2019-09-24

中国の社会保険にまつわるトラブル

日系企業ではあまりない話だとは思いますが、社会保険に関するトラブルについて紹介します。

日本も中国も同じですが、社会保険は労使双方で負担します。中国では労働者が自己負担する分手取り収入が減少するのを嫌気して、社会保険を付保しないでいいので、手取り収入を増やすようにしてほしいとか医者に要求する(あるいは会社から提案する)というような話を聞きます。さすがに最近のオフィスワーカーではこのような要求はなくなってきていると思いますが、こういう要求をしてくる人、実はまだいます。労使双方が納得しているのならそれでもいいのでしょうが、実際にトラブってしまうとやはりめんどうなことになってしまいます。そして今回紹介するトラブルは。工場ではなくて販売会社の話ですので、ひょっとするとオフィスワーカーとの間で発生したトラブルかもしれません。

上海のとある会社の話。ここに勤めていた王さん、外地から上海にやってきて仕事していたのですが、労働契約は2015年1月3日から2018年1月3日までの3年契約、ところが、2015年4月8日に勤務中に発作で突然亡くなってしまいました。2015年4月13日、つまり王さんが亡くなった後に会社は社会保険の手続きを行い、保険料を納付しました。生前王さんは会社に対して「社会保険不要、それに伴うリスクは一切自分が持つ」というような内容の声明書を提出していたとのこと。しかし、後付けの手続きなので社会保険付保に伴う工傷保険基金より支払われる工傷死亡補助金や葬儀補助金の受取基準を満たさないと判断されてしまいました。これに対して、遺族は会社に対して本来受け取るべきお金を支払うように申し入れたのですが、これが裁判になりました。裁判は二審まで行われたのですが、結局会社側は敗訴。遺族に対して工傷死亡補助金として576,880元、葬儀補助金として32,706元、合計で約60万元支払わなければならなくなりました。ちゃんと社会保険さえかけていれば60万元も支払う必要はなかったのですが、今更それを嘆いても仕方がありません。

このケース、会社に同情する人もいるでしょう。なにせ従業員から「社会保険はいらん、リスクはこっちが取る」という声明書までもらっていたわけですから。最近採用のお手伝いをしたのですが、その業界でも従業員が要求してきた場合、一筆取ってこのような取り扱いを認めるようなところがあるという話を聞いております。これをされるとまじめに社会保険手続きをする会社で支給できる手取り給与が小さくなってしまい、不真面目な会社に人が流れてしまうことがあると嘆いていました。しかしまあ外資企業なので、ルールがはっきりと定められている以上、それは守るべきだと思います。

中国だったらこんなやり方でも大丈夫、というのは何事もなく過ぎていれば大丈夫であるだけの話で、この話のように何事かが起こってしまうと大丈夫でなくなります。あえて定められているルールを無視してリスクをとるというのであれば、それは自己責任の世界であるというのを肝に銘じる必要があります。そもそもルールを守っていればいいだけの話なんですけどね。

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