中国の消費状況中国高級品市場の人気に陰り ラグジュアリーブランドの未来とは?

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滅多に閉店しないラグジュアリーブランド店舗

ラグジュアリー品を取り扱う店舗が閉店するのは中国ではあまり見かけません。特に国際ラグジュアリーブランドは売り場のなかでも特に目立つ1階の好位置に出店していたりします。ラグジュアリーブランドに関していうと、出店する側とリーシングする側の力関係で見ると、出店する側のほうが上でしょう。賃料のみならず、メリットがないと感じれば、売り場全体で行っているイベントに参加しないこともできますしね。

高級売り場が高級であるのはこういったラグジュアリーブランドの存在が大きいのは言うまでもありません。高級売り場が高級なのは、まさにこれらの高級ブランドが売り場を支えていることにあります。そのため、ラグジュアリー店舗が閉店するとなると、売り場からするとかなりのダメージになるといえます。

ここ最近は景気もよくないということで、リーシングする側も以前ほど強気でなくなってきている、むしろ弱気になってきているという声も聞こえてきます。こんな時に出て行かれるとなるとたまったものではないでしょう。逆に出店したい側からすると交渉しやすい時期であるとは思います。

ルイ・ヴィトンが瀋陽の店舗の閉店を発表

さてそんな中で、ルイ・ヴィトン(以下、LVという)が10月15日に瀋陽卓展購物中心の店舗を閉鎖し、瀋陽万象城に集約することを発表しました。集約といえば聞こえはいいですが、要するに閉店ですよね。

LV以外ですと化粧品販売店のセフォラが中国で人員の約3%に相当する約120人を3%削減すると発表しています。セフォラもLVも同じくLVMHグループ傘下のブランドであります。また、同じくLVMHグループ傘下のDFSグループもマカオ市場で5%の人員削減を発表しています。

売上高の約20%が中国のLVMHグループ

LVMHグループの売上高の約20%が中国、その中国でこのような動きは穏やかではありませんね。なぜこのような動きに至ったのでしょうか。いくつか言われています。

中国でのルイ・ヴィトンの人気が落ち込んでいる

言われているのが、

  • 中国富裕層の消費観念の変化
  • 相変わらず存在する模造品(以前ほどではないと思うのだが)
  • あまりにも皆が持ちすぎるようになって、逆にLVを持つことがダサくなってしまった

というようなことが言われています。また、コロナ禍が過ぎ去ったものの、景気がなかなか復活しないことから、ぜいたく品に消費するのではなく、もっと理性的に消費しようという動きになってきていることも理由の一つとして挙げられています。コロナ禍においてはラグジュアリーブランドが結構売れたという話も聞きましたが、それは中国から出国できず中国国内でしか購入することができなかったためで、出国できるようになったいま、購入するなら安く購入できる海外で購入するようになったのも原因の一つではあるでしょう。結果として、LVMHグループは2024年上半期の業績報告の発表によると、中国をはじめとするアジア市場(日本を除く)の売上高は前年同期比10%も減少したとのこと。

中国の売上高が21%減少しているBurberry

苦しむラグジュアリーブランドはLVMHグループだけではありません。Burberryの2025年度第1四半期(4-6月までの3か月)決算によると、6月末までの3カ月間において、中国の売上高が21%減少しています。なお、Burberryは全世界ベースでも22%減収となっており、相対的に中国だけが悪いというわけではありませんが、稼げてた市場ですからダメージは大きいでしょう。

カルティエの親会社であるRichemontグループが発表した2025年度第1四半期決算によると、6月末までの3カ月間の売上高は1%増収となっていますが、グレーターチャイナエリアの売上高は27%もの減収となっています。

中国市場22%減少のGUCCIグループ

Gucci親会社のKering Groupが発表した2024年上半期決算によると、前年同期比11%減少、アジア太平洋地域は中国市場の落ち込みが大きく22%の減少となっています。ところが日本は8%の増収なので、日本ってまあまあ元気なんですね。日本の百貨店などでラグジュアリーショップで行列が出来てたりと異様な光景を見たりしたのですが、ニュースを見てるとネガティブ情報ばかりですが、持ってる人は持ってるということでしょう。いや、円安とインバウンドの相乗効果のほうが大きいのかあ?

エルメスの2024年上半期アジア太平洋市場の成長率はわずか5.5%、エルメスはすでに中国市場に軟調な兆しが現れていることを指摘しており、スイスのファッション時計メーカーSwatchも中国市場におけるラグジュアリー品需要の低下が業績に影響していると言及しています。

いわゆるラグジュアリーブランドはどこもかしこも不調ということですね。

中国の消費者物価指数を見てみよう!

高級品を購入しなくなってきていることもそうですが、デフレ現象も見られるように思います。消費者物価指数を見てみましょう。

このグラフを見ますと食品の下落が大きかった2020年11月あたりを別にすると、昨年に入ったあたりから下落傾向に入っていることがわかります。今年の3月から回復してきているように見えますが、どうなんですかねえ。ネット販売はいつまでたってもセール活動していますし、空港までの移動にライドシェアをよく利用するのですが、その料金も履歴を見ると以前よりも安くなっているような。

もうしばらくのあいだ厳しそうな感じがしますね。

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この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

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