2019-02-21

わずか5年で840億円もの資金を溶かしてしまった中国の中古車取引サイト

 昨日の記事でちらっと中古車販売について触れましたが、今日は「人人車」という中古車取引サイトについて紹介します。いっときネット動画を見ようとするとやたらとこの会社の広告が出ていたので、中国の動画サイトを見る人であれば名前くらいは知っているのではないかと思います。このキャプチャを見れば思い出せるのではないでしょうか。

 結構派手に宣伝していたこの会社、最近はあまり広告を見かけず、同じような同業の会社の広告を見かけるようになっていましたが、なんと破産するのではという報道が出ています。ついこないだまでガンガン広告してたくせにいきなり破産かよ!一体どういうことなのでしょうか。

 この破産報道に対して、人人車は、「事実ではなく、現在全ての業務は正常の行われており、悪意のデマを流す行為に対してすでに証拠集めを行い届出している」というコメントを出しています。なんだ、大丈夫かよ、と思ってしまうわけであります。そして多くの人人車の従業員が、「破産という情報は確かにデマであり、本当の状況は人人車は今大量のリストラを行っている」といっているとのこと。調子が悪いのだけは間違ってないようです。すでに北京文庫氏は2018年11月と12月の2回にわたり営業と自動車評価の人員を合計200名ほどリストラしています。

 一か月ほど前に、人人車は成都市金牛区政府から40億元の資金サポートを受け、人人車の第二本部を設けようとしているとの話があります。地方政府が40億元?こんだけ資金があれば当分しのげると思うのだが、しかし資金の出し手が地方政府?しかも区レベル?よくわからんです。ホンマかよ。

 また、こんな話もあります。破産情報が出回ったのとほぼ同じ時期なのですが、北京分公司の60に鉛の従業員が1月と2月の給与と労働関連規定に基づいた離職補償を要求したというのです。これに対して会社側からの提案内容というのがびっくりです。

・出資して人人車の城市合夥人(都市パートナー)となる

・都市パートナーになりたくない場合は離職することも可。ただし、1月2月分の給料も離職補償もなし。

 都市パートナーとは何ぞやということですが、4万元を支払えば250件の自動車オーナー情報をもらうことができ、これがあると毎月5-6万元の収入が得られるとのこと。なお、これはあくまで情報提供料のようなもので、これとは別に従業員であれば1万元の保証金、契約期間半年、すぐに契約すれば4万元を3万元に値引きする、というものです。イメージとしてはフランチャイジーになってくださいというようなものといえるでしょう。しかし考えても見てください。潰れるのではないかという噂が出ている会社のフランチャイジーにこれだけの金を払ってなりたい人がどれだけいるでしょうか。自分だったら絶対嫌だ。これは人人車の従業員も同じで、これに乗っかろうとする人はほとんどいないとのこと。当たり前でしょう。よくこんな提案ができるなあ。

 さて、火の車ならぬ人人車、今までどんな会社がお金を突っ込んできたのでしょうか。

2014年7月(Aラウンド:500万米ドル):紅点創投中国基金

2014年12月(Bラウンド:2000万米ドル):順為資本、紅点創投中国基金、策源創投 

2015年8月(Cラウンド:8500万米ドル):テンセント産業共贏基金、策源創投、順為資本 

2016年9月(Dラウンド:1.5億米ドル):中民投、漢富資本、テンセント産業共贏基金、高価新浚、普思資本、紅点創投中国基金、策源創投、順為資本

2017年9月(戦略ファイナンス:2億米ドル):滴滴出行

2018年4月(戦略ファイナンス:3億米ドル):ゴールドマンサックス、滴滴出行、テンセント産業共贏基金

 以上しめて合計7.6億米ドル、ざっと840億円!一番最初に投資が入ったのが2014年7月なので、5年もたたずしてこれだけの金額を溶かしてしまったということです。恐ろしい。しかし、投資してきた会社の銘柄を見ますと、それはそれはもうそうそうたる名前が挙がっていますよねえ。ゴールドマンサックス、テンセント、滴滴。やられちゃいましたね。ま、こういう投資の世界は化けるときはものすごい化け方をするので、ヒット率は野球の打率よりも低くてよいと言いますが、それにしてもこれだけ損しちゃうと投資決定した人の心理的圧力はすごいだろうなあ。くわばらくわばら。

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