コロナをきっかけに決断された中国事業撤退
2020年4月、世界がコロナがこれから3年も私たちを脅かす存在になるとか思ってもいないまだ寒さが残る頃でした。ある日本企業から中国の東北地方の工場を撤退したいという依頼がやってきました。日本サイドとして、中国のその工場を撤退した方がいいのではないかと以前から話には出てたものの、中国での工場撤退の時の様々なネガティブなニュースを見かけたりして、「中国の工場の撤退はとてもとても大変な事」なので後回しにしてたという事。しかし、コロナをきっかけにスッキリさせようという話でした。
日本からオンラインで中国事業撤退を報告する
2020年の夏くらいからなんとなく中国国内移動は可能になりました。しかし、未だに当時はビザを持ってても外国人は中国に入国出来なかったので、ビザも保有していない日本企業側が日本から出張に中国に入国するのは不可能で、弊社で対応をする事になりました。上海のオフィスから東北へ出張に行き、オンラインで本社と繋げました。社長自ら従業員に工場閉鎖のお話をしてもらいました。工員さんは30名ほどで、20年ほど長期で勤務してた方もおられました。少し感情的になってらっしゃる工員さんもいましたが、きちんと法で定められてる金額や保証はきちんと約束通りに払いますと誠意を込めて対応すると伝えると、少しずつ落ち着いてきました。
一般的に会社都合での退職となるとさまざまなルールがあります。
中国にて従業員の解雇をする場合の難しさ
日系企業に関わらず、従業員を解雇する事で揉める理由として、「会社の対応があまりにも不誠実」なのと「従業員が調子に乗る」というのがあるかと思います。聞いた話によると、ある企業がどうしてもAさんを辞めさせたいがために、無断欠勤したって事でその一回で定年まで後一ヶ月という中、解雇にしたというのがあります。残り一ヶ月で勤続15年のAさんは退職金をもらえず、かなり怒り狂って反撃に出たようです。無断欠勤は一回でもダメなのですが、解雇にするほどの事か?って言ったら難しい話で、「口頭注意」をしてからそれでも直らなかったら「文書注意」をして、それでも無理なら解雇通知なのでは?って思うのですが、その企業は業績が悪くどうしてもどうしてもAさんに退職金を払いたくなかったようです。
そして「従業員が調子の乗る」という話ですが、いろんな話を聞きます。撤退予定の工場で立て篭もりのニュースなど見られた事あるのではないでしょうか?大手企業の大工場だと撤退するのは大変です。お金あるのだろうから退職金など上乗せしてもって欲しいからと日本人駐在員を人質に立て篭もり。大人数の立て篭もりは怖いです。
中国事業撤退業務の邪魔をする現地社員
それ以外だと、「経理が撤退事務作業を邪魔する」という事もありました。撤退になると会社都合の解雇になるのですが、保証の内容が書かれてる書類にサインを貰うというミッションが初めにあります。それを貰うまで緊張が取れないものなのですが、サインをするまでもいろいろ時間がかかりました。経理は女性だったのですが、日本から派遣されてる中国法人の代表と撤退案件を受けた弊社の代表呉とその従業員たち(他5名ほど)で説明会をしようとしてたのですが、その経理は全く関係ない男性1名を連れてきました。はっきり言って部外者です。味方が必要という事で援護射撃用に手配した仲間なのでしょうか?こちらは上海の企業で地方の工場ではありません。部外者はその説明会の参加は不可能ですので、帰っていただきました。その後、サインした後も、社印がなくなったとか、オンライン銀行に繋げるためのUSBのアダプターみたいなのが必要なのですがそれがないとか。経理は会社のいろんな重要なものを管理してるので、それはそれは苦労しました。
債券債務整理や現預金の日本への送金など
債権債務整理では、迅速かつ丁寧な対応を心がけました。試行錯誤の末、早期回収することができました。残余資産の処理も、現地総経理と財務担当者の献身的な協力により、滞りなく完了。
そして最後の難関、現預金の日本への送金です。手続きの複雑さに加え、資本金を超える部分の送金には細心の注意が必要でした。しかし、綿密な計画と慎重な作業によって、全ての送金を完了。長かった戦いに、ようやく終止符が打たれました。
フルリモートにて中国事業撤退作業を完了させる
本社から誰一人出張者などを派遣せず、中国現地法人の撤収は完了しました。このような特殊な事例により、銀行や役所など、会社代表者の身分証明書が必要。代表者のサインが必要などありましたが、役所や銀行に根気よく粘り強く説明と交渉を繰り返し、理解を得て出来た事も多くありました。「コロナ」というものが今回のきっかけになったのですが、必要か必要でないか真剣に考え行動に移したこちらの企業さんは素晴らしい判断だったのでないかと思います。この決断を下したあと、3年も隔離などの他国との往来が厳しくなるとは思ってもなかったでしょうし、コロナ後の中国経済の不景気具合も想像も出来なかったでしょう。傷の浅いうちに決断できた事例だと思っております。