2021-04-13

00後も遺言を残す時代

広辞苑で絵見ると遺言とは、「自己の死亡後の財産や身分に関する一定の方式に従った単独の意思表示で、死亡によって効力を生ずるもの。」ということです。この説明のように、遺言というのはそれ相応の年齢になってから意識するものではないでしょうか。今のところ私はまだ遺言を残そうという気にはなってないです。しかしながら、中国において比較的若い世代で遺言を残す人が増えてきているそうです。

最近、中華遺嘱庫(中華遺言バンク)が発表した《2020中華遺嘱庫白皮書》(以下、白書という)によると、2017年以降、中華遺嘱庫に登記した中青年の人たちの遺言が全体で4190通、このうち深圳地区の中青年の残した遺言が207通あります。母数は小さいとはいえ、ここ4年で約6倍とかなりのペースで増加しています。

エリア別でみていきますと、北京、上海、広東が多いです。まあ広東は省なので母数が大きく多いのは当たり前なので、やはり北京、上海が突出しているといえるでしょう。


 次に、年代別に見ていきましょう。

 “80後”(32歳~41歳)が遺言を作成する人数は年々増加しており、2020年は前年比2倍強。おそらくこれはコロナの影響も関係しているとみられています。また、“80後”の人たちは家庭を抱え、それなりのプレッシャーのある生活を送り、遺言を意識せざるを得なくなったともいえるでしょう。

“90後”(22歳~31歳)の遺言作成者も増加しており、2017年は55人の“90後”が中華遺嘱庫に遺言を残していたのが、2018年にはこれが123、2019年には166人、2020年には209人にまで増加しています。

そして中華遺嘱庫に遺言を登記している最も若い人はなんと17歳!80後や90後のみならず、“080後”も遺言を残し始めたということです。遺言が高齢者だけのものではなくなってきたと言えますね。

遺言の中で言及されているのが、97.23%が不動産、52.46%が銀行預金、証券口座等です。そして、90後では銀行預金の比率は81.61%であるのに対して、不動産は71.54%となっています。“90後”の遺言作成者の71.54%が不動産を遺言の対象としているわけですが、多くの“90後”は、父母が子女名義で不動産を残すのは普通のことで、さらには父母が自らの株式を子女に名義替えするのもよくみられるとのこと。こういうこともあり、90後といえども遺言を作成するようになっているようです。自らの資産が他人に行ってしまうことのないように、そして財産の行方が分からなくなってしまうことのないようにというリスクヘッジの意味合いも大きいと言えるでしょう。

また、“80後”、“”90後”はバーチャル試算も遺言に組み入れているのが多いという特徴があります。具体的には支付宝(アリペイ)、微信(Wechat)、QQ、ゲームアカウント等です。

 このように、遺言を残す人が増えてきているのですが、手軽に遺言を残すサービスを出てきました。コロナ発生後に中華遺嘱庫が“微信遺言”のミニプログラムをスタートしています。Wechatで遺言ですよ!何とも手軽な。コロナにより行動が最も制限されていた2月から3月にかけて“微信遺言”の数量が最も多く、ピーク時には1日で1000通以上の“微信遺言”が登録されたとのこと。実際に2020年において7万通もの“微信遺言”が登録されています。

“微信遺言”のミニプロブラムを見たところ、2020年9月1日以降は、①60歳以上、②銀行カード2枚以内、③中国内の不動産(140㎡)1件まで、④読み書きができ、中国語を離せ、指定場所で手続きできる人、という要件を満たす人が申請を行うことができるとしていますが、これを超える範囲については照会してくださいということなので、何かしらやってくれるのでしょう。

微信遺言を利用する人は若い人が多く、30歳以下が6割強で、多くが20-30歳の間で38.7%を占め、その次が20歳以下でなんと27.4%も占めており、しかも現役の学生も少なからず含まれているとのこと。若い人たちも遺言というものに対して受け入れやすい環境になってきたということなのでしょう。しかし、財産承継や処分を目的とした遺言以外の使い方をしている人も多いようです。 若い人たちが微信遺言で残している遺言の内容は多岐にわたります。今の、以前の、あるいはひそかに思いを寄せている異性に対するメッセージ、親友に対するメッセージ、両親に対するメッセージ等々、今の若い人たちの感性等が反映された内容になっています。Wechatならではですね!

統計によると、

32.72%が微信遺言の中で配偶者に対して告白。

31.41%が微信遺言の中で配偶者、家族に対して祝福、祈り。

19.66%が微信遺言の中で的市民,“人生の経歴と将来の希望”を書き残し。

11.38%が微信遺言の中で“自ら又は親友に対する励ましの言葉”

残りの4.83%が遺言を残す原因と考え方”について記しています。従来のイメージの遺言、つまり財産承継、処分等に絡むものははわずか4.83%ということですね。 

この他、69.2%が微信遺言の微信遺言に配偶者、家族との写真を残しているとのこと。

 微信遺言の内容を見ると、多くが配偶者や家族に対するメッセージに、気恥ずかしくて直接言葉で直接伝えられない内容が多いようです。確かに微信遺言の方式だと面と向かって伝える気恥ずかしさはないですね。このメッセージを指定の時間指定相手に送られるとのことです。中には若者が失恋して微信遺言に自分の気持ちを記録するという使い方をしている人もいるようです。これはもう遺言でもなんでもないですね。また、多くが配偶者、家族、両親等に対してメッセージを残すのですが、少しではありますが将来の自分に対するメッセージを残す人もいます。これはもうタイムカプセルの世界、いや古い世代の方だとわかるかもしれませんが、伝言ダイヤルのようともいえます。

このように、純粋に遺言を資産承継、処分を目的とするのではなく、自らの気持ちを周囲の人に向けて残す、そういう使い方をする人がたくさんいるようです。

資産はそんなにないですが、わしもメッセージくらいは残してみようかな!

(微信遺言のメッセージページ)

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