2021-12-29

中国企業で行われている強引なリストラ

中国の制度もだいぶん成熟してきたこともあり、中国の制度がなかなかわかりづらいという相談は減ってきているかと思います。しかしその一方で、わかっていてもなかなか問題が絶えないのが労務問題です。これに関して頭を悩ませている企業は今でもまだまだ多いと思います。従業員にやめてもらいたいとき、基本的にはルールに沿って進めていく企業が大半だと思いますが、中国企業、ここでは経営状況の厳しい中国企業がどんな方法で労働契約解除しているかの例を見ていきましょう。あらかじめ申し上げておきますが、これがスタンダードな手段だとは思わないでください。

取り上げるのは十荟団というネット通販プラットフォームの会社です。業績悪化に伴いリストラを進めていくわけですが、この方法がなかなか強引で、暴力裁員(暴力リストラ)と呼ばれています。どんなことが行われているか見ていきましょう。

・会社は退職協議に署名することを強制。従業員は署名しないと給料をもらえない。もらえる手取り金額は現地の最低賃金基準を下回るにもかかわらず、従業員が退職に同意しない場合、労働仲裁でもどこでも行ってもらって構わない。
・11月から従業員の基本給と基本生活の需要を保証する前提の下で、会社のミドル・バック要員は業績給を含む給与を一部、具体的には70%の割合で支給し、不足する部分を年率3%で利息を加えて、2022年の第1四半期に支給し、同時に同額ストックオプションを支給。

前者は従業員から聞こえてきた声、後者は会社側の発表です。どっちにしても厳しい。そもそもこんな会社のストックオプションに意味があるのかね。

さて、給与支給協議なるものが出回っていますので、これを見てみましょう。最初に現物を、そのあとに翻訳文を作成したのでご覧ください。

給与支給協議

甲:湖南群鮮荟萃科技有限公司
乙:

甲(会社)乙(従業員)双方「労働契約」を締結しており、契約において甲が毎月15日までに毎月の給与を支給することを約定している。現在会社は経営難に陥っており、資金繰りに影響を受けているため、共に難関を乗り越えるため、甲、乙双方は友好協議を経て、乙の給料の支給を延期することについて以下の合意に達し、共同で遵守することを保証する。

一、甲、乙双方は、甲が2022年2月28日までに乙に2021年12月の給与を支給することについて協議一致する。

二、乙は甲が給料の支払いを延期することに同意し、甲のいかなる法律責任も追及しないことを保証する。

三、双方は書類を通じて協議を締結し、本協議は甲乙双方が締結した日より発効する。

なかなか厳しい内容です。

従業員によりますと、会社の人事は自発的に離職協議に署名するように通知しており、電子署名後に11月の給料が支給されますが、12月の給料は来年2月28日までに支給されるとのこと、そしてその前提として遅延支給契約書に署名する必要があるというものです。また、資金繰りが厳しいため、会社は賠償金を支給しないとも明言しています。もし自発的な退職協議に同意しない場合、会社は一方的に解約協議を送り、給料、賠償金などは労働仲裁の結菓を基準に支給するとのこと。完全に開き直ってます。

次に解除通知の文面を見てみましょう。最初に現物を、そのあとに翻訳文を作成したのでご覧ください。

 

労働関係解除通知書
 
現在会社は市場環境と客観状況に重大な変化が発生しているため、会社は適切に、十分に、詳細に発展戦略とポジショニングを分析・評価し、運営効率と資源などの多方面を考慮したうえで、あなたの持ち場を廃止することを決定し、あなたの労働契約を継続して執行することができなくなった。あなたの労働契約が継続して履行することができないため、会社は協議解除法案を提出した。しかし、残念なことに、双方は労働契約の協議解除の合意に至らなかった。
 
よって、会社はここに「労働契約法」第40条第(3)項の規定に基づき、2021年12月20日にあなたとの労働契約と労働関係を解除することを決定したので、特にここに通知する。本通知を受け取ってから3営業日以内に会社で関連手続きを行うこと。

なかなか強烈です。ルールに従えば、雇用主が一方的に契約解除する場合、30日前通知、または1ヶ月の給料を支払う必要があり、このような行為はルールに違反したものであります。また、《労働契約法》によると、雇用主が合法的に労働契約解除について協議一致する場合、雇用主は経済補償を支払う必要があるのですが、これを支給しないのもルール違反ですね。経済性裁員(経済性リストラ)の手法を採用したとしても経済補償金から逃れることはできません。

いかがですか、ない袖は振れないと完全に開き直った対応ですね。従業員としては悔しいでしょうが、仲裁等の法的手段に訴えたとしても時間はかかるし、勝ったとして資金繰りが苦しい会社からどれだけもらえるかそもそもわからないということで、泣き寝入りする人も多いのではないかと思います。

我々がやっていくべきこととしては、このような状況に負いいることのないうに日々業務に邁進することですね。がんばりましょう!

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