既に現地メディアで報道されているのでご紹介いたしますが、ヤクルト上海工場が12月6日に生産を停止し、その生産機能を天津工場や無錫工場など中国国内の他の拠点に全面的に移転するとのことです。
ヤクルト上海工場を視察した時に思った事
ヤクルト上海工場は工場見学会で訪れたことがありますが、周りが比較的都市化されているため、同じ場所にい続けるのも難しいなあと思った印象があります。2019年には見学者数が50万人を超えたということで、他の生産拠点と比べて特段大きな工場でもないことから、工場のショールームのような意味合いもあったのだと思います。その2019年の時のメディアインタビューによりますと、2002年に中国市場に入り始めたころの販売量は6万本/日だったのが、2018年には750万本/日まで大きく増加しており、大成功した日系企業の一つであるといえるでしょう。これよりもっと前の時期、SNSやネット広告がまだなかった時代に、中国でのテレビ広告をスタートさて、それをきっかけにブレイクした時のマーケティング担当者のお話をお伺いしたことがありますが、とても刺激的だったことを覚えています。
工場を閉鎖すると聞くとネガティブな印象を抱きます。しかしながら、閉鎖する工場は2006年に生産を開始し、上記の通り位置的には比較的都市化された場所にあること、また昨年には無錫第二工場も竣工し、1600万本/日の生産能力に達したことから、上海工場の生産機能を他の生産拠点に集約したというのも間違いのない話だと思います。
中国での乳酸菌飲料市場が盛り上がってきた
いまでこそ中国で乳酸菌飲料がたくさん見られますが、ヤクルトが中国の乳酸菌飲料市場を作り上げたことは間違いないでしょう。しかしながら、いまでは類似品が数多く市場に見られるようになり、例えば味動力や蒙牛優益Cなどが新製品を次々と投入しています。
また、消費者の健康意識が高まる中で、ヤクルトの「健康理念」はしばしば疑問視されています。糖分が多いことがその理由の一つかもしれません。
いろんなヤクルトシリーズで勝負をする
ヤクルトは低糖質バージョンの「小藍瓶」や「小金瓶」、ピーチ味などの新製品を発売していますが、ここ最近の中国経済の低迷をカバーするには至らなかったようです。2023年には、投資者の質問に対して、中国市場での1日あたりの月間販売量が1月には約532万本、2月には約425万本、3月には約506万本であったと回答しています。それでもなおヤクルトは、中国で拡大していく方針を示していました。そして、「2022年には中国で毎日約626万本のヤクルトを販売していますが、これは中国の人口14億人に比べるとまだ少なく、ヤクルトを届けられる地域の60%に過ぎません」とコメントしていました。
まだまだ中国での拡大が期待できるヤクルト
気になるのは、この「腸道健康」という市場に対して、多くの乳業企業が研究開発を行い、新商品を販売するようになっていることです。つまり、競合企業が力をつけてきているということです。とはいえ、上に紹介した味動力を例にとりますと、その親会社である均瑶健康の2024年第3四半期の収入は約11.77億元で、前年同期比13.2%減少しており、これは競合企業も必ずしも安定した成長を遂げているわけではないことを示しています。
競合も苦戦している状況なので、今は環境的になかなか難しい状況なのだと思いますが、昨年無錫第二工場が立ち上がったばかりなので、今後も引き続き中国市場にコミットしていくのは間違いないはず。一消費者として触れる機会の多い商品でもありますし、今後が楽しみです。
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