2016-05-09

海外勤務者の労災認定について要確認

 4月28日付の日経新聞で「海外勤務に労災適用 東京高裁、遺族が逆転勝訴」という記事を見ました。この記事によると、海外駐在中に駐在先で駐在員がなくなってしまったのですが、会社から労災適用を受けることができなかったという事例に関して争われたものです。最終的には亡くなった駐在員は運送会社の上海事務所に首席代表という業務上の性質もあり、日本本社の指揮系統にあったことから労災が認められたというケースです。この会社はたまたま日本本社の仕事をしていたということで労災が認められましたが、今の時代中国国内向けのビジネスの比率のほうが高くなっている企業は少なくないはず。もしそういう会社だったら違う判決が出ていたかもしれず、軽く読み流すわけにはいかない記事だと思います。

 ちょっと調べてみたのですが、海外赴任中に亡くなった場合、日本本社からの労災適用が受けられないというのは決して間違っていない措置のようで、労災を受けられるようにするためには海外での労災も保険の対象とする「特別加入」なる手続きをする必要があるとのこと。今回のケースはこれを会社側がしてなかったこともあってもめたのですが、なぜかそこに会社側の落ち度があったという話にはなっていません。ほとんどの駐在員は知らないのではないでしょうか。本社がやらないのであれば現地法人から労災適用されるのであればわかりますが、感覚的にはやってくれなさそうな感じがしますし、やはり日本本社側で対応するような話かと思います。

 大手企業であれば海外駐在員に対する処遇のノウハウの蓄積もあるでしょうから、この手の手続きもちゃんとしているのだと思いますが、念のため海外勤務規定でそこまで書かれているかどうか確認したほうがいいとは思いますし、書かれていなければ本社の人事総務あたりに確認したほうがいいのではないかと思います。少なくとも自分が駐在員だったときってこんな手続きをしていたかどうかは知りませんでした。一方で、中小企業だとそこまでやっているところってあまりないかもしれないのではないでしょうか。そもそも「特別加入」なる手続きの存在自体知らなければすんなり労災認定してくれるということも考えられますが。

 別に死ぬことを前提に海外勤務しているわけではないですが、残される遺族のためにも駐在員はこのあたり抜かりなく確認しておきましょう。身を粉にして尽くした会社であっても、会社にとっては一番かわいいのは従業員ではなく会社自身ですからね。

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