その影響もあってか既に7月時点ですでに日本メーカーの自動車の売上が下落し始めています。

 

 

 

これだけ見るとトヨタのマイナス分をホンダが食っているようにも見ることができます。希望を持つような言い方をすれば、自動車に関してはあくまで個社の問題であり、8月のホンダ車の売上が14.9%伸びていることから、一般的に日本製品だからと言って選ばれなくなってきているわけではないと考えたいところです。次に国別で見ていきます。

 

 

これを見ると明らかに日系自動車の落ち込みが見て取れます。やはり影響が出ているようです。

 

果たしてビジネスにおいてこの反日デモが現在どのような状況にあるのかについて、先週は日系企業の現場担当者を集めて意見交換を行いました。

 

1.物流面の影響

物流の現場においては日本からの輸入品に対する検査強化が行われているという新聞報道が見られますが、上海の港でも商品検査の頻度が上がってきており、従来は10分の1程度の検査率であったものが今では5分の1程度に上がってきているようです。ただし、これは税関側の理屈でいえばルールを超えたことをしているわけではないという言い分の範囲内のものであるとのことです。また、商品検査の検査率はあくまで全貨物に対する比率であることから、特定の、もっと具体的に言えば日本からの輸入貨物に対する検査率が高まることはリスクとして想定する必要があると思われます。この他、通常ではまず見られない新品の設備の通関が滞るという事態が発生しているとのことです。なお、中国では税関が企業に対して分類を行っており、その分類ランクが高い企業であればあるほど手続き面で優遇を受けられる制度がありますが、最上級のAAに認定されている企業では今のところ特に大きな問題は生じていないようです。しかし、今後日本からの輸入貨物に対する意図的なオペレーションにより遅れが見られるようであれば第三国経由での運送を検討する必要も出てくるでしょう。第三国を経由した場合、一番最初はどこから来たかまではみられることはほとんどないそうです。

 

2.消費面の影響

反日デモを境に多くの日本料理屋が中国国旗を掲げたり、「台資企業」という幕を張ったりして暴徒に襲われないための自衛策を行っていました。暴徒に襲われるのはデモが発生するときに限定されることから、デモがひと段落すれば後は売上下今まで通りにいくかどうかが気になるところです。このような状況の中で見られるのは「日系製品はずし」です。具体的には店頭から日系商品を撤去したり、ネット販売ではやはり日系商品を取り扱い商品からはずすという動きです。そもそも売り場に乗らないのであれば売れようがありません。中国のスーパーで真っ先に反応したのがカルフールでした。カルフールは反日デモの動きにあわせ高々と「日系商品撤去」を謳い、大衆に迎合するような動きを見せました。しかし既に多くの日系商品が並んでいる売場から果たして本当に全てを撤去することが可能なのでしょう。やはりそれは現実的ではなかったようで、実際に売り場に行くと日系商品はいつものように売られています。ごたごたはあったようだが、結局は掛け声だけだったようです。カルフールという外資スーパーがこのような動きを見せたのであれば、中国系スーパーはもっと露骨な動きを見せるだろうと想像するところですが、実際には中国系スーパーの反応は理性的なもので、撤去するもしないもしばらく様子を見てから決めればいいというものでした。結局は18日にピークを迎えた反日デモも徐々にスローダウンし、日系商品撤去の動きはなんとなくうやむやになっていったようです。

反日デモの影響で工場の操業が止まってしまったところもありますが、従来その工場から商品を購入していたバイヤーはこのようなリスクを考えて、問題が発生しても調達への影響をおさえられるように中国以外でも同じ製品の生産を行っていることを希望するところもあるようです。

  

3.ビザ

新聞報道等で中国赴任のために就労ビザの手続きが遅れているというのがありましたが、この動きはやはりみられているようです。就労ビザはこれから赴任する人のための者ですが、もしこれが既に駐在している日本人たちの在留期限延長手続きにはねるようであればかなり大変な事態になります。今のところそのような話は聞こえてきていませんが、留意する必要はあるでしょう。

 

4.採用面の影響

物流の動きも企業によっては特段の影響がなく、消費についても多少のごたごたはあったものの特段の影響を受けなかった企業の中で、唯一影響が見られたのが採用活動です。沿岸部の工場では工場で働くワーカーを探すために内陸に赴いて人材を募集することがあるのですが、その地方より募集活動の受け入れを拒否されるケースが発生しています。これが長引くようであれば今後の安定的な採用を行うことができず、安定的な生産を行うことができないという事態が想定されます。

 

 

ここで紹介した話は想定されていたほど厳しい内容のものではなく、メディアで報道されているような後ろ向きな話からは縁遠いと言える。やはりメディアからの情報に頼ってしまっている私にとってはやや意外でした。たまたま情報を提供してくれた企業の被害が少なかったからという考え方もできますが、これもまた事実です。それでもその後も色んなメディア報道を見ていると「日本製品は扱いたくない」、「日本人との面会は禁止されていると取引先から告げられた」、「手応えを感じていた地方政府の入札が突如延期された」、といった報道が目立ちます。やはり今回の騒動は大したことがないとは言い切れないのでしょう。あるところで日本人が集団に囲まれて殴られたというような話も伝わってきています。結局はその企業、その人が所在した場所、時間帯で受ける印象は変わってくるものです。企業としては偏った情報ではなくより多くの情報を収集することで、できるだけ客観的な判断ができるようにするべきでしょう。

 

反日デモをきっかけに審査に上げたプロジェクトの認可が止まっているものもあれば、プロジェクト自体を当面中止するという判断を下した企業もいます。後者についてはこのご時世なのでその判断は間違ってはいないと思いますが、果たしてこのまま中国事業をストップすべきなのでしょうか。当面プロジェクトを見合わせるこの時期こそそれを考えるいい機会なのではないではないかと思います。そして考えた結果中国への進出を止めるもよし、方向転換して東南アジアへ進出するもよし(実際にフィリピンは在中日系企業に対して最優遇の条件を提示して投資誘致を行い始めている)、やっぱり中国市場へ進出するもよし、不謹慎な言い方になるかもしれませんが、せっかく与えられた時間なので、この時間を今後の事業展開を検討する時間として有効に活用すべきでしょう。

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