2023-09-27

公立病院の医師の給料が下がっている

日本で医者と言えば高級エリート職で、高給であるイメージがあるかと思います。これに対して中国の医者は職業のイメージとしてはいいのですが、待遇面では日本ほどの高給のイメージはありません(ここでは副収入は別ね)。給与晒しアプリで見たところこんな感じでした。

これは「上海」と「医生」をキーワードで見たあくまで平均値にすぎず、病院のランクもあれば、経験・勤務年数、診療科によりますが、これを見る限り人もうらやむほどの給料というほどではないといます。

医師の待遇については上記の通りですが、ここ最近医者の収入が下がっているという報道がみられます。報道で名前があがっているのは北京同仁医院。この病院の医者が「夜勤代は支給されたが業績給は半分引かれ、来月もどうなるかわからない。」とぼやいています。眼科で中国トップレベルのこの病院の医者たちによると、8月の給料が大幅に下がり、業績給と夜勤代の下げ幅が50%に達しているとのこと。これは確かにきつい。しかも、支給日の前日に一言あっただけ。

医療関係者によりますと、病院の経営状況が良くないことが医師の賃下げの主な原因とのこと。2022年7月に発表された国家衛生健康医院会が発表した全国三級公立病院の業績考課に関する国家モニタリングデータによりますと、2020年において2,508ある三級公立病院のうち、なんと43.5%の病院が赤字とのこと。2020年と言えばコロナ真っ只中の時期です。しょうがないといえばしょうがないのですが。

病院の業績が下がり医師の賃金引き下げにまで至った要因を改めて振り返りますと、

  • コロナの影響で病院の受診者数が減少し、業務量・業務収入が減少したこと。
  • 政府財政の影響により、支払うべき金額が病院に支給されず、つまり補助金収入が減少していること。
  • コロナにより日常の防疫に必要な防護設備、消耗品などを購入する費用が増加したこと

といったことが理由としてあげられています。公立病院の収入源は90%以上が病院業務による収入ですが、それが減少しているので支給する給与も減ってしまうということですね。

現在行われている公立病院の報酬制度は主に基本給与と業績給の二つで構成されています。業績給部分が往々にして比率が高く、基本給与と業績給の比率が3対7であったり、4対6であったりします。基本給与は政府が規定する事業単位の給与体系に従って確定されているものであり、勤続年数、役職、持ち場により定められ、これはポストが異なっても差はそれほど大きくなく、業績給部分の差が大きいものとなっています。診療科によって業績給の発生度合いも異なるでしょう。

従来のイメージだと「以薬養医」(薬を売ることで病院を養う)というような言葉がありました。たくさん薬を処方することで収入を増やすということですね。これをなんとかしないといけないということで、沙県小吃の発祥の地である福建省三明市で2021年より年俸制の導入が行われました。多くの地方がこれと同じことをしようとしているのですが、今までの慣行、すなわち「以薬養医」から脱皮していくのは難易度が高いようで、なかなかやり切れるところはないようです。三明市では公立病院の薬品消耗剤費用が改革前の60%から31%にまで下がるという目覚ましい成果を上げています。無駄なものを購入しなくなるだけでこんなにも下がるものなのですね。

さて、三明市の公立医院は年俸制ですが、これに基づく待遇を見ていきますと、書記(院長)の年俸基数は一類市級三級医院50万元、二類県級総医院40万元、三類市級二級医院30万元で設定されています。総会計士の年俸基数は一類市級三級病院25万元、二類県級総医院20万元で設定されています。その他の各種人員の基本年俸は、病院の大小を区分せず、役職により設定されていいます。医師を例にとりますと、主任医師の基本年収30万元、副主任医師の基本年収25万元、その他の医師が15-20万元といったところです。コロナはこの制度が導入されてから発生しましたが、コロナ期間の収入も比較的安定していたそうです。三明市という地名を中国人ならいざ知らず、日本人だとほとんど知らないのではないかと思うのですが、そのような地方としてこの水準だと決して悪くないと思います。きっちりとした報酬を提供することで、日常的な業務で発生しがちな無駄を排除する行動へ導く、そしてこれは「以薬養医」によってもたらされていた患者側の医療支出の抑制にもつながる、ざっとこういったところでしょうか。同じことをやろうとしてなかなか同じようにできているところがないというお話ですが、何事においても「今までこうだったから」というのを変えていくのは難しく、そこはもうどれだけ本気になってやっていくかですね。

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