2016-11-04

中国各地の家庭料理をシェアリング

 ウーバーが退場させられた中国のタクシーアプリ業界、ことインターネットを活用したビジネスについて中国は世界の最先端を走っているといえます。アイさん(家事手伝い)派遣、引っ越しサポート、家電修理、美容師(ネイル、まつ毛エクステ、脱毛、エステ等)派遣、自動車メンテナンス、パーティー用のシェフ派遣といったサービスが一体となったアプリが存在しており、数多くのプロフェッショナルがこれに登録しサービスを提供しています。そして最近では非プロフェッショナルが自宅に居ながらにして副業として稼ぐことのできるプラットフォームが現れるようになりました。「回家吃饭」(家に帰ってご飯を食べよう)という名のアプリです。

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 サービスを提供する側として登録している人は料理が得意な一般人、そしてその人たちが調理する料理をアプリを通じて注文し届けてもらうというものです。届けてもらえるおおよその時間をあらかじめ表示してもらえるので時間管理も組みやすくなっています(早めに出来上がったりもしますが)。上海のような大都市であれば上海人以外にも中国各地から集まってきた人々が多くおり、中国の地方料理である広東料理、四川料理、西北料理はもちろんのこと、料理好きの調理する東南アジア料理や、西洋料理も楽しめます。プロが調理する料理ももちろんいいのですが、家庭料理を楽しみたい人にはうってつけではないでしょうか。登録している調理人の累計注文数や、ユーザーからの評価及びそのコメントも表示されていますので、この指標が悪ければ自然と淘汰されてしまうので、料理好きな人たちを一つのプラットフォームで共有することから、これもシェアリングエコノミーの一種といえますね。

 このサービスは2014年10月からスタートし、現在は北京、上海、広州、深圳、杭州の5都市で展開されており、登録ユーザー数は数百万人に上ります。もともとアリババ、ウーバー、京東商城(JD)、テンセント、バイドゥといったネット系企業に勤めていたメンバーにより創業され、数多くの投資会社よりの投資も受けています。

 一般の飲食店を開業する場合、日本の飲食店営業許可に相当する手続き、具体的には衛生許可を取得する必要がありますが、これだと店舗を構える必要もないので、そもそもそんな手続きすら必要なくなります。手軽にできるのですが、行政が関与しないため、問題が発生した場合にどこまでケアされるかという不安があります。ところが、保険会社の統計によりますとこのプラットフォームで問題が生じる割合は一般の飲食店の15分の1ほどしかなく、また仮に問題が発生した場合でも保険会社より30万元を上限とした保険が付保されています。そもそも調理師として登録するにあたり調理場所の審査や本人確認も行われており、不定期の現地パトロールも行っていますので、できるだけのリスクヘッジはしているといえるでしょう。しかし、これはあくまでプラットフォーム側の言うことであり、実際にどこまで厳格に行われているかという疑念は残ります。

 これと同じことを日本で展開しようとすると、個人レベルではともかく正式なビジネスとしてだとおそらく保健所の許可が必要になってくること、あるいはあまりに目立ってしまった場合、出る杭は打たれるようなことも出てきそうに思います。中国でも衛星許可を取得する必要があるといった考え方は同じなのですが、そのルールを飛び越えて先にビジネスモデルが出来上がってしまっています。すでにスタートしてから2年以上経過していることから軌道に乗ってきているといえ、大きな問題さえ起こさなければこのまま定着していきそうですね。許認可や事故を気にしているとできないことも多いかもしれませんが、そのリスクを取って新たなビジネスモデルを考える。いやはや中国人のビジネスに対する意欲は旺盛ですな。

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