中国日用消費財流通業者の経営課題とチャネル戦略の転換点

2025年8月19日-21日に第7回中国FMCG(日用消費財)大会及び第5回中国FMCG小売イノベーション大会&第5回中国FMCG流通業者大会が上海で開催されました。ここで『2025年中国FMCG流通業者経営状況調査レポート』(以下、レポートと略)というレポートが発表されており、本日はこれについて紹介いたします。

レポートは、全国366社の中大規模経銷商への調査に基づいており、カバーしているカテゴリーは

  • 水・飲料
  • スナック
  • 乳製品
  • 日用化学品
  • 紙製品・衛生用品
  • 穀物・調味料

など13カテゴリーで、エリアとしては144都市にまたがっています。

経銷商という用語になじみのない人がいるかもしれませんので、以降経銷商を流通業者と表記します。

1.上半期の販売目標達成状況と業績

販売目標達成状況達成状況割合
上半期にTOP1ブランドの販売目標を達成した流通業者の割合目標達成39.6%
販売目標を達成できなかった流通業者の割合未達成38.8%
標準レベルの目標を達成した流通業者の割合標準達成21.6%

全体的な市場環境は二極化が深刻で、調査対象の流通業者のうち、39.6%が上半期にTOP1ブランド(流通業者にとっての最重要ブランド)の販売目標を達成し、38.8%が未達成、21.6%が標準レベルの達成に終わっています。流通業者の経営状況は二極化しているといえます。

カテゴリー別では、紙製品・衛生用品とパーソナルケア製品が好調(紙製品・衛生用品の達成率78.8%、パーソナルケア製品の達成率76%、冷凍食品の達成率70%)で、穀物・油脂と軽食・スナックが苦戦(穀物・調味料の達成率47.2%、軽食・スナックの達成率56.4%)しています。必需品と利便性の高い製品が強みを発揮しています。

カテゴリー達成率
紙製品・衛生用品78.8%
個人ケア用品76%
冷凍食品70%
穀物・調味料47.2%
スナック菓子56.4%

2.売上高と利益の状況

(1)売上高

販売目標達成状況と同じく、売上成長についても二極化しています。41.3%の流通業者の売上が増加し、19.4%が横ばい、39.3%が減少しています。

売上高達成率
増加41.3%
横ばい19.4%
減少39.3%

(2)利益

利益面は全体的に縮小傾向にあります。利益を増加させている流通業者はわずか26%、20.5%が横ばい、53.6%の流通業者の利益が減少しています。売上増加と利益増加を比較しますと、増収減益という状況にあります。

利益達成率
増加26%
横ばい20.5%
減少53.6%

(3)売上・利益減少の原因

売上減少の主な原因は、市場環境の悪化、新チャネルの影響、実店舗の減少です。一方、利益減少の主な要因は、商品の粗利率低下、全体的な販売量の減少、運営コストの上昇です。これは2024年の流通業者経営状況データと比較しても、大きな変化は見られません。

運営コストについて見てみますと、前年と比較して上昇したものとして、人件費、商品在庫、倉庫・物流があげられます。これらは流通業者のコスト比率が最も高いだけでなく、上昇幅も最大です。規模別に見ますと、売上高5,000万元以下規模の流通業者は財務・資金コストの圧力が最も顕著です。最大のコストである商品在庫コストの比率が上昇しているのは売上高が3,000-5,000万元の中規模流通業者(44.4%)に集中しています。

3.利益構造の変化

(1)利益源の変化

45.4%の流通業者は依然として商品の価格差(仕入れ販売)を主な利益源としていますが、商品の輸入と販売の差額が利益の70%を超えている流通業者のうち56%は利益が減少しており、厳しい状況にあることがわかります。他方で、付加価値サービスによる利益が20%以上を占める流通業者の70%は、利益が増加または横ばいの状況にあり、前者と比べて後者のビジネスモデルに想定的に明るさが感じられます。

(2)主要な経営課題

調査では商品粗利率の低下を最大の課題として挙げているのが、70%、従来のチャネルの縮小と新チャネルの影響という二重の圧力に直面しているのが65%という結果が出ています。そして、メーカーの目標と政策が不合理だと考えている流通業者が24.6%おり、特に10億元以上の規模の流通業者で最も顕著です。また、20%の流通業者が人材の採用・育成・定着に課題があると考えています。

これらを総括しますと、FMCG流通業者は

  • 粗利の低下
  • チャネルの変革
  • 人材の課題

という3つの課題に直面しているといえます。

目次

FMCG流通業者のチャネル戦略転換

チャネル戦略においては、従来型チャネルが依然として中心となっています。流通業者が主にカバーするチャネル類型としては、中小型スーパー(77.3%)、個人商店(68.6%)、卸売・農産物市場(63.9%)が上位を占めています。全体データからも、60%以上のカバー率を持つチャネルは4つのみで、残りの15チャネルはすべて50%未満となっています。また、流通業者は新チャネルにも追随しており、ディスカウントストア(32%)、即時小売(21.9%)(即時または非常に短い時間内にデリバリーする小売形態)などへの対応も進んでいます。

チャネル分布の特徴として、半数以上の流通業者(55.2%)は依然としてオフラインチャネルのみに依存しています。これは主力ブランドのチャネル戦略による制限や、流通業者自身のチャネル慣性、デジタル化能力の不足が原因と考えられます。一方、44%の流通業者はオンライン・オフライン両方をカバーしています。オンラインチャネルは主流のeコマースでカバーされているものの、売上比率は高くなく、流通業者が「オフライン+周辺オンライン」の組み合わせで成長の壁を突破しようとしていることを示しています。

即時小売の急成長と消費者行動の変化

最後のあたりに即時小売(即時または非常に短い時間内にデリバリーする小売形態)が出てきました。これ私もよく利用しますが、めちゃくちゃ便利です。配達料も激安、そしてなぜか割引率も高く、家から出かけて買いに行くよりも安く上がってしまうことも多いです。買い物に行くための交通費も発生しないし、店頭よりも安いし、衛材的にも時間的にもデリバリーの圧勝、わざわざお店で買うのは外の気分を味わう、買い物という行為を楽しむためのものといえるのではないでしょうか。ということは、買い物の楽しさを提供できない売り場は完全に即時小売りにとってかわられることになるということにつながりますが、賑やかでないショッピングモールというのはまさにそれを体現しているのでしょう。流通が変化することにより、都市の風景そのものを塗り替えられているということがいえますね。

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