衝撃!北京・上海の社会消費品小売総額が2桁マイナス成長、その背景と未来とは?

中国経済は「景気減速」と叫ばれる中でもGDPは依然プラス成長を維持しています。しかし、社会消費品小売総額という重要な指標を深掘りすると、衝撃的な事実が浮かび上がってきます。この記事では、特に注目される北京と上海の小売消費状況を中心に、その原因や今後の展望を見ていきます。

目次

北京・上海の社会消費品小売総額に現れた突出したマイナス

1. 全国のGDP成長率と比較した消費動向

2024年1~9月期における全国のGDP成長率は4.1%、北京は5.1%、上海は4.7%と、いずれもプラス成長を記録しました。成熟した国では達成が難しい水準といえるでしょう。一方で、社会消費品小売総額の成長率を見ると、全国は1~11月累計で3.5%のプラスとなるものの、北京は▲2.8%、上海は▲3.1%と明らかにマイナスを示しています。特に11月単月では、北京が▲14.1%、上海が▲13.5%と二桁のマイナス成長を記録しました。

前年同期比GDP社会消費品小売総額
2024/1-9月2024/11月2024/1-11月
全国4.1%3.0%3.5%
北京5.1%▲ 14.1%▲ 2.8%
上海4.7%▲ 13.5%▲ 3.1%

この時期は中国最大のセールイベント「ダブルイレブン(11月11日)」が開催される消費のかき入れ時にもかかわらず、この結果となっています。


2. 北京・上海の月次データが示す停滞の実態

参照:中国国家統計局  作成:TNCリサーチ&コンサルティング

上のグラフからも分かるように、北京・上海ともに2024年の月次データで前年比プラス成長を記録したのはわずか3か月のみ(1~2月をひと月として計算)でした。特に注目すべき点として、10月の一時的な急上昇があります。この背景には以下のように9月下旬に打ち出された経済刺激策が影響しています。

  • 預金準備率の引き下げ
  • 2軒目の住宅購入時の最低頭金比率の引き下げ
  • 既存の住宅ローン金利引き下げ

これらの政策により、住宅市場の活性化が期待され、株式市場の急騰も一時的に見られました。しかし、11月には再び急落。消費者心理の不安定さが浮き彫りとなっています。国慶節前後で住宅購入する人が増えたという報道もありましたが、その人たちは今頃後悔しているのではないでしょうか。


消費低迷の原因:経済全体の不透明感と都市特有の問題

1. 中国全体の消費減速要因

中国全体の消費減速要因について考えてみました。

  • 景気回復の遅れ:新型コロナからの回復期において、多くの地域で雇用・賃金の改善が見られず、消費者心理が低迷。
  • 不動産市場の調整:不動産価格の下落が家計資産に影響し、可処分所得の減少が消費に波及。

明るい材料も探せばありますが、どうしても上記のようなマイナス情報のほうが多く見られます。

2. 北京・上海のマイナスが突出した要因

なぜ都市部に突出して景気の減速が加速したのでしょうか。

  • 高生活コスト:都市特有の高い生活費用が消費を抑制。
  • 富裕層の支出減少:高所得層が投資や高額商品の購入を控える傾向が拡大。
  • ロックダウンの影響:過去の厳しい移動制限による心理的な影響が現在も残存。

およそこんなところではないかと。しかし本当に持っている人は日本で不動産を購入したりする動きもあるので、お金を使う場所を選んでいるというのもあるように思われます。


2024年の展望:回復の可能性と課題

11月までの累計数値を見る限り、2024年において、全国ベースのGDPも社会消費品小売総額もプラス成長で着地するでしょう。一方で、北京と上海は通年ベースでの社会消費品小売総額の状況は厳しいでしょう。北京・上海は、直近の11月が大幅マイナスとなっており、1-11月までの累計地でもマイナス成長となっていることから、12月単月の盛り返しで通年プラスとするのはさすがに難しいでしょう。

中国では日本でよく行われるような個人に対する補助金・支給金のようなバラマキ的なサポートがほぼ見られないのですが、それに代わる策として消費チケットを配るというのがあります。日本のように現金でばらまくと貯金に回ってしまうかもしれないので、消費チケットにするのは消費を促す方法としていいのですが、全員がゲットできるわけではありません。また、ネット販売のタオバオのサイトを見ると、いまだに結構な店舗で割引セールが行われており、こんなに長い期間にわたってセールするなら何も慌てて購入する必要もないという心理もあるでしょう。中国の住宅規制当局は今月24-25日に開催した工作会議で、不動産市場の安定化とさらなる下落防止の取り組みを2025年も継続する方針を示したとのことなので、これを以てどこまで消費心理が改善されるかといったところでしょう。住宅は住むためのものであり、投機対象ではない、と春先あたりまで言ってたと思うのですが、結局「不動産市場の安定化とさらなる下落防止」ということは、高すぎて買えないといわれている不動産市場を自然的に調整させることを回避したとも言え、結局は不動産頼みで回復を図るというのはいままでと同じことの繰り返しといえるのではないでしょうか。

別のニュースを見ると、中国は来年、3兆元(4,110億米ドル)相当の特別国債を発行するようです。発行規模は今年の1兆元から大幅増額し過去最大規模となるとのこと。調達した資金は、消費促進を狙った補助金プログラム(消費チケットの類ですね)、企業の設備更新、技術革新をけん引する先端分野への投資などに充てるとのことですが、既述した不動産市場の安定顔おy備下落防止の取り組みとのダブルでどこまで盛り返せるでしょうか。

まとめ:北京・上海は2025年中国消費の牽引となりうるか?

2024年の北京・上海における社会消費品小売総額の二桁マイナス成長は、なかなかインパクトが大きいと思います。おそらく地方都市ではもっと傷んでいるところもあるかと思います。2025年以降、どこまで回復できるのか注視する必要があります。これらの二大都市の消費が本格的に回復することで消費者心理的にも大きくプラスに影響し、全国レベルの安定的な経済成長に繋げていきたいところでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

神戸育ち。住友銀行入行後、大阪を中心にほぼ一貫して法人業務畑を歩む。上海支店赴任後は中国ビジネスコンサルティングに特化、2005年に日綜(上海)投資諮詢有限公司設立に伴い同社の副総経理に就任し、2011年10月より独立し株式会社TNCリサーチ&コンサルティング代表に就任。

コメント

コメントする

目次