2020-02-20

ワイドショーが伝えない新型コロナ肺炎発生後の上海の日常生活

 日本も中国もここ最近はコロナ肺炎に関する報道が盛りだくさんです。日本にいる人たちは当然日本を軸にした日本向けの報道を目にする機会が多く、また他国の状況にものすごく関心があるということもないでしょうから、発祥地の中国の様子も実はよくわかっていないかもしれません。まあ、テレビで、とくにワイドショーで紹介されるのはおもしろ動画的なものも多く、動画がある以上ウソではないと思うのですが、極端な例も多いと思います。今日ここでは、私がこちら上海で普通に暮らしていているなかで見られる様子について、特に日本にいる人たち向けに紹介したいと思います。

 まず住まいから。自分の住んでいるところなので、当然カギを持っているのですが、それでも別途通行証を作成しなければならず、それを提示し、そして体温測定して問題ないと確認して初めて敷地に入ることができます。入り口はこんな様子です。

 次の写真をご覧ください。台があっていろんなものがのっかっていますが、これは宅配便はデリバリーされた食品等が置かれています。以前は部屋まで届けてくれていたのですが、いまでは人と人との接触を制限するため「非接触」対応方式でしかできないため、すべて1階の門のところに置かれます。いちいち部屋から降りて取りにいかないといけません。門から遠い等に住んでいる人にとってはかなり面倒ですが、こういうご時世なのでしょうがないでしょう。

 街を歩くとやたらとこういう張り紙を見かけます。

 書いている内容は外地から帰ってきた場合、主体的に居民委員会(町内会みたいなイメージ)にその情報を登記することを促すものです。後ろでも紹介しますが、この手のものがやたらと多くて面倒です。 

 さて、たまたま今日役所の手続きの用事があり、役所に行ってきたのですが、入り口はこんな様子でした。

 役所に入るための手続きがこれまた面倒です。まずはこれをスキャンしろと言われました。

 これに電話番号を入力するとこんな画面が表示されます。

 過去14日間に所在した都市が表示されます。他のどこにも行ってませんよという証明ですね。もしここにほかの都市が表示されると何を言われるかは聞いてないのでわかりませんが、武漢と表示されたりすると入れてくれないかもしれません。建物によっては武漢だろうがどこだろうが、とにかく上海以外の都市から来た人は14日間絶対に入れてくれないところもあります。続いて、入館登記票に名前、身分証明書、過去14日間に滞在した都市、上海に戻ってきた日、体調等について記入して提出。そして、これを終えてから体温測定。今回表示されたのは34.3度。低体温症かよ!係員と私ともに怪訝な顔しながら阿吽の呼吸でそのまま入っていきました。外にいる職員も中にいる職員ももちろん全員マスクしてます。そもそもマスクしてないと入れてくれません。あ、でも口元の空いてるこんなマスクはダメですよ!

 さて、会社にやってきました。会社に入るには毎度毎度入り口で登記するか、入館証を別途作成してそれを提示して入るかいずれかの方法があります。私の場合は当然入館証作成して入ります。

 本来であれば体温測定が必要で、ついこの間までは一人ひとり測定していたのですが、いまでは空港で見かけるようなサーモグラフィーが導入されました。

 ビルに入館すると今度はエレベーターに乗るわけですが、こんな表示が。

 エレベーターに乗れる人数を5人までに制限しています。できるだけ人と人との接触を減らすことを目的としているのでしょう。

 乗ったら乗ったでちゃんと消毒してますという表示が貼られています。

 あちらこちらで消毒液をばらまいていることもあり、病院のような消毒臭い臭いがします。また、発熱者とかが現れた場合、そういう人たちを隔離するスペースが必要なようで、それがここです。

 要するにビルの隅っこなのですが、こんなところに放置されると病状がより悪化しそうな気がしますね。

 ちょっと出かけるだけで今までの日常とは違う世界が見られます。街中も以前ほど店舗も開いておらず、映画館や劇場もやってないですし、イベントもどんどん中止されています。日本関係だとKOKIA。

 元々2/29に予定されていたのですが、イベントキャンセルが通知されています。

 KOKIAのライブは行く予定はなかったですが、これとは別に購入していた舞台に関してキャンセルの通知が届きました。

 3/24-29の講演に関して、2/18の時点でキャンセルを決定しています。KOKIAのも同じだと思いますが、チケット購入はほとんどが電子決済なので、返金は電子決済のウォレットに返金されます。要するに元のルートを遡って返金されます。このあたり、とても便利です。ジュリーこと沢田研二のドタキャンの時の返金はどうだったでしょうか。いまどき実店舗のプレイガイドで現金で買う人もあまりいないでしょうし、コンビニでチケットを受け取る人が多いのかな。やはりチケットをエビデンスに返金するのかな。

 あと住んでいる立場として気になるのがどこで感染者が出たか。これを確認するアプリがあります。クリックするだけで今いる場所の近くで感染者が現れたかどうかが表示されます。ちなみにこんな感じです。

 これを見ると2キロ圏内に感染者が二人いるという表示がされています。ミクロ的にはここまで表示しちゃってます。

 日本でもジャッグジャパンという会社が提供しているサービスでこういうのがあるようですね。

 中国の住まいはほとんどがアパートやマンションですが、日本だと一軒家も多いので、中国のように細かな場所を特定してしまうとどこの世帯で感染者が出たかわかってしまいかねず、なかなか実行するのは難しいでしょう。ということで日本では技術的というよりはコンプライアンス的にここまでがいっぱいいっぱいなのかもしれません。

それと、ほぼ毎日チェックしているのがこれ。

 2/20午後1時時点で、累計感染者数が334、治療中133、死亡2、完治者199という数字ですが、これらの数字を時系列にして表にしています。表で見る限り、累計感染者から死亡及び完治者を引いた人数、すなわち現時点での感染者数は減少傾向にあることがわかります。なにぶん今回の新型コロナ肺炎は中国が発生地であるため、中国の状況が乱れていると思っている人が多いかもしれませんが、共産圏ならでの力業での封じ込め効果もあってか、油断できないもののある程度の安心感は感じられます。生活は窮屈な感じがしますが、今のところしょうがないでしょう。人によってはここまで徹底できていない日本のほうがよっぽど危険じゃないのと言いう人もいるくらいです。日本の場合はクルーズ船の感染者数が突出しているとはいえ、これを除いた感染者数でも上のキャプチャにあるように90人弱。中国とクルーズ船を除くとシンガポールと日本がほぼ同じくらい、そして香港、これらで感染者数が多いです。(その後韓国で急激に感染者数が増加し一気にトップに)

 SARSの時も上海にいましたが、あの時どんなだったかというと、人間って忘れてしまうものなのか、あまりよく覚えていません。少なくとも今回ほど緊張感はなかったように思います。人生でこれほど手洗いを励行する日々は初めてです。皆さんも手洗い励行、そして特に中国にいる方は外出できなくなってしまわないようにマスクもちゃんとつけるようにしましょう。

 日本にいる人からするとおそらく想像以上に厳しく管理されていると思った人が多いのではないでしょうか。こういう状況なので、生活スタイルにも変化が生じてきます。それについてはまた今度。

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