2020-01-08

中国のスポーツジム事情

 スポーツジム関連のお仕事に携わったことがないのですが、スポーツジムって結構難しいビジネスなのではないかと思います。例えば、単純に計算するために月会費1万円として、会員100人とします。これで月間収入100万円です。ここから家賃、光熱費、人件費、自分の取り分まで賄おうとすると、とても100万円では足りないので、会員数を増やすしかありません。仮に会員数200人とすれば損益面で大分楽になるとは思いますが、そもそも月会費1万円というのも結構な金額ですし、これに加えて200人も集めるというのが結構大変だなあというのが印象です。そんな中でしっかりと運営できているスポーツジムはすごいなあと思うのです。

 さて、中国においてスポーツジムは急速に増えていると思います。ごくごく一般的なジムから、ジョイフィットのような24時間ジム、体づくりをするRIZAPも進出していればその同業もたくさんいます。また、ジムにリングを設置したりといったジムもあります。ジムそのものが増えてきた、バラエティにも富んできたというのが中国のスポーツジムの近年の傾向といえると思うのですが、明るい話ばかりではなく、うまくいかなくて廃業をやむなくされているところも少なくないようです。2016年6月に開催された「新時期フィットネス生存発展論壇」というイベントで、中国国内のスポーツジムの80%が赤字または利益が極めて少ないとコメントしたゲストもいました。

 《2018—2019健身行业白皮书(フィットネス業界白書)》によりますと、2018年に中国で3099社ものスポーツジムが倒産しています。2019年もそれを上回るのではないかという見方をされています。2016年までは会員カードの販売だけで数百万元くらい稼げたのが最近はそうでもないとのこと。消費者からすると日本でよくあるような月払いのシステムのほうがありがたいのですが、たいていのところは3か月会員、6か月会員、年間会員だったりします。もちろん、期間が長期であればあるほど割安なのですが、そもそも通い続けられるのかという不安、期間満了前に潰れてしまうあるいは移転してしまうのではないかという不安、どうしてもこのような不安がぬぐえないのではないかと思います。私もジムが移転やクローズする羽目になったことが2回ありました。2回とも前払い分の返金をしてもらえているので、良心的な業者だったと思いますが、一般的にはそのようなケースは多くなく、そのままとんずらしてしまうケースが多いでしょう。

こういう目に合わないためにはリーズナブルな月払いやビジター利用のような都度払いのところがあればいいのですが、中国のスポーツジムは年間会員前払いシステムで先に金をかき集めて回すところが大半です。会員の継続率を高めるためには当たり前の話ですが運営をしっかりとする必要があります。仮に月払いだと前金でドカッとお金が入ってこないので、より一層日々の運営をしっかりして、長く継続してもらわなければならないプレッシャーが強くなるのではないかと思います。

 そんな中で、超級猩猩(supermonkey)というジムが現れました。このジムの売りは、「都度払い、年間カードを作らない、専門のインストラクター、セールス無し」です。やってる内容はクラスレッスン、都度払い、年間カード無し、一回当たり69元より(購入する回数による)です。1年分支払うことにためらいを覚える人にとっては非常にありがたいシステムです。スーパーモンキーの運営会社は2014年6月に設立されましたが、初期のころにエンジェルファンドの投資を受け、2017年にはセコイアキャピタルが投資、2019年2月もファンドから3.6億元ものお金を集めています。

こことは別に、楽刻という24時間制の月払い制のスポーツジムが2018年にテンセント等から投資を受けており、すでに450店舗以上を構えています。

消費者にとって「支払い面で優しい」に対応するジムが台頭しつつあるといえるでしょう。のニーズが増えてきたといえるでしょう。年間会員で頭にがっぽりお金が入ってこない分、最初の資金繰りは厳しいでしょうが、ファンドからお金を出してもらえるのであればやりやすいですよね。なんでも、2019年12月に北京で《前払い式消費市場管理の強化に関する意見(意見募集稿)》等の7つの文書が発表されており、スポーツジムの前払い時期は場所の賃貸期限を超えてはならず、原則として3か月を超えたり、前払い額が3000元をこえるフィットネス商品を販売してはならないという内容になってます。前払いカードについては今でも5000元以上の場合は記名式で、銀行振り込みを通じてということになっていますが、実際のところこれを守っていないところはたくさんあります。しかし、意見募集稿の段階とはいえ、前払い金システムを制限する内容となっているこの文書は、前払い金でお金を集めるシステムに慣れているスポーツジムにとっては衝撃度の高く、今までのビジネスモデルが根本的に崩れてしまう可能性のある通達だと思います。現在意見募集稿の段階にある通達、果たしていつの時点で成立し、どこまで影響するのか。そして、前払い金システムを導入しているスポーツジム以外の業界にどこまで波及するのか、気になるところですね。

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